第39話黒巫女召喚士とその仲間とゴリラの戦闘 壱

 ゴリラの再生能力は1秒に1パーセントのようで、ムニンちゃんの短剣の能力で相殺出来ているので、いずれ倒せるだろう。

 私は遠距離からチマチマ攻撃するのに徹するので、【風弾】を基本的に使う。

【風刀】や【風槍】の方が1回で与えるダメージは大きいだろうが、攻撃のメインはセカイちゃんである。

 AGI極振りのムニンちゃんとオレンちゃんでは火力不足であり、ネマちゃんのメイン攻撃は爪であり、相手の岩のような皮膚の方が硬いし、与えるダメージが少ない。なので、攻撃しては下がって地道に攻撃して貰う。

 イサちゃんにはムニンちゃんとオレンちゃんのどちらかにターゲットが向かれたら【挑発】でリセットして私の妖術で私にターゲットを移す予定である。


 ムニンちゃんはゴリラの攻撃を余裕を持って躱している。

 衝撃波の余波でダメージを受けるのを警戒しているのだ。

 壁や天井を使って縦横無尽に駆け回っている。

 それはオレンちゃんにも言える事である。

 私は2人がゲームをしている姿は滅多に見ないので感嘆している。

 セカイちゃんは一撃一撃を重くしている。


「ハクちゃん、そろそろセカイちゃんの攻撃バフが切れそうだから掛け直して。それと、MP節約の為にムニンちゃんとオレンちゃんには今は辞めて」


 これにはきちんと許可を貰っている。

 私のタイミングでバフを掛けるか掛けないかを決める。


 ゴリラは岩を取り出してセカイちゃんに向かって投げる。


「【縮地】」


 後ろに一瞬で移動して躱して、武術の縮地を使って近づいて正拳突きをする。


「【発勁】【衝撃波】【パワーナックル】」


 衝撃音が響き、ゴリラのHPバーが削れ、1割を削った事となった。


「新しい攻撃パターンが来るかも!」

「警戒」


 ムニンちゃんが私達に警告のように叫んで、オレンちゃんは短くそう呟いた。

 ゴリラは眼を赤く光らせ、そして空中から投げる岩よりも小さいが数個の岩を顕現させ、そして飛ばしてくる。


「まさかの遠距離攻撃なの!」


 ムニンちゃんがそう言って、そしてその岩は全てオレンちゃんに集中する。

 打っては再び呼び出して打つを繰り返して数多の数の岩をオレンちゃんに飛ばした。


「危ない」


 オレンちゃんはそれを地面を移動して、岩と岩を乗り移るように移動して躱して、そして天井に行って蹴り壁に足を付けて力を加えて反対の壁などに移動して、地面に着地したらすぐに走って距離を取っていく。

