第131話理性の戦闘

 鎌を構えてサトシに向かって接近する。

 鎌を振り上げて刃を向け、振り下ろす前に大剣が振るわれた。

 瞬時に鉄心で防ぐが吹き飛ばされる。

 相手の阿吽に寄って飛ばされた所に火の玉の魔法が飛んで来る。

 地面に着地する暇は無い。横からは槍投げか。


「イサァ! お前なら出来んだろ!」


 イサを即座に召喚。

 目の前の魔法はイサの盾が、槍は蛇が加えた。


「なんだいきなり!」


 タツキが叫ぶ。アタシも少し驚く。

 本体の記憶では蛇は完全にボブジェクト状態だったのに、何故かピンピンに立って元気だ。

 その目はギラギラと赤く輝いている。

 ⋯⋯もしかして、今のアタシがベルゼブブに近いオーラでも出しているのか? 確証は無いけど。


「イサ! 雑魚は頼んだ!」

「ガル!」「シャアラァ!」

「俺達の仲間を雑魚呼ばわりとは、なかなかだな!」


 サトシがアタシの目の前に現れて大剣を振るう。

 横にステップして躱す。


「【燕返し】」


 刃がアタシの方を向いて振り上げられる。

 片足が着いて居るので、それをスナップに体を捻る。

 しかし、腕が浅く斬られた。


 蛇は槍をタツキから離れた所に飛ばして、イサが沢山の人が居る所に突っ込んだ。

 爪が黒紫に変色する。

 問題なさそうだな。


「さて、行くか」


 成る可く時間を稼ぐ。そして、情報を集める。


 サトシに接近して鎌を横薙ぎに振るう。


「風断流大鎌術、断ち車」

「なかなかの太刀筋だな」


 首を狙う為に少し跳躍して回転して振るうが、大剣で受け流される。


「ぬっ!」


 大剣を反撃で振るわれるが鎌で防ぎ吹き飛ばされる。

 飛んで来る魔法を横にステップして躱す、背後からクランエンブレムの鎧の騎士が槍の先端を向けて凸ってくる。

 屈んで躱す。上から降ってくる矢を、体制をそのままに横に倒れ込むようにステップしてギリギリ躱す。

 タツキが槍を既に手に戻しており、アタシに向かって先端を向けて突き刺す。

 ゴロゴロ回転して躱し、腕に力を入れて立ち上がる。


「デバフあるのにすばしっこい」

「サトシ本気出しなよ!」

「いや、さっきあの人は報復に来ると言った。成る可く手の内は明かしたくない。それは、相手も同じだよ」


 全く。頭のキレる奴だな。

 サトシはあまりスキルを使わずに大剣をプレイヤースキルで振るう事が多い。

 魔法士の方もあまり種類を使わずにしている。

 タツキの方も多分、投げ槍が本文じゃない。

 純粋に飛行速度が遅いし狙いも甘い。

 それに、槍を使うのをメインにしているのに投げ槍用の槍で戦うなんて阿呆だ。

 それがグングニールレベルだったら別だけど。


 イサがかなりポイントを稼いでくれている。

 成る可くスキルを出してやりたいが、こっちもこっちで別のタイムリミットがあるんだよな。

 もしも、アタシの記憶が本体達に流れたら、モナの方が暴走してしまう。


「攻めて、リーダーさんの命は貰うかね!」


 地を蹴り接近する。

 魔法も、投げ槍も、やらせる暇は与えない。

 考えて、導き出して、そして攻める。

 アタシの座右の銘は『ガンガン行こうぜ!』だ!(今決めた。多分、すぐ変わる)

 鎌を振るう。大剣で防がれてカウンター。

 前進しながら体を傾け躱し、鎌の下の方を持ち振るう。

 鎧の篭手で防がれる。ダメージはあるようだが、斬れなかった。

 飛んで来る魔法がアタシの背中を焼く。

 大した魔法じゃないのでそこまでダメージは無い。無いが、最悪な事に炎症デバフに成りやがった。

 だけど、問題無い!

