第40話黒巫女召喚士とその仲間とゴリラの戦闘 弐

 ゴリラから湯気のようなモノが出ている。


「冷やしているのかな?」

「だと思うよ。あのレーザーを打った反動みたいな物かな?」

「多分そうだよね。それに動かない」

「どうしますか?」

「まあ、これで攻撃して熱でダメージを受けるなんて嫌だしな〜」

「にゃ」

「ネマちゃん!」


 ネマちゃんは駆け出して行く。

 そして爪で1度攻撃してから戻って来る。


「にゃ」

「ダメージあるようだね」

「なら私達は攻撃出来ないね。下手に受けてそのダメージが高くてやられるなんて考えたくない」

「そうだね。セカイちゃん、アレやろうか」

「でも、あれってかなりの霊符を消費しますよ?」

「セカイちゃんへの借金もあるけど⋯⋯時間を掛けると集中力が下がっちゃうからね」


 集中力の低下は許容出来ない。

 少しのミスでムニンちゃんとオレンちゃんはHP0になってしまう。

 だからこそ速く勝敗を付けたい。


「分かりました。では、行きますよ?」

「うん!」

「【衝撃波】」


 私はセカイちゃんにハリテのように背中を叩かれ、【衝撃波】によってゴリラの上に飛んで行く。


「展開、風刀!」


 私はお祓い棒に【風刀】を纏わせて、天井に突き刺す。

 天井に刺さったら術を解いて、お祓い棒がズルズル抜けそうになっているので、仕事を速く終わらせる。

 私は右手でお祓い棒を掴んで、左手をゴリラに向ける。

 そして、霊符をひたすら取り出しては自由落下に任せて落として行く。


「きちんと使えますように」


 私はそんな祈りと共に、【風弾】の霊符を解放する。


「全解!」


 数多の霊符が一斉に解放され風の玉が縦横無尽に駆け回る。

 壁に当たって反射し、天井に当たって反射し、仲間に当たって反射を繰り返しゴリラに命中する物や途中で消滅する物もある。


「おぉ」


 それは誰が零した声かは分からない。

 そして、これで減らせたのはゴリラのHPの2割、つまり合計5割を削れた事になった。


「こっからが本番だよ!」


 ムニンちゃんが叫び、短剣を構えてオレンちゃんも短剣を構えてセカイちゃんもすぐに動ける体制に入る。

 私はお祓い棒が抜けて落ちたのでそのまま皆の所の走る事はしないでその場に留まる。


「ぐごおおおおおおお」


 ゴリラが再びドラミングをして、背中の岩が膨張して行く。


「そ、そんな⋯⋯ゴリラの原型は残してよ」

「そこ!」


 ゴリラの背中から合計8本の腕が生えて来ている。

 そしてゴリラの腕は合計10本となり体も大きくなっており10個の手でドラミングをしている。


「純粋な強さだね」


 ゴリラは動き出した。

 手を地面に当てて衝撃を撒き散らしながら進んでいる。


「ムニンちゃん!オレンちゃん!」


 ムニンちゃんとオレンちゃんは左右にすぐに動いてゴリラから距離を取り、ネマちゃんはゴリラに近づいてゴリラが拳をネマちゃんに向けて放つが細かい動きで躱して股を通り私の所に来る。


