第2話

「嫁来てるよ~.」

かつて好きだった男に,

かつて同級生だった男がはやし立てる.

あなたは私の中でモブキャラだ.


むしろ好きだった人の名前が…

フルネームで思い出せない.

きっと,その程度だったのだろう.

そう納得する.


そういえば,

クラス長を2人でやっていたなぁと思いだす.

勿論,私ではない.

私は,そんなキャラではない.


みきちゃんだ.

みきちゃん…

何みきちゃんだったのか.

それすら,思い出さない.

思い出したくないのか.

同じ名字になったのかな.

いまだに2人が付き合ってくれてる事が,

何だか逆に嬉しかった.

私,負けたんだ.

妙に清々しくて.

何だか良かった.


嬉しそうに笑う佐々木くんが眩しかった.

みきちゃんを探して目にして,

傷つくのかも,よく分からなかったけれど,

今のみきちゃんを見るのはやめた.

そんな事しても何の得にもならない.


目の前のビール呑んだら帰ろう.

きっと私,今回の目的は果たしてる.


ジョッキを持ったら,

「おぅ,乾杯っ.」

と声をかけられた.


ん~.

この人,本当に誰だろう…

ジョッキを持って一点凝視,

固まってたら,

「覚えてない?」


…ごめんけど,全く…

オブラートに包むべきだろうか…


「あはっ.」

口元隠して,チラッと見る.


眼鏡,あごひげ,ガタイはいい.

こんな人いた~?


あごひげは多分高校生の時にない.

眼鏡…

かけてたか~?

ガタイがいい…

運動部?

何部があったっけ.


吹奏楽部1年で辞めたけど,

他の部なんて入る気なかったから

分からないっ.

だいたいそれも,

何だか変な部員がいて,

しつこく付きまとわれたから,

怖くて辞めたし…


とりあえず,ジョッキをカチンと当てて,

ビールに口をつけた.


う…

にがっ…


まだ大人じゃないです.

神様.

ビール屋さんも有難う.

ビール好きな人は好きです.


多分,酔いが回った頭じゃ,

きっと,

この人の事は思い出せないでしょうねと.


「多分,もう会う事も無いから言うけど…

誰か分かんない.

ごめん.

私の事も分かんないでしょ.

印象薄い人でいたから.」


私の話聞きながら,笑った.

笑顔が可愛い人だった.


「多分,あいつは気が付いてると思うよ.

学生の時も気が付いてたと思うよ.


見てたら分かるくらいだったから.」

隣の席の同級生が言った.


もう,そんな事どうでもいいよ~.

とか思ったり,

そうかなぁとかも思ったり,

忙