第116話闇の誕生
『やぁお嬢さん』
「喋った⋯⋯キモ」
『酷い!』
サエは扉の上に乗ったいる石像と話している。
「えっと、何?」
『ふむ。まずは賞賛を送ろう。お主はキチガイ狂人の如く旨みの少ないこの洞窟の魔物を殲滅を繰り返して1万回に達した』
「キチガイ? 狂人?」
大剣を持って石像にバシバシと叩く。
叩く度に『破壊不可』の文字が現れる。
『残念だが、破壊不可なんだよ。だかな、痛みはあるから辞めてくれ。謝るから。ごめんなさい。そして、君にはこのダンジョンに入る資格を手にした。戦う必要は無い』
「そっか分かった」
『ふ、その軽さ久しぶりな気がするぜ』
(何言ってんのコイツ)
扉が開いて中に入ると石製の机、ペンに紙があった。
向かい、紙を見ると『起こると絶望する事』と言う欄があった。
『お題道理に書きなさい』
「ふむふむ」
サエは大切な親友に嫌われる事と書いた。
サエにとっては萌南達は掛け替えのない友である。
「あ、変わった。なになに、昔に起こった嫌な事?」
色んな人から化け物を見る目で見られて友達が出来なかった事、と書いた。
『では始め!』
「え、説明無し?」
次の瞬間サエの視界は暗闇に包まれた。
真っ暗な空間、その中に光の塊が現れて人の形を成す。
その光の塊が増えていく。
複数人の光の形となり、様々な暴言が飛んで来る。
人を人と見ていない目を向けられ、サエの精神を擽るような暴言を吐き続ける。
精神を追い詰める事をひたすらやって来る光。
だが、サエには効かない。
『あれ? なんとも思わない?』
「ま、慣れてるからな」
『そう。次』
サエのプレイデータを元に複製されたモフリとセカイが出現する。
その2人は一言。
「私、君の事嫌い」
「同じくです」
それでもサエは動じない。
『なんとも思わないのか?』
「2人がそんな事、言わないって信じているからな」
屈託のない純粋な笑みを浮かべて見えない石像に対して向けて放つ言葉。
サエの視界が真っ暗から元に戻り目の前の扉が開いていた。
「ん? 次か」
進むと、次の部屋にはプールが設置してあった。
『さぁ!進むが良い!』
「⋯⋯」
『どうした?』
サエは常人よりも肉体的に強い。
それは筋肉にもよるが、それを耐える硬度がある骨のもよるのだ。
骨が常人よりも何十倍と硬いサエの骨の密度は当然高い。
故に、水に浮かばないカナズチ体質となっている。
プールに入れば当然沈み、車に引かれても大して痛みを感じない沙苗故の価値観。
簡潔に纏めると、サエである沙苗はカナズチで水に沈みプールでもまともに泳げないのでプール苦手で嫌い。
そんなプールが目の前にあるのだ。
「⋯⋯」
今すぐにでも元来た道を帰りたいと思ってしまうサエ。
しかし、後ろの扉は閉まっている。
『どうした?』
サエは考える。この状況を打開出来る道を。
そして、決定的な事に気づく。
そう、ここはゲームである。
プールに入りぷかぷか浮くサエ。
「⋯⋯自分だけの力で水に浮くの初めてだな〜」
モフリが動物に触るのが初めてであったようにサエも水に浮く初体験はゲームの中である。
感覚がリアルなワルフロでの水の感想は冷たかった。
「はよ行こ」
流石に冷たくて速く出たいと思ったサエは適当にバタ足で進む。
『何がしたかったんだ?』
石像的にはすぐに突破されるのでダンジョンのギミックの1つにもカウントしていない地形の1部だったのだが、サエが前で立ち止まるので疑問に思った。
プールを上がり、先に進むと今度も目の前が暗闇に包まれた。
『この暗闇の中進むが良い! しかし! 地面には強制死亡スイッチがある、気をつけるが良い!』
「ねぇ、それって地面よりも高い?」
『あぁ、そうだな』
「そっか」
ならば、とサエは再び大剣をインベントリから取り出して地面を叩く。
大剣の先端を地面に擦らせながら進むと、大剣の先端がボコっと出っ張っている所に当たる。
「お、これか」
『ちょ、卑怯! それは卑怯!』
「ルールなんてないんだよ。自由にやって良いの。これも1つの攻略法だよ」
『ぐうの音もでん』
直線的に進み、徐々に視界も晴れていき最後には完璧に見えるようになっていた。
『なんてこった』
「ほな次なーー」
次の扉を開けると目の前に宝箱があった。
「はっや! これで終わりですか、そうですか」
流石に以外過ぎて言葉使いがおかしく成ったサエ。
『ふ、ふんだ! これは今まで使ったSPの量によって報酬が変わる特別な箱だ! お主はレベルが上がる度にSPを使っていたのだろう? 少ないだけ性能が上がるこの箱! きっと報酬は小さいだろう。まぁ、せいぜい感傷に浸るんだな!』
頭をカキカキするサエ。
(コイツ何言ってんだ?)
