第101話【決着】黒巫女召喚士と暴食之悪魔 ㉚
舞が終わった。
「行くよ!」
「ガル!」「ギャラー!」「ニャー!」「コン!」
ハクちゃんがイサちゃんマナちゃんに対して防御バフを私には攻撃バフを掛けてくれる。
イサちゃんは口でベルゼブブの右腕を噛み捉え、マナちゃんは足で左腕を捉える。
レーヴァテインをイサちゃんに向かって流石に気合いとスキルで耐えてくれている。
「巫女の舞、攻の節、【秘境之妖舞】」
虹色に輝く刀を膝に向かって振るう。
ギジリと衝突して大量の火花を散らし、衝撃波が巻き起こる。
『あぁぁぁぁ!』
もっと、もっと深く。
相手の膝を斬る。
イサちゃんとマナちゃんが耐えてくれている。この気を逃す訳には行かない。
斬れろ!斬れろ!
「はああああああああああ!」
「ガルガアアアアアアアア!」
「ギャラアアアアアアアア!」
気迫と共に力をさらに加えて刀を横薙ぎに振るい、そして相手の右膝を斬る事に成功した。
『グガァ、【ダークネスプロミネンス】』
「⋯⋯ッ!皆下がって!」
イサちゃんが口を離し、マナちゃんが足を離して下がる。
黒紫の炎がベルゼブブに中心に広がる。
ベルゼブブの残りHPは後、2割。
2つの心臓を破壊出来なかった。
「マナちゃんはイサちゃんを回復して」
「ギャラー!」
ボロボロだ。今回は1人でレーヴァテインを受け止めてくれていたのだ。
『む、しけらが、調子に乗るなよ』
ベルゼブブは高速で私に接近して来る。
『【ブレイクブレイド】』
レーヴァテインを横薙ぎに振るい、私は刀を盾のようにしてそれを防ぐ。
バリン、一瞬で刀が折れて塵となり消滅してレーヴァテインは諸に私の腹に入る。
1秒も無い時間の中で私はただ、一瞬で感じたのは『負けた』と言う思いだった。
「ギャラー!」
虹色のブレスが私に向かって放たれて私はブレスに巻き込まれてノックバックで吹き飛ぶ。
地面を何回もバウンドして止まる。
レーヴァテインは浅く刺さっていた。
あのまま進んでいたら完全に上半身と下半身はさよならしていた。
しかも、刀が折れた事で私の右足、マナちゃんの左翼が切れた。
ベルゼブブはゆっくりと接近して来る。
「くっ」
『な、動けねぇ』
【秘境之妖舞】の反動によって2分間は行動不可能となるのだ。
全く動けない。
さっきは少し動けたけど、今は完全に動けない。
防御した時はギリギリ【秘境之妖舞】の効果時間内だったのかな。
あぁ、指1本も動かない。
『調子に乗った罰だ。ゆっくりと味わえ』
「⋯⋯ま、だ」
絞り出すようにそう言う。
マナちゃんが回復を辞めて魔法を放って来るがベルゼブブが食べる。
タロットの恵である程度のダメージは入るがそれでもかすり程度で大したダメージなは成らない。
イサちゃんはボロボロ、ネマちゃんとハクちゃんではそもそもステータス的に論外である。
負けるの?
『⋯⋯』
返事してよ。このままだと負けるよ?
『どうしようもない』
どうしようもないってなんなのさ。
こんなに、皆頑張ってくれて。師匠達も駆け付けてくれたんだよ。
なのに、はい負けましたってシャレにならないよ。
沢山の人が駆け付けてくれた。
なのに、諦める事なんて出来ないよ。
もっと、もっと私を弱者と見てよ。油断しまくってよベルゼブブ。
後、後1分40秒近くで良いから遅く来てよ。
「⋯⋯ッ」
『さらば』
何でさ、何で何とも言わないの?