 その間に私は【風弾】を打ちながら状況把握に務める。


「お姉ちゃん」

「どうしたの?」

「全体の指揮よろしくね!私達双子妹はお姉ちゃんの意見を素直に聞くから。よろしく!」

「え、ちょ」


 ムニンちゃんもゴリラに向かって走って行った。


「それなら私も任せますね」

「セカイちゃん!」

「モフリさんなら問題無いですよ」

「どこからその信頼が?」

「親友ですから!」

「⋯⋯うん、分かった」


 セカイちゃんも駆け出して行った。

 オレンちゃんは岩を躱して反撃をして、ムニンちゃんは壁を蹴って天井に行って、天井を蹴ってさらに回転して遠心力を乗せてゴリラに攻撃する。

 セカイちゃんはスキルを使わずに攻撃している。

 踏みつけや蹴りを警戒しながら足の所を攻撃している。


「この岩⋯⋯鎧みたいだよ!」

「鎧⋯⋯って事は岩と岩の隙間は生身。その隙間を攻撃するね」


 ムニンちゃんが叫び、オレンちゃんが返事をする。


「セカイちゃんは1度下がって」

「分かりました」


 セカイちゃんが私の隣に来る。


「結構難しいと思うけど、少しだけやろ」

「分かりました!やりましょう」


 私は術式を構築する。


「飛んでけええ!風弾」


 私はセカイちゃんを【風弾】で飛ばす。

 パーティメンバーにはダメージは通らないが、ノックバックや術が反射する。

 それを利用して衝撃を与えて加速させて飛ばせる。

 本当は空中に飛ばしていつものコンボを使って、最大限まで落下加速を付けて【メテオスタンプ】をするのがメインである。

 だが、前回のイベントでは使えなかった。

 さらに、ここはボス部屋なので上には使えない。

 下手したら天井にぶつかるだけになってしまう。


「フーー【チャクラム】」


 セカイちゃんの右拳に青色のオーラが現れる。

【チャクラム】とは武術家のLvが50になると覚えられる【チャクラ】を使うスキルである。

 イベント終了後にセカイちゃんが1人でレベリングした時に得たようである。


「撃の型」


 セカイちゃんの右拳の【チャクラ】のオーラが丸く固まっていく。


「【衝撃波】」


 セカイちゃんは着地して、遠心力をさらに伸ばすように、それでいて綺麗な正拳突きを使い、さらに【衝撃波】でダメージを通しやすくする。


「ムニンちゃん!オレンちゃん!」

「了解!」

「是」


 ムニンちゃんは天井から落下しながら高速で回転して遠心力を乗せてきちんと岩の皮膚の隙間を狙う。


「【サイクロンスラッシュ】【パワースラッシュ】」


 さらに回転して、短剣から少し光が乗り、そしてゴリラに攻撃する。

 オレンちゃんは地面から跳躍する。


「【サイクロンスラッシュ】【パワースラッシュ】」


 こちらも回転しながら登り、ゴリラを攻撃する。

 これによりゴリラのHPは3割削れた。


 ムニンちゃんとオレンちゃんが使うスキルは技能系でクールタイムがあるがMPは消費しない。

 技能系でも消費するやつはするらしい。


「さらに攻撃パターンが変わるよね」


 ゴリラは拳を作り自分の胸を叩く。ドラミングである。


「1度集合!攻撃パターンを見よう!」

「分かりました!」

「了解!」

「うん」


 3人とも集まって来て、そしてイサちゃんが前に出る。


「イサちゃん⋯⋯」

「ワン!」


 イサちゃんの役割はタンクである。

 守りを得意とし、味方を守る役割である。だからこそ前に出て来たのだろう。

 正直やられて欲しくないし、危険に晒したくない。

 だが、イサちゃんがそう思うなら、感じるなら、尊重しようと思う。


「その時は頼むね」

「わん!」

「ぐごおおおおおおおお!!」


 ゴリラの叫びと共にゴリラは口を開けた。


「口?⋯⋯口」


 ゴリラの口にエネルギーが吸収されるように集まって来る。


「完全にレーザーのチャージ」


 私は霊符を2種類3枚づつ取り出し、壁に3枚貼る。


「皆私達の後ろに、ハクちゃんはイサちゃんに防御バフを、ネマちゃんも後ろに下がって!」


 私は霊符を前に掲げる。


「風壁、解!」


 解放して風の壁を3枚作り出して、そして壁に張った霊符を解放する。


「解」


【呪縛】の霊符が飛び出して【呪縛】と【呪縛】が絡みあい、中心に塊を作る。

 刹那、ゴリラの口からレーザーのようなブレスが飛んで来る。


「ぐぬ」


 衝撃で空気が振動し、空間が揺れるような感覚に苛まれる。

【風壁】を持続させる為に意識を集中させるが衝撃が直接体に感じる。


「イサちゃん!」


 イサちゃんに【堅牢】を使って貰う。

【呪縛】が壊れ、【風壁】にヒビが入り、割れる。

 そして、レーザーは私達を包み込む。

 イサちゃんと私が盾となってムニンちゃんとオレンちゃんを守り、セカイちゃんが私を支えてくれる。


 そしてレーザーが収まると、HPが残り2割のイサちゃんに3割の私が残った。

 他の皆はセカイちゃんが少し削れていたが、無事であった。


「お姉ちゃんポーション飲んで!はい!」

「え、良いの?」

「良いよ。クエストの報酬だし、私あっても意味無いし」

「ありがとう」

「私のも」

「ありがとうオレンちゃん」

「私のも⋯⋯」

「セカイちゃんは自分で使ってよ!」

「分かりました」

「あ、私はまだ余っているしイサちゃんに⋯⋯」

「いや、イサちゃんには悪いけど応召するよ」

「わん!?」

「ごめんね」


 私は驚くイサちゃんを応召する。


「レーザーは連発出来ないようだね」

「出来たらゲームバランス崩壊するよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る