第77話【本能】黒巫女召喚士と暴食之悪魔 ⑥
私は今回が初のVRゲームだ。自分が弱いのは自覚している。
だから多少の事では何とも思わないけど、ネマちゃん達の事も関わって来るとさすがに怒る。
『考え事かな?』
「しまっ!」
私が挑発に乗って少し思考を巡られせた瞬間にベルゼブブに接近して来ていた。
今まで自分から攻撃して来る事の無かったベルゼブブがだ。
『さすがに飽きたんだよ』
そして私に向かって拳を放つ。
ああ、私は勝ちたい。皆も私の為に頑張ってくれているのに、私が最初に脱落。そしてそのまま皆も。
私が、私がベルゼブブの挑発に乗ったから。
私は、勝ちたいよ。頑張ってくれる皆の為に、師匠のお父さんの為に、だからここに来てベルゼブブと戦って、勝ちたい。負けたくない。
そう、だから勝つ。
『何?』
「ギャラー!」「ニャー!」
「わたしは、負けない!」
放たれた拳を少し上半身を横にずらして躱し鎌の先端を弱点に向けて振るう。
ベルゼブブはバックしてわたしの攻撃を躱す。
「ギャラー!ギャラー!」「ニャニャ!」
「⋯⋯急ぐぞ」
「ギャラ?」「ニャ?」
「今回は別物だ。わたしが出て来たのに、私は絶望して居なかった。今回は現実逃避では無い。己の意思でわたしと言う存在を呼び起こしたんだ。いや、無意識って方が近いか?なんでゲームでわたしの存在がだんだんと私に近づいて来るんだよ!ネマ、マナ、イサ、ハク、わたしに手を貸せ。じゃないと不味い。今回はわたしが起きている間に私が起きるかもしれない。そうなると、悲しむぞ」
過去の出来事を思い出すからな。嫌な思いで、忘れたい思い出。それを思い出すのだ。
桃の事、初心者狩りの事、狂人の事。
それを阻止するのもわたしの役目。だから急がなくてはならない。
今回は嫌な思い、絶望からの現実逃避でわたしが来た訳では無い。勝ちたい思いの勝つ為の希望によってわたしが来た。
前例が無いから分からないが何となく良くないと思う。
だから、さっさと倒す。
『お前は、誰だ?』
「わたし?わたしは、わたしだよ!」
マナにベルゼブブの真上に行って貰い私はダイブする。
そしてベルゼブブの横に1枚霊符を飛ばしてわたしもベルゼブブの横を通過するように落下する。
「解!」
霊符から放たれた【風弾】はわたしに向かって飛んで来る。その方向に足を向ける。
ここでは味方の攻撃は跳ね返り多少のノックバックがある。
そのノックバックを利用してわたしはベルゼブブに接近した。
そして鎌を振り下ろす。
『阿呆め』
ベルゼブブはサラリと躱して回し蹴りを放つ。
わたしは体を横に倒して捻り回し蹴りを回避して霊符【呪縛】をわたしの腕とベルゼブブの足に付ける。
ベルゼブブの足の動きによってわたしもその方向に引っ張られる。
そして腕を引き【呪縛】を解除してわたしはベルゼブブの少し上へと来た。
『器用な、猿め!』
「黙れよ蚊が」
わたしは空中で体を捻りベルゼブブの背中、そして羽の付け根を狙って鎌を振り下ろす。
鎌の形は相手の背後を狙うには丁度良い形をしている。扱い難いが。
『ふん!』
それを知ってから知らずかベルゼブブは体を翻しバク転のような形になりわたしに蹴りを放つ。
「ギャラー!」
「来るな!」
来ても意味が無い。
後ろに霊符を投げて【風足】を使ってベルゼブブを足場に後ろに下がり霊符【風弾】を解放してわたしにぶつけて反動のノックバックで再びベルゼブブに接近して首とわたしの足首を【呪縛】で繋ぐ。
【呪縛】の鎖に片足を乗せてそれを足場に跳躍してベルゼブブの真上を取る。
『まるでさっきとは別人だな』
「別人格だし、あながち間違ってないかもね」
【呪縛】を解除して羽に向かって鎌を振るう。
ベルゼブブは再び同じように蹴りを放つが体を捻り躱してベルゼブブの足に鎌を引っ掛けて極小のダメージを与えつつ相手の背後にわたしが動く。
そしてわたしは口を開き羽の付け根目掛けて食らいつく。
「うぐ」
不味い。
何に表現するべきか分からないが不味くて意識が飛びそうなくらいには不味い。苦い。
だけどそんなのは気合いに任せてねじ伏せて耐える。バッドステータスが無い事が幸いだ。
そして首と顎に力を入れて相手の羽の1枚を噛みちぎる。
『ぐぬ!』
「へぇ〜欠損ダメージは相当のようだな。それでも1割減らないのか」
『貴様!我の分野を盗む気か!』
「食べるのはお前の専売特許かもな。だけど、わたしは違う!わたしの専売特許は自分の心と家族と仲間を守る事だ!」
ベルゼブブの体は大きくない。
胴体に足を回して落ちないようにして鎌を振り下ろして草刈りのように鎌を動かして羽を1枚、また1枚と削ぎ落とす。
『辞めろぉ!』
ベルゼブブは自分の腹、つまりはわたしの足をぶん殴り粉砕させる。
ダメージエフェクトが飛び散りわたしの足は無くなる。
ゲーム何だし欠損とか作るなよとか言いたいけど助かった場面があるので言えない。
ベルゼブブに固定出来なくなった私は重力に任せるままに落下して行く。
「ギャラー!」
「ナイス」
マナにキャッチされてマナはベルゼブブから距離を取りわたしに回復魔法を掛けてくれる。
かなりの速度で回復して欠損した足も回復した。
『褒めてやろう。脆弱な人間に我の羽を切れた事をな』
「ま、お前の羽の付け根ってあんまり太くないし丈夫じゃないしな」
ゲームバランス的に羽は弱く設定してあるのかもしれない。
「それに、わたしはここでは人間じゃなくて
『どうでも良い!』
ベルゼブブはわたし達に接近して来る。
マナには離れろと言ってわたしは跳躍して放たれた拳を躱して腕に器用に乗り【風足】を使って高く跳ぶ。
そして体の向きをベルゼブブに向けて背後に霊符を投げる。
同じ容量で加速して落下し、回転を乗せてベクトルを攻撃に向ける。
そして羽をもう一度切り離す。【呪縛】を相手の体とわたしの腕に巻き付けて腕を引き体をベルゼブブに寄せて再び鎌を振るって羽を斬り飛ばす。
『クソがァ!』
「プライドってのが悪魔にあるのか?1枚でも飛べる蚊だったなお前は」
適当に放たれた魔法をマナの上に乗ってマナが躱して行く。
その際に【以心伝心】でわたしの感覚も少しだけ送れるので狙いの無い魔法など躱すのは容易である。
スキルにまじ感謝。
「マナ、近づ居てくれるか?」
「ギャラー!」
マナは黒紫の魔法を躱してベルゼブブの背後に接近する。
わたしは最後の羽を切り落とす。
そして遂に、ベルゼブブのHPは1割減らす事になった。
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