もう、目の前にベルゼブブは居るんだよ?このままだと負けちゃんだよ。
そんなの、嫌だよ。
『わたしは、諦めるとは言ってないし、諦めるつもりは毛頭ない。信じろ、父親組を。そして、舐めるな。わたし達に協力してくれている人達は、皆強いんだよ。わたし達よりもな』
ベルゼブブがレーヴァテインを両手で構えて、振り下ろす。
「⋯⋯ッ!」
「待たせたな!遅くなった」
青白く輝く剣、天叢雲剣で黒紫の炎を発するレーヴァテインを防いでくれる。
レイシアさんのお父さん事、剣士骸骨さんである。
「我々も居るぞ!さぁ、
言葉が聞こえた方向を見ると師匠のお父さん事、魔法士骸骨さんだ。
さらに、横にはランスロットさん、パナギアさんにナチスさんと居る。
「ギャラー!」
マナちゃんが私を
『雑魚の悪魔共ではやはり意味は無かったか』
天叢雲剣でレーヴァテインを弾き皆の元へと戻って来る。
「一斉に行きますか」
パナギアさんがそう言って、各々構えを取る。
『⋯⋯【バーサーカー】【ブロック】【シールド】【パーフェクトキューブ】【硬質化】【ダークネスプリズン】』
ベルゼブブは己を覆う盾を顕現させた。
「モフリ、行けるか?」
「はい、もう動けます。私も全火力で行きます」
攻撃系の霊符を全て出して、形代も使って【竜巻】の準備もする。
「なら、行くぞ!我が望は絶対な聖なる力、悪を祓い、悪を罰し、悪を屠りたまえ。善行を持ち、善の力を示し、善を行いたまえ【神聖魔法:ディメンション・クリア】」
「朧神流剣豪術、奥義【神羅の一閃・朧】」
「タロット様に栄光あれ、【セイクリッド・クラウン・ブレイド】」
「我が信仰心を持って対象を殲滅します【セイクリッド・リバース】」
「行くぜ!【セイクリッド・スピア】」
「霊符、妖火、風弾、風刀、風槍、風連弾、電弾、爆符、全解!結合妖術、電風弾!竜巻、展開!」
私の全身全霊の最高火力を持ってベルゼブブに攻撃する。
イサちゃんマナちゃんも共にブレスを放つ。
魔法士骸骨さんの魔法はベルゼブブの所に魔法陣が出来て天に届く光の柱となる。
剣士骸骨さんの斬撃は何も見えないようだけど、空気が振動し悲鳴を上げているのが分かる。
ランスロットさんの斬撃は神々しい、眩しくも何か見とれてしまう様な光の斬撃を放つ。
パナギアさんは同じく神々しい光で球体を形成してベルゼブブに放つ。
ナチスさんは同じ光でスピアの形をした物を放った。
結合妖術が霊符にも使えたら他の種類の妖術もあったのに。
ベルゼブブは食べる事はしないで防ぐ事に集中したようだ。
他にも色々とスキルを使っている可能性がある。
だけど、そんなのは関係無い。
全部、全部貫けば良い。
『行っけえぇぇ!』
皆の気迫と空気の悲鳴、空間の歪みを感じる程に激しい技がベルゼブブに集中した。
衝撃波が嵐となり迫り来るがマナちゃんが耐えてくれる。
煙が立ち、徐々に晴れて行く。
そして、現れたベルゼブブはボロボロだったが立っていた。
そう、立っていたのだ。
『む、しけらが』
「やはり最後の心臓も見つけ出す必要があったか」
ベルゼブブのHPは残り1割の中の4割程である。
最後の心臓、何処にあるのか検討もつかない。
背中全体が心臓の方が寧ろ楽と思うけど、そんな事は無い。
『我は蘇る。だが、貴様らは違う。我は眠る。一緒に逝こうぞ!』
「まさか、自爆か!」
「ッ!マナちゃん突っ込んで!」
「ギャラー!!」
「大丈夫、信じて」
「⋯⋯ぎ、ギャラー!」
マナちゃんがベルゼブブに向かって飛んでくれる。
私はインベントリから死霊の帝王の報酬である宝玉を取り出す。
掌サイズで持ちやすい。野球ボールのような物。
『吸収の宝玉』相手のHPが1割以下の時に相手に投擲して当てた場合に使用可能。1回ポッキリの消耗品。
能力は相手の力を自分の物にする効果がある。相手が弱いのならSPとスキル等になり、相手が絶対的強者の場合自分のレベルになったりする。ベルゼブブクラスだと進化も有り得るかもしれない。今、レベル100だし。
「よろしくねわたし」
『任せろ!だが、これは完全にこっちに意識が欲しい。全部感覚でやるには私は邪魔だ』
「ひっどいな〜でも、どうやってやれば良いの?分かんないだけど」
『気合』
「根性論⋯⋯眠れ〜眠れ〜⋯⋯⋯⋯マナ、しっかり平行移動してくれよ!」
「ギャラー!」
野球のフォームのようにわたしは宝玉を自爆しようとしているベルゼブブに向けて投げた。
山なりに飛んで行き、ベルゼブブに当たる。
自爆しようとしていたベルゼブブは体から黒紫の光を出して居たが、それも宝玉に呑まれて行く。
『な、何だこれは!ぬ、ぬおおお!』
「あはは、半信半疑だったが、まさかベルゼブブも出来るとは」
行き当たりばったりわたし達のプレイスタイル。
今回は助かったぜ。
『わ、我は!我は負けんぞォ!』
「因子も逃がしてたまるか!【ホーリーキューブ】」
ベルゼブブを囲う金色の半透明のキューブが出来上がる。
『レーヴァテイン、燃えろ!』
レーヴァテインは何も反応を示さない。
『【ダークネスブラスト】【コキュートス】!』
ベルゼブブの魔法は一切出て来ない。
或る意味哀れな姿を晒しているベルゼブブ。
『おい!我が同胞達よ我を助けろ!』
だが、師匠組が扉を破壊し始めて悪魔の出て来る数は減り、既にゼロである。
現在は残党の悪魔達が掃討されている状態。ベルゼブブを助けに来る悪魔は居ない。
『や、辞めてくれ』
「モフリ、耳を貸すな」
「あぁん?そもそも解除の仕方知らねぇし」
「も、モフリ?」
『い、嫌だああ!死にたくない!誰か!誰かああ!』
もう、終わりなんだよ。
『さらばベルゼブブ』
「
犠牲はゼロ、これは完全勝利と言って差し支えない筈だ。
じゃあねベルゼブブ。
ベルゼブブは宝玉に吸い込まれて、レーヴァテインが虚しく地面に刺さる。
そして、宝玉は私の所に来て、私の口の中に無理矢理入り飲み込ませた。
一瞬の出来事で何が起こったのか分からない。痛みは無い。完全に意味不明の思考停止状態である。
《進化を開始します。情報処理の為、強制スリープモードへと移行します》
「え」
強烈な睡魔に襲われて、私は意識を閉ざした。
長いようで短い
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