第129話黒巫女召喚士と謎の騎士 決着

 リクさんが兜を筈と出て来たのは綺麗な頭部だった。


「ツルピカ」

「おい待てなんだその言い方は」

「あ、ごめんなさい。つい。スケルトン何ですね」

「正確には、シルバースケルトンソルジャーだがな」


 リクさんはインベントリと思われるウィンドウを出して操作すると、鎧を外して軽装になった。

 大剣の刀身を掴み、引く。


「なっ」

「元々この大剣はなまくら。本体はこっちなんだよ」


 細い長剣だった。


『スピードアタッカーだったのか』


「さぁ、本気でお相手しよう」


 リクさんが地を蹴って私に接近して来る。

 踏み込みの速さと動きに合わさて振るう剣。

 先程よりも洗礼された動きに速度。

 刀を瞬時に盾のように剣を防ぐ。

 それだけだと押されると判断して左手の甲も添える。

 攻撃は防げたけど、勢いまでは無理だったようで吹き飛ばされる。


 この勢いで後ろに木に衝突したらダメージは免れない。

 いや、イサちゃんの空間内なので問題無いかもしれないけど、一瞬の大きな隙が出来る。


 私は空中で体を捻り回転する。

 体の体制を直して木に足を着ける。


『あっぶ』


 木と並行になるように跳躍して横払いされた剣を躱す。

 ドサッと倒れて行く木。

 枝が折れるボキボキとした音が鼓膜を震わせる。


「反応が速いな。それに躊躇いが無い」


 そっちが言いますか?


