第30話黒巫女召喚士と武術家の戦闘 壱

 ち、ちくせう。

 完全に私は下と見られていた。

 私は鷹一体とモスコプス2体に相手されて鷹一体とおじさんペアはセカイちゃんの相手をしていた。

 完全に連携を取らせないようにして、分立された。

 私はこの三体相手でもかなり苦戦している。

 モスコプスは火のブレスを使ったり、ジャンプしてスタンプして来たりと体格に似合わず案外跳ぶので驚くモノだ。

 さらに、鷹からは風刀見たいな風の刃を飛ばして来るので厄介である。

 HPは1割減らされた。


 相手の残り一体の召喚獣を探したいのになかなか見当たらないし、セカイちゃんの右腕の動きも徐々に鈍くなっているし。

 大丈夫、私なら出来る。

 小学生の頃友達に誘われて森に虫取りに行った時も、修学旅行で動物園に行った時も友達や先生から「最低3メートル」離れるように言われる程の実力だ。

 相手の召喚獣に引かれて、その瞬間に見つけ出す!

 無理でもやる!


 その為にはまずこの召喚獣を倒したいのだが、MPの消費はなるべく控えたい。

 背中のネマちゃんはまだ出さない。ハクちゃんはセカイちゃんの助力に行って貰っている。


「ぐごおお」


 火のブレスが再び放たれて、私はそれを横に走って躱し、躱した先にもブレスが飛んで来たのでステータス上昇でさらに高く跳べるようになった私の跳躍でギリギリ躱すが、鷹から放たれた風の刃によってダメージを受ける。


「くっ」


 私は着地後にモスコプスに向かって走りお祓い棒を振り下ろして少量のダメージを与える。


(ダメだ埒が明かない)


 私の与えられるダメージは妖術がメインであり、お祓い棒ではそこまでダメージは出せない。

 相手のVITが高いと尚更である。

 なにか、なにかないのかな?

 とても引っ掛かる事があるんだけどそれがなにか分からない。


 私はお祓い棒を使ってモスコプスの顔面をスイングで叩き、回し蹴りをさらに叩き付ける。

 あんましダメージは出てない。スキルのお陰で少しは蹴りのダメージはある筈だ。


「くっ」

「セカイちゃん!」

「問題ありません!」


 セカイちゃんの動きが徐々に遅くなっている。

 麻痺の症状が徐々に現れているのかも知らない。

 セカイちゃんの方を見て、セカイちゃんのHPバーの方に麻痺のマークがあり、分かった。

 状態異常のマーク、麻痺。


「そうか、そういう事なのか」


 私はモスコプスのブレスを慣れた歩き方で躱しながら風の刃、これはだいたい躱した先に放たれるので、さっきまでのように真っ直ぐ躱すのでは無く横に動いて躱す。


「ネマちゃん、セカイちゃんの右腕を攻撃して」


 私には麻痺の状態異常は無い。つまり、空気汚染的な物ではなく、直接的な状態異常攻撃だ。

 そして、さっき見た時に右腕だけが鈍くなっていた。

 つまり、右腕にその存在が居て、近くに居ても分からなかった。

 正に灯台もと暗しである。


「え、な、なんですの!」


 セカイちゃんが驚きに体を硬直させた所を私の背中から出て来たネマちゃんが【俊足】を使って素早く近づき、引っ掻くを使って爪で攻撃する。

 すると、ダメージエフェクトと少しノックバックするセカイちゃん。


「⋯⋯ッ!」


 セカイちゃんは察した。


「チッ、思っていた以上に速くバレちまった」


 セカイちゃんは【跳躍】を使って後ろにバックして、木に向かって腕を当てる。

 そして、召喚獣が消えた時と同じようなエフェクトが出る。

 つまり、小さい召喚獣がセカイちゃんの右腕に居てしかも分かり難かったのだ。

 だが、倒したからと言っても麻痺が治る訳では無い。

 だから、だから、私がやらないと行けないのにモスコプス達に足止めされて手助けに行けない。


 召喚獣の最後の枠は今は使いたくない。


「よし、あの巫女服の嬢ちゃんは戦い方的に初心者だ。つまり、最低でもこれが最後の召喚獣の筈だ!」

「油断するなよ!三体かもしれん」

「Lv90近くな可能性か」

「ステータス的にも戦い方にも分かり難いのが難点だな」


 確かに、Lv50が折り返しなら次が新たな契約召喚獣ができるようになり、Lv90から三体同時召喚が可能になるだろう。

 だが、私は妖術を使っているから戦い方が分かり難いらしく、Lvの予測が出来てないようだ。

 ふむ、これが上級プレイヤーを相手するとゆう事なのかもしれない。


「セカイちゃん、どうする?」


 私はセカイちゃんと背中合わせに近づき、地面にはハクちゃんとネマちゃんが居る。

 おじさんペアは正面に居て、視界の右側にはモスコプスと鷹が一体づつ、おじさんを挟んだ反対側にも同じように居る。


「相手は4体同時召喚出来るかもしれないのか⋯⋯」

「いえ、確か次の職業になるとスキルの上がり方が違うらしく、4体同時召喚はない可能性が高いです。詳しい事は知りませんが」


 小さな言葉でそう言ってくるセカイちゃん。


「モフリさん、どうしますか」

「それは⋯⋯」

「「やれ!」」


 私の言葉を遮らないで欲しい。


「なるべく目立たない為にも、セカイちゃんには悪いけどまずはプランAで」

「分かりました。アレはなしで良いですよね?」

「はい、アレはなるべく使わない方針が良いからね」

「行きますよ!」

「うん!」


 セカイちゃんの顔に笑みが浮かぶ、HPバーには状態異常のマークが無くなっていた。


「行きます!【地鳴らし】」


 セカイちゃんは拳を地面に向けて放つ。


【地鳴らし】とは地面を揺らす効果を持っている。相手にダメージ等は与えないが足場が悪くなる。そして、このスキルは使用者以外に適応される。つまり、味方の私にもだ。


 だが、スキルには、ゲームなこの世界なのだからプログラムがある。

 つまり、そのプログラムを覚え、次にどう揺れるか、どうなるのかを計算し、そして私の技能でその【地鳴らし】を突破する。

 ハクちゃんとネマちゃんは私の肩に移る。

 重いが幸せな気持ちになってしまう。私は心を無にして集中する。


「な、なんだ!」

「スキル【地鳴らし】か、取得条件は難しい筈だが」

「それにこの場で使うとは⋯⋯初心者と共に居るのに悠長だな!リア友だろうが良いのか!」

「お、おい」

「なんだ」

「あれを見ろ」

「⋯⋯は?なんで普通に歩いてんだよ。た、タッカー攻撃するんだ」


 鷹の攻撃は私の動きを先読みして風の刃を飛ばしてくる。

 だが、【地鳴らし】が起きている間の私の動きは私自身にも予測できない。ただ、最前の行動を取っているに過ぎない。

 過去に動物に触る為に背後から近づいた事があった。

 如何なる所でもどんな物があろうとも音を立てないようにする為に動くように心掛けると地形把握能力が上がるのだ。

 ま、この結果は2メートルまで近づく事が出来たが最終的には逃げられたり、怯えられたり、吠えられたりした。

 畜生。今思い出しても私の4ヶ月の努力が⋯⋯いや、今その成果が出ているので考えないでおく。

【地鳴らし】はMP消費が少ない。だが、無限に使える訳では無い。

 なるべく速く終わらせる。

 正確には倒すのでは無く準備を終わらせるが正しいけどね。

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