第4話 リーリヤ

 開店してから1日過ぎた朝、私はとある問題に頭を抱えていた。


「どうしよう……カフェでご飯が美味しくないというのは致命的では……」


 そう。昨日の初めてのお客様の一言「美味しくない」である。


「とりあえずもう一回作ってみて問題点を考えよう」


 机上で頭を抱えていてもしょうがないと、私はキッチンに立つことにした。幸いにも材料はまだまだ余っているので、昨日のサンドイッチを作り直す。

 変わらぬ手際でサンドイッチを作り上げ、いざ実食。


「うん……。普通に美味しいのでは???」


 勘違いされそうだが、お客様に出すものだ。当然自分でも少し味見をする、したのだが問題点がわからないのである。


「なぜだ、何がいけないのだ……」


 自分の中では完成された味付けであるため、何に手をつければ良いのかわからない。

 そうしてウーンと頭を抱えていると、店の戸が叩かれた。


「あ、あの……す、すみません……」

「いらっしゃいませー!」


 開かれた扉には、12〜3歳くらいだろうか?145cmほどの小さな白髪の女の子がちょこんと立っていた。私?私は165cm位である。


「いらっしゃい。随分と朝早くから来たものでビックリしたわ」

「あ、あの、はい……」


 そう。この子が来たのは朝6時、日が昇ってすぐの早朝も早朝である。


「お好きな席にどうぞ。ご注文が決まったら声かけてくださいね」

「はい……」

 

 お客様を席に案内して、私は奥のキッチンで準備をする。店員に横にずっと立たれると落ち着かないからね。

 それにしても、彼女何か言いたそうだったが、まぁ注文時に言ってくれるかな?

 などと考えている内に声が掛かる。


「あ、あの……」

「ご注文お決まりですか?」

「あ、いや、その、はい……。あの、サンドイッチがあると聞いたんですけど……」

「はい、ありますよ。聞いたってことは昨日のご家族の知り合いなのかな?」

「はい、近所の、サーニャちゃ……あ、あの小さな子とは仲良くて」

「そうだったのね。それでこの店を聞いて、来てくれたのね」

「はい……」


 しかし、サーニャちゃんから話を聞いたってことは「美味しくない」ってことも聞いただろう。それなのに来てくれるってことはありがたい。


「では少々お待ちください」


 さっそくのお客様でテンションも上がり、張り切ってサンドイッチを作る。そしてーー


「お待たせしました。どうぞ」

「あ、ありがとうございます……」


  お客の子はサンドイッチを食べ出す。しかし、というかやはりというか、少し険しい表情となる。そんなにダメなの、私のサンドイッチ……?


「あ、あの……」

「如何しましたか?」


 彼女は一口食べたサンドイッチを皿に置いて、覚悟を決めた顔で話しかけてきた。思わず私も生唾を吞み込む。


「あの、マスターさんは魔法使いなんですよね……?」

「……?まぁそうよ、昔は魔法を少し勉強していたわ」

「!!!!」


 彼女の顔がパァっと明るくなるのがわかった。まぁ厳密にいうと魔法使いの上の賢者であったが、職業の呼び名など一定の実力の物差し程度なので余計なことは言わないようにした。


「ワタシ、魔法を……その……覚えたくて」

「あぁ、そういうことね。サーニャちゃんに聞いたのね。だけどごめんね、私は弟子を取る予定はないの」

「そ、そんな……」


 彼女が涙目になりながら、落ち込んでいた。そんなに落ち込まれると、なんだか凄い罪悪感が生まれる。しかし、弟子をとってる場合ではないのは真実である。


「まずは店のために料理をなんとかしないといけないの」

「料理ですか……?」

「あなたの反応を見てもやっぱり、この店を続けていくにはなんとかしないといけない課題なの」

「つ、つまり!料理さえなんとかなれば、魔法を教える余裕はあるってことですか!!?」

「え、えぇ……。まぁそんなに大量のお客さんなんて来ないだろうし時間もあると思うわ」


 突然、モジモジと控えめだった子が目を輝かせグイグイと来たため、思わず教えるような流れになってしまった。いや、でもそんな急に料理をどうこうなんて出来るわけない。そう思っていた私はなんと甘かったのだろうかーー


「ワ、ワタシが料理を担当します!!」

「アナタが!?」

「りょ、料理なら……その……なんとかなると……」


 見る限り決して大見得を切るタイプではないだろう。そんな子が堂々と「料理ならなんとかなる」と言ってみせたのだ。私は断然、この子に興味が湧いた。


「えーっと、それじゃちょっと作ってみてくれるかな?」


 彼女はコクコクと頷き厨房に立つ。包丁を手にした彼女は先ほどと打って変わって、堂々とした姿である。


「そういえば、聞いてなかったわ。アナタのお名前は?私はミシェルよ」

「ワタシは……リーリヤです……」


 これが、私とリーリヤの出会いであった。

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最強賢者の珈琲はいかが?〜元勇者パーティーのちょっぴりHな女賢者がカフェを開いてスローライフ♪ー魔法で無双は出来るけど、私は静かに過ごしたいって言ったよね!?ー〜 佐々黒 歩 @sazaguro

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