第66話生まれ変わるマナ

 私が着いた場所は名古屋城を細くした感じの塔である。

 のんびり感嘆に浸っている場合では無いので木製の扉を押して中に入る。

 螺旋階段が壁沿いになるので登る。


 かなり登った先には石の台座がある部屋が会った。

 正確には空間か。

 マナちゃんをその場所に置いて何かないかと探す。

 解呪出来る人なんて知らないので頼る事も出来ない。

 こう言う時にそれらしいクランが建設されているのなら良かったのだが、クランシステムはまだ実装されていない。


「無い!無い!」


 私は階段を降りて他の部屋にも何かないかと調べた。


 沙苗ちゃんのおじいさんがここを進めた理由は詳しくは聞いていない。だけど信じる。

 だから私は色々と探した。

 そしたら何かが記された壁を見つけた。詳しく見る暇は無いのでサラサラと読んでその場を去る。


 それから何分と探したがそれらしい物は無かった。


 私はマナちゃんの場所まで戻る。

 マナちゃんは今現在も苦しんでいるようだ。


「お願い、誰か」


 国の中で助けてと叫ぶのが正解だったのだろうか?だけど永続的な呪いがどうしてあるかと聞かれたらどうしよう?

 あぁ、でももう国に戻る時間は無い。


 私はただ祈った。

 ここはゲームだ。だけど私に取ってはもうマナちゃん含め皆家族と同じようなモノだ。

 失いたくない。お願い、誰でも良いから。


《クエスト条件達成》


 そんなウィンドウは私は見る事が出来なかった。


「え?」


 頬に伝わる涙を吹き飛ばすように暖かい光が天井から刺す。

 そこから出て来たのは大きな、だけど神々しい人だった。


「私はイエスと名乗っておきましょう。貴方の真実の偽りのない想いを聞き届けに参りました」

「ほんと、ですか!マナちゃんの、マナちゃんの呪いを解いてください!」

「無理です」

「そ、そんな」

「死の宣告は命を刈り取る呪い、私程度の力ではその呪いを解くことは不可能です。ですが、魂に対する呪いでは無いので新たな生命として転生させてあげる事は可能です。その際に記憶の引き継ぎ等も可能です。大きく種族は変化しないと思いますが多少の変化はあります」

「でも、それだと今のマナちゃんは」

「それ以外に助かる方法はありませんよ」


 私は考える。突然出て来たこの人を信じるべきだろうか?だけど、私に残された選択肢は無い。

 だから私は賭ける、私の想いや願いを叶えてくれる為に来たと言っているこのイエスさんを。


「お願い、します」

「分かりました⋯⋯さぁ小さき命よ。ソナタの願いを聞き届けましょう!小さき鳥よ、アナタは強く願いなさい。次に生まれるなら何に成りたいと、なんの為に生きたいと、さすれば大方その通りになるでしょう。それでは始めます。【死と生を司る者デス・ライフ】」


 その瞬間イエスさんの輝きはまして光がマナちゃんを包み込む。

 そして私のインベントリから強制的に【虹の羽】が出て来る。

 虹色に輝く羽はマナちゃんを包む光の中に溶け込んで行く。

 光は輝きを増すとマナちゃんを何かが包み込んで行く音が聞こえる。

 光が収まるとそこには卵が会った。


「アナタの願いは聞き届けました。新たな生命にご武運を」


 そう言ってイエスさんは空気に溶けるように消えて行く。

 私はすぐに我に返りマナちゃんと思われる卵を拾い上げてステータスを確認する。


 ───────

 鳥の卵Lv1

 名前:マナ

 HP:1/1

 MP:0/0

 STR:0

 DEX:‭0‬

 VIT:‭0‬

 AGI:‭0‬

 INT:0

 MND:0

 スキル:【加速成長】【応召不可】

 加速成長:成熟するまで自動的に経験値が貰える。このスキルがある限り成熟しておらず、スキルは固定となる

 応召不可:このスキルがある限り応召は出来ない

 ───────


「な、成程」


 正直上手く状況を呑み込めていないが私は卵を拾い上げて優しく自分の懐に入れる。

 その後この近くにある国に向かって鳥居がある事を確認し、潜る。

 さすれば師匠の所に行ける。


 シールを貼っているので目を細める必要も無く押す部分が分かるので押す。

 登ると鳥居の前を掃除している師匠の姿が会った。落ち葉もゴミも無いだろうに、何を掃除しているのだろうか?