 右足を踏み込み、踏み締め、重心を前に出して鎌を両手で構え首を狙って振るう。

 大剣で防がれ、再び魔法が背中を狙って来る。

 投げ槍も横から飛んで来る。


 鎌を空に向かって投げる。

 体を仰け反らし槍は躱すが、魔法はサトシに当たって跳ね返りアタシに当たる。

 だから、手を地面に付けて倒立する。

 倒立した状態から腕に力を入れて跳ぶ。

 前進して魔法を躱し、後方に大きくバク転して鎌をキャッチ、サトシの背後に回って鎌を振るう。


「かなり柔軟な動きが出来るようだね」

「しくじった」


 あのデバッファー、攻撃スキル無いと思っていたけど、そんな事は無かった。

 いや、これは攻撃スキルなのか? 一撃でHP全損とか、ありかよ。


「彼女は呪術師なんだよ。そして、これは⋯⋯いや、止めておこう」

「分かるわ。味方に与えられたダメージを返すスキルだろ」

「⋯⋯正解。置き土産。じゃ」

「HP半分は削ってやりたかった」


 イサが大量のポイントを手に入れた。その結果、相手に大量のダメージを与えてしまった。

 そして、置き土産とやらでアタシに返して来た、と。

 まぁ、こんな大技見れてラッキーだと思う事にしよう。


 アタシは死亡エフェクトを出して消える。

 ただ、復活まで意識はその場に残る。


 あぁ。まじでしくじった。

 置き土産とか即死ダメージ出せる大技使って来るか? 隠し玉とかここで使うの?

 なんの意図があるかは知らんが、全く予想外だぜ。

 しかも、これって対策出来るん?

 て、ありゃ? 呪術師ちゃんもデスってるな。

 どゆこと?

 ま、よく分からんけどイサなら何となく分かっているかもな。

 さて、戦闘などの情報を残しておさらばするか。久しぶりに妹の顔を自分の目で見れて満足満足。


 ◇◇☆


 ありゃ?

 なんか死んでる!


『起きたか?』


 起きたか? じゃないよ! 復活までのカウントダウンが目の前で進んでいるんだけど!

 何処で、どうやってやられたのか全く知らないんだけど!


『あぁそれ。ちょっと待ちな』


 え、何する気? ぁ、痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 叫べないから余計に痛く感じる!

 脳内無理矢理開いて中をクチュクチュ弄られている感覚でものすごく痛い!

 何! いや、死にたくない! デスしているけど!

 あぁあああああ!

 ぁ?


 その痛みを一瞬で吹き飛ばす記憶が私の中に入って来る。

 訂正しよう。入ってくる、では無く蘇って来る。

 鮮明に思い出して行く記憶。柑ちゃんが登校拒否した理由。1つのクラスが消えた学校の七不思議の裏事情。

 全て、全て思い出した。


『なぁあんでだ! どうしてアタシを出して来るんだ!』

『残念だったな! わたしも眠ったようにしただけで起きていたのだ!』


 痛みが無くなり、悲しくなり、そして脳内では言い争いが起きている。

 さて、一旦状況を整理しようか。私達。


『以外に冷静ね』


 確かにショッキング映像を思い出したよ。これを忘れていたって純粋に姉として最低だと思うよ?

 でも、まぁ。

 辛い、ったよりもありがたいかな。柑を助けてくれて、ありがとう。


『⋯⋯』

『めっちゃ照れてるやん』

『黙れ』

『あ! 殴っなこらっ!』

『これだから脳筋馬鹿わ!』


 痛い! 脳内喧嘩(物理)は禁止!

 ワタシに直接ダメージが来るから!

 ストップ! 本当にストップ!


 それから復活するまでに脳内会議をした。

 やられた経緯も思い出したのでそれから作戦を練って行く。


『凄い計算量だな。エフェクトの1部1部や相手の行動の癖を見切って計算して次の行動を予測するって』

脳内馬鹿モナとは違いアタシは頭で戦うからね』

計算馬鹿ナミはその分、勘が冴えてないから背中に魔法を食らうんだよ。過去の遺産の名言にあるぞ。背中の傷は剣士の恥だ! って』

『アタシら召喚士、黒巫女、剣士ちゃう』

『確かにな!』


 喧嘩したり仲良く成ったりと。

 ちなみに新しく来た人格の名前は私の名前、萌南もなみから取ったナミである。

 モナも名前から取っている。

 さて、司法森羅のクランを倒す作戦会議を皆としようか。


 初のデスだけど、明るい空間に来て復活まで待つのか。カウント見ているだけなので暇だ。

 脳内会話出来るので退屈しなくて済むのはありがたいね。暴力の喧嘩始めてしまうと凄く痛いけど。

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