第13話式神契約
「とりあえず師匠として最初にやれるのは式神と契約させる事だな。式神言っても下級だがな。他にも教えたいが、ソナタが自ら強くなってからだな」
「それってLvが足りないって事ですか?」
「そうじゃな」
「式神とは?」
「巫女が契約して共に戦ってくれるパートナー的な者だ。決して道具では無い。それは忘れてはなるの事だ。良いな?」
「それは、当然では?生きている者は道具ではありませんよ」
「そうか、それではまずは下級の式神と契約しないとな。ほれ、これをやる」
師匠は形式を1枚取り出して私に渡した。
「形式?」
「ただの形式では無い。ここに式が刻まれているだろう?」
「確かに」
真っ白な形式と違って複雑な術式が書いてあった。
ちなみに読めないので雰囲気は分かっている風にする。
「術式の内容は分からないだろうし、読めないだろうから分かっている風は出さなくても良いぞ」
「バレてました?」
「なりたての巫女と上級の巫女を一緒にするな。それよりもまずはこの形式をおでこに貼り、妾が術を唱える。そして、ソナタは異空間に行く事になる。勿論意識だけだ。そこで自分と契約してくれる式神を探し出せ。後は、その場のノリと勢いだ。じゃ、始めるぞ」
「え、速い!心の準備は!」
「戦争では1秒1秒を無駄にできん!と、ゆう事だ」
「ここは戦場じゃないし、もしかして戦争に出るの?」
「わからん、さっさとやりたいのだ。ソナタが選び選ばれた式神が気になるのだ。契約した式神はその形式に入るからな。では、やるぞ」
「はい」
私は貰った形式をおでこに貼る。
それから師匠は私の分からない言葉で術を唱え、それに合わせて形式が光る。
私の視界がだんだんと暗くなり、完全に暗くなった後に意識が切り替わる。
目が覚めると辺りは真っ暗で自分が地面に立っているのかは感覚でしか分からない。
そして周りを見渡すと様々な生き物がいた。
「沢山居るな〜」
私と目があった生き物がビクンとして後ずさる。
「え、なんで、ここはゲームなんだし、そんな、嫌われるの?」
結構メンタルが削られる。
「え、他も?」
動物ではないだろうなって程の見た目な者も私が視線を向けると顔を背けて後ずさる。
「はは、私の体質はゲームでも健在ですか、そうですか」
はは、速くハムちゃん達に会いたい。私を受け入れてくれるハムちゃん達に、その為には私と契約してくれる式神を探さないといけない。
私はまっすぐ進む。
私が歩くと道を開けるように式神達が左右に固まる。
なんだよ、なんでだよ。どうしてVRの世界でもこんな思いをしないといけないんだ!
どうしてこんなに精神攻撃されないといけないんだ!
動物が好きな人が動物に嫌われる時の気持ちを分からないのかここの運営は!
「いや、これが私の日常だ」
ハムちゃん達が例外であり、仲間なだけであって他は違うのだ。
モンスターは私を敵だと思っているからきっと来てくれるのだろう。
私は背後に振り返らずに走る。
あそこに式神が固まっていたようで、そこそこの距離を移動したら誰も居ない暗闇の空間になった。
とっても虚しい空間だ。
「私と契約してくれる式神なんているのかな?」
これは詰んだのだろうか?
「あれは、なんだろ」
辟易した気持ちになっている私の目の前に真っ白な毛玉があった。
比喩でもなんでもない毛玉だ。
私は無意識近づき、それに触れていた。
骨格なんて有るのかと疑う程に柔らかく、見た目道理の毛であり、モフモフと出来る。
この骨格も分からない程に手が沈むこの毛!これはハムちゃんやネマちゃん、イサちゃんの比では無い。
私の沈んだ気持ちを晴らしてくれるこの毛玉!最高なり。
「こん!」
「フェ!」
毛玉がピョンっと飛んで毛玉がモゴモゴして形を変えた。
そこに現れたのは二尾白狐だった。
尻尾が凄くモフモフそうだ。触って良いかな?
「こん?」
白狐さんは気づいたのか尻尾を私に向けて来たのでそれを肯定の合図と受け止め触る。
両手で触り色々な方向から撫で回す。
幸せ。白狐さん本体も撫で回す。頭、顎、体、お腹、ひたすら撫で回す。
「キュルル」
そんな喜んだ顔をしてくれるとさらにやりたくなる。
白狐さんはされるがままに撫でさせてくれる。
「は!あ、白狐さん、わ、私から逃げないの?」
「キューン?」
そのキョトンとした顔を見て、私は目からボロボロと涙が流れる。
「コン!(ペロベロ)」
流れた涙を、慰めるように白狐さんが舐めてくれる。
あんな大量の式神が居て、その全員から避けられた。
なのに、なのにこの白狐さんは私から逃げる事も嫌う素振りもせずに、撫でさせてくれて、私を慰めてくれる。
下げて上げてくるこのゲームの運営は神かもしれない。
さらに、さっきの式神達よりもこの白狐さんは毛玉に成れるようなのでモフが圧倒的に高い。
「あ、あの、白狐さん、わ、わわ、わた、私と⋯⋯」
上手く言葉が出さない。
「私と、け、契約、⋯⋯し、⋯⋯⋯⋯してくれませんか!」
「⋯⋯キュン!」
肯定の意味なのか、白狐さんは毛玉になって私の頭の上に乗る。
私はとても嬉しかった。
私は頭から白狐さんを下ろして真正面に構える。
そして、私の本心を、一言でぶつける。
「ありがどう」
泣きながら言っているのでまともな言葉になってなかった。
それでも私の気持ちは伝わっただろうか?
そうだと嬉しいよ。
それから視界が白く輝き、目を閉じる。
意識が回復して目を開けると目の前には師匠とハムちゃん、ネマちゃん、イサちゃんが私を心配そうに覗き込んでいた。
私は倒れているようだったので体を起こして立ち上がる。
「だ、大丈夫か?」
「ちゅん?」
「にゃ〜?」
「くーん?」
「え、どうし⋯⋯」
私は分かった。
私の頬を一筋の涙が通ったからだ。
私は巫女服の裾で涙を拭ってからニコリと笑う。
「問題ありません!」
その顔は自分では分からない。
それでも、とても晴れ晴れとした幸せそうな顔をしているだろう。
ただ、泣いた事によって顔が赤いかもしれないが。
「あ、式神の形式は!」
「ああ、これだ。倒れた時に落としたのじゃよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「礼を言われる程ではないよ。それよりも術式の色が変わっているな、これは⋯⋯相当レアだぞ」
「そうなんですか!」
「ああ、説明しよう」
術式の色が赤色から銀色に変わっていた。
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