純粋な疑問。
そんなのはどうでも良いと脳内ゴミ箱の奥底に入れて焼却炉で燃やす。
宝箱の前で片膝を着いて宝箱を開ける。
中から出て来たのは『闇』だった。
なんの比喩でも無い。暗闇が宝箱が出て来てサエを包む。
『あ、まじかーー』
このキチガイが訪れる事の許された運営名称の通称マジキチダンジョンが正式に幕を閉じた。
マジキチダンジョン最高報酬が無くなったからだ。
サエの中に闇が入っていく。
「え、え、あ、うん」
思考停止が1番だとサエは考えるのを辞めた。
《種族:
《職業:闇に変化しました》
《武器・防具:
《称号:【種族を超えた者】【現象に成りし者】【唯一の存在】【超越者】を獲得しました》
《ステータス、スキルが改変されます》
───────
名前:サエLv1
種族:
職業:
称号:【弱者】【超弱者】【SPの申し子】【種族を超えた者】【現象に成りし者】【唯一の存在】【超越者】
HP:80/80
MP:80/80
STR:30
DEX:10
VIT:30
AGI:20
INT:10
MND:20
SP:6000
固有スキル:【具現化の闇】
スキル:【SP倍加Lv5】【SP増加Lv3】【覚醒】【光属性超弱】【聖属性超弱】
特性:【闇】
───────
具現化の闇
自身の体の闇を具現化出来る。設置型の闇も出来る。3日経てば消える
───────
特性:闇
光に弱いがそれ以外にはそこそこ強く、自身の影は闇空間と成り収納可能。闇のある所に瞬時に移動出来る。闇がある所にいれば回復速度向上
───────
装備必要条件:闇である事
特性:【寄生】【装備解除不可】【永久武装】
説明:変化自在の闇、体の中にある。SPの消費量によって威力が変わる。服でもあり防具でもあり盾でもあり武器でもある
寄生─自身の中にある
装備解除不可─装備解除が出来ない
永久武装─切っても切れない関係
───────
覚醒
自身のSPを瞬時に分ける事が出来る。永久では無い
───────
「はっあ! めっちゃスキル減ってんやん! え、なんで? は? ふざけんな!」
『落ち着きなって。確かに減っただろうけど、良く考えて? 今の君凄く強いから』
「なに?」
【覚醒】はSPを都合良く分ける事が可能のスキル。
例えばDEXが欲しいならそれに全て使えばいい。解除も可能なのでデメリットは無い。
スキルが無いので鍛冶師よりも良い物は作れない。
AGIだったら神速に成れたりと色々と分さらに様々な武器になる闇との相性は抜群である。
ただ、技術系のスキルも消えているのでプレイヤースキルに頼るしかない。
『あ、後、今後ともよろしく! もう1人は嫌! 俺ちゃん居ると闇の操作とか凄く便利成るからメリットしかないよ!』
「はい?」
《
『名前付けてね』
「なんか脳内に喋り声が聞こえる! 石像消えたのに!」
ちなみに名前はさなえから『サナ』となった。
さなえだからサエ、さなえだからサナ。
サエサナコンビの誕生である。
《
『今後ともよろしく』
「女性の声を使うななな!」
石像のイメージが崩れていくサエであった。
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