「私が相手をして行きます!隙を見て攻撃をお願いします!」

「分かった!」

「了解」

「うん」


 私は術式の構築を始める。


「あ、お姉ちゃん【呪縛】の霊符を頂戴」

「え、まあ別に良いけど」


 私は【呪縛】の霊符を4枚程渡しておく。

 そしてムニンちゃんは霊符を受け取りすぐに駆け出して行く。


「オレン!」

「うん」


 ムニンちゃんはオレンちゃんに霊符を2枚渡す。


「セカイねーチャージ!」

「ん?分かりました」

「なんだか分からないけど、私は私の仕事をするね!」


 私はハクちゃんにセカイちゃんの近くに着いて貰い、攻撃バフを掛けて貰いネマちゃんにはゴリラの背後から攻撃しては下がって貰い私は【風弾】を放って行く。


「オレン!」

「是」

「「解!」」


 ゴリラの前に行った2人は互いに1枚の霊符を解放して使い、互いの右手首に【呪縛】を巻き付けていく。

 そして、ゴリラの背後に動くように前に走って行く。

 私は2人のやりたい事が分かった。


「全力で行くよ!」


 私は霊符を数枚取り出す。


「タイミングを合わせるよ!展開、風槍、解!」


 術で【風槍】を使い、霊符からも解放してゴリラの上の方を狙って行く。


 2人の【呪縛】がゴリラの足に引っ掛かり、そしてさらに前に進んで行きゴリラの上の方に【風槍】が数本命中してバランスを崩して前のめりで倒れる。

【呪縛】を互いに付けて相手を転ばせるには2人の走る速度やタイミングなどが完全に一致していないと出来ない。

 これが双子の力と言った所だろう。


「スーー【チャクラム】!撃の型!【衝撃集中】【発勁】【パワーナックル】【パワー】【加速】」


 青色のオーラがセカイちゃんの右拳に集中し、今まで以上の輝きを放ち、衝撃を一点に絞り一撃を重くしてゴリラの頭上を殴る。

 岩を抉り、大量のダメージエフェクトを吐き出して行く。


「まだ、終わってません!」


 ゴリラのHPは残り2割、そして起き上がろうとしている。


「にゃ」

「これは⋯⋯分かりました」


 セカイちゃんはネマちゃんが加えていた霊符を受け取った。


「ネマちゃん配達ありがとうね。セカイちゃん!行くよ!」

「はい!」

「2人も!」

「おーけー!」

「うん。問題ない!」

『解!』


 皆で【呪縛】を解放してゴリラを地面に固定して行く。

 それでも数秒しか持たないだろう。


「解」


 ゴリラに【呪防】の霊符を貼って解放して防御力を下げる。


「一気に斬る!」


 ムニンちゃんとオレンちゃんはセカイちゃんが抉った頭の所に居て、セカイちゃんは2人の場所を取るために下がっている。


「「【パワー】【加速】【スピードラッシュ】【連続斬り】【パワースラッシュ】」」


 高速の斬撃を使って最後のHPを削り切る。

 私はその斬撃を見る事が出来なかった。


《ボスモンスターを討伐しました。次の階層に移動が可能です》

《経験値を獲得しました。ドロップアイテム:【岩皮】×3を獲得しました》

《Lvが53に上がりました》

《職業:召喚士Lv4が召喚士Lv5になりました》

《契約の上限が増えました》

《職業:黒巫女Lv4が黒巫女Lv5になりました》

《黒巫女Lvアップにより、新たな妖術と霊符を獲得可能になりました》


 ボス部屋の奥に扉が現れ、中央には宝箱がある。

 皆で宝箱の前に行く。


「勝ったねぇ」

「そうですね」

「楽しかった!」

「うん、楽しかった」

「誰が開ける?」

「モフリさんで」

「「お姉ちゃんだね」」

「良いの?」

「まぁ、セカイねーと元々私と出会ったのってお姉ちゃんのお陰だしね。お姉ちゃんが中心となっているから、お姉ちゃんが開けて」

「ありがと。じゃあ開けるよ」


 宝箱を開けると鎧があった。


「誰も使わないね」

「だね。皆軽装だし」


 ───────

 岩剛力羅の鎧(頭)

 特性:【硬質化】

 VIT+90

 説明:岩の肌を持った剛力羅の肌を使って作成した兜。MPを込める事によって防御力を一時的に上げる事も可能

 ───────

 岩剛力羅の鎧(胴)

 特性:【硬質化】

 VIT+120

 ───────

 岩剛力羅の鎧(足)

 特性:【硬質化】

 VIT+90

 ───────


「じゃあ、行きますか!次の世界に!」

「ええ」

「おー!」

「うん」


 私達は部屋の奥に現れた扉に向かって歩き出した。

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