「あの師匠」

「ん?モフリか?」


 今回ここに来た理由は2つ、1つは黒巫女のレベルが11になったから、もう1つはここ程安全にマナちゃんの管理が出来る場所を知らないからだ。

 私は師匠にマナちゃんの話をして私はここに当面の間居る事となった。


「さて、どうする?一時的に別の系統を覚えるか、それとも風系を続行するか?」

「ん〜」


 ここは悩む。正直電系も捨て難いのだ。だって電気だよ?きっとかっこいい。


「まぁ、風系を続けながら他の系統を覚えるってのも良いけどね」

「いいんかい」

「あぁ、ただ他の系統を覚えるのに時間が掛かるってだけだ。じゃあ霊符はどうする?続行?他の?それとも戦闘向きの霊符にするか?」

「そんなのあるんですか?」

「まぁな」

「戦闘面の強化をしたいので戦闘向きので!」

「はいよ。じゃあ、まずは風系からね。これを覚えてな」


 師匠が構築した術式を見て、覚えてスキルにして行く。


 称号で【電系の黒巫女】と【攻系の霊符】が手に入った。

 説明は前回のを少し変えた感じだった。


 ───────

【風連弾】

 MP20消費する事で連続で5つの風の弾を飛ばせる。1発の威力は【風弾】に劣る

 ───────

【電脚】

 MP5消費する事で発動可能。移動スピードが上昇する。持続時間10秒

 ───────

【電弾】

 MP10消費する事で電気の弾を飛ばせる

 ───────


 ───────

【爆符】

 霊符専用。爆発する。火力はINTに依存する。作成必要MP20

 ───────


 であった。

 霊符の補充もしたいのでマナちゃんが孵ったらゴールド集めとマナちゃんと皆のレベル上げだ。


「そういえば師匠ハクちゃん達は進化しないんですか?」

「ん?するが召喚獣と式神では進化の基準が違うぞ?」

「成程、そう言う事ですか」


 折角の機会なので師匠と色々と話そうと思う。

 マナちゃんが生まれるその時まで。


「師匠の式神ってなんですか?」

「ん?あぁ、蛇だよ」


 師匠は形代を取り出して掲げると形代が光、光が収まると大きな蛇が目の前に現れて舌をシュルルとしていた。


「えーと、バジリスクが主体だった気がする?」

「な、成程」

「名前はハジーだ。後は八岐大蛇と九頭龍、白虎や玄武、朱雀に青龍が居たかな?」

「多いですね」

「まぁな。召喚獣入れるとモフリの方が多いんじゃないか?」

「そうですかね?」


 師匠が覚えていないだけで他にも沢山居そうな気がするのは私だけでは無い筈だ。

 この場に私と師匠以外は居ないけど。


 にしても蛇か〜可愛いな〜。

 私はバジーさんに触れて撫でる。撫でると目を細めるバジーさん。


「⋯⋯⋯⋯あれ?私に威嚇もしないし警戒も怯えもしないね?ハクちゃんと同じ枠かな?」

「シュルル?」

「モフリは生物ならなんでも良いのか?これが好き!ってのは無いのか?」

「私はモフモフが1番好きですね。そこに差別は無いです。そもそも触れるだけで私は幸せですよ」

「そうか」


 その後も師匠と話したりしていたらいつの間にかマナちゃんのレベルが10になって卵にヒビが入った。

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