 着地して刀をリクさんに向けて構える。

 こっちの方が有利、何てのは妄言だった。

 この立地、このフィールドは相手の方が断然に有利。


『けっそれがどうした!』


「行くよ!」


 地面を蹴って接近する。

 分かっていましたと言わんばかりに振るわれる剣。


「【スラッシュ】」

「『巫女の舞、第一節、【四天竜の舞】』」


 回転して振るわれた剣を弾く。

 何故かかなる私とモナの声。


 舞は継続する。

 リクさんは回転して振るわれる刀を剣でいなしながら躱す。

 舞の最後の回転。


「『巫女の舞、第二節、【水神の寸撃】』」


 回転の終わりと合わせて突き出される刀。

 それを見たリクさんは横にステップして躱した。


「『巫女の舞、第三節、【風神の暴君】』」


 刀がリクさんに届く距離まで前進し、高速で刀を振るう。

 下半身を固定、上半身全てを使って刀を振るう。

 リクさんは剣でその攻撃を防ぐので精一杯の様子だった。


 次の舞に繋げようとした、その瞬間だった。


「【カウンター】」


 リクさんの剣が紅く輝き振るう。

 咄嗟の事できちんとした体制で防ぐ事が出来ず、ダメージを受けてしまった。

 吹き飛ばされ、地面を数回バウンドして木で止まる。

 HPはそこまで減っていない。

 イサちゃんのお陰で防御力が増しているし、多少のダメージはイサちゃんが肩代わりしてくれる。

 イサちゃんに肩代わりさせたく無いので回避を徹底していたのだが、これは反省モノだ。


 刀を杖のようにして立ち上がる。


「ふむ。かなりの攻撃を受け止めて放った筈だが、大したダメージには成ってないな」

「言い方的にその剣がカウンターの能力を持っているって事で良いですかね」

「どうだろうね」


 ま、そうなんだろうね。


 右方向から矢が飛んで来た。

 それを私が目視したのでモナも認識。

 タイミングを合わせて刀を振るおうとしたら、矢が消えた。


「『それは、知ってる!』」


 刀を予想のタイミングよりも速く振るう。

 刀に寄って弾かれた矢。


「これを初見で見破るか」

「『これは前に、これよりも上位のモノを見た』」


 空間の距離を縮めて放って来たんだろう。

 あくまで透明の矢が素早く接近して来ると同じだ。


「うわっ」

「悠長に待たせてやる義理は無いからな」

「そうです、ね!」


 振るわれた剣をモナが見て回避し、空中で回転して刀を振るった。

 リクさんはきちんと見て躱す。


「『風爆符、解』」


 上に向かって1枚投げる。

 数本の矢が飛んで来ていたのだ。

 霊符が光、周囲の空気を吸収して爆ぜる。

 霊符を中心に風が巻き起こる。


「【スラッシュ】」


 横払いで振るわれる剣を右手の刀を逆手持ちに切り替えて防ぐ。

 それだけでは足りないので右足を添える。

 左手をリクさんに向ける。


「『深淵弾、展開』」


 スキルで振るった剣。

 相手は躱す事は不可能。

 顔面に向かって黒色の球体がリクさんの顔面に衝突して吹き飛ぶ。

 流石は上級者と言うべきか、上手く受身を取り立ち上がる。


「『【縮地】、風鳥羅刹流、円鳥』」


 首と腰を一筆書きのように謎るように斬る。

 立ったすぐに接近して攻撃したのだ。

 しかし、リクさんは一太刀目の首を狙った斬撃は屈んで躱し、続け腰を狙った斬撃は剣で防いだ。

 左足をスナップに右足で回し蹴りを放つ。

 リクさんは左手で防いだ。


「行動が速いな。【斬撃】」


 リクさんはバックステップで距離を取り、斬撃を放って来る。

 急いでインベントリを開いて腕を突っ込む。


 インベントリからアイテムを取り出すには2つのやり方がある。

 インベントリ内のアイコンを操作して取り出す方法。

 アイコンに意識を向けて腕を突っ込み取り出す方法。

 アイコン操作にはアイコンの選択、何をするかの選択が必要だが、後者はそれが要らない。


 取り出す形代は決めた場所に置いてあるのですぐに意識を向けれる。

 インベントリを出す等の肯定が居るのでこのような隙が無いと取り出せないのが難点だけどね。


「『風天、展開』」


 私を中心に風が四方八方へと巻き起こり、斬撃と風が衝突し火花を散らして相殺する。


『これは、範囲攻撃な分、単体には向かないな』


 だね。威力が高いからコレを使ったけど形代を無駄にした気分だよ。


「なかなかに多彩だね。先程から後ろの犬は攻撃して来ないようだけど?」


 攻撃しないだけで仕事はしている。

 何回か矢を防いでくれているのかな?


「なら、俺は全力を君にぶつけよう」

「⋯⋯なら、私も全力で行かせて貰いますよ。卑怯とか言わないでくださいね」

「言わんよ」

「ありがとうございます。行けぇぇ!」

「急に叫んでどうした?」


 本気で戸惑っているみたいだ。

 分かる。あの目のない骨の目の奥そこから『この子阿呆?』と言う考えが。


「まぁ良い。【バーンアップ】【フルパワー】【限界突破】【超加速】【能力解放】【ダークネススケルトパワー】【死者の嘆き】【霊魂解放】これが、俺の全力だ! 【神斬り】」


 私には自分のステータスを強化出来るスキルは無い。

 だけど、私の本来の職業は黒巫女(ほぼ近接)じゃなく召喚士だ!


虹螺旋レインボースパイラル、水氷の荒らし! 天雷、展開!」


 木の裏にハクちゃんを召喚してバフを高速展開。

 マナちゃんをリクさんの上空に、カルちゃんをリクさんの背後に。

 天雷は後は自動的に雷が落ちて来る。


「『巫女の舞、第五節、【速龍の舞】! 風鳥羅刹流、風林羅刹天』」


 足に力を込め、全て前方の移動へと注ぐ。

 リクさんへ接近したら刀を、移動した遠心力の体の全てのベクトルを集中して振り上げる。


「ッ!」


 上空からは虹色の螺旋と金色の雷が降り注ぎ、背後からは水と氷が合わさったブレスが放たれ、私が振り上げる刀は数本の刃へと変貌している。

 リクさんも剣を振り下ろそうとしているが、どちらが速いか、明白だ。


 激しい光と冷気、轟音と共に私は1ポイントを入手した。

 風鳥羅刹流の奥義とまではいかないけど、かなりの大技を使い、かなりの集中力を使った私は疲れも相まってその場で倒れた。

 近寄ってくれる皆。


「疲れたぁ」


 たった数分。

 躱して戦うスタイルが似ていた為に連撃で戦う居合戦闘は無かったけど、それでも大変に疲れた。

暴食ベルゼビュート】を始めにまだ相手に見せてない戦闘スタイルを温存出来たのはありがたい。

 取り敢えず、ネマちゃんを向かいに行きますか。


 ◇


「まさか、敗れたの?!」

「首、頂きますね」

「なっ!」


 エルフは突然背後に現れた人に振るわれた刀を躱した。

 エルフがその人を見ると、モフリに敗北したスケルトンだった。

 しかし、持っている武器が剣では無く刀になっている。


「どうして見た目をリクにしている」


 その事に対して怒りを覚えるエルフ。


「悪いけど、私は短剣ならある程度扱えるのよ!」


 質問の答えは返って来ないと踏み、リクの偽物に接近した。

 しかし、それは間違えだった。

 スケルトンからはありえない2本の尻尾。

 その先端は刃に成っていた。

 エルフが迫るタイミングに合わせて尻尾を肩に刺して動きを制限及び固定。


「風の精⋯⋯」


 固定した瞬間に首を斬る。


「翡翠の太刀」


 それだけがエルフの鼓膜に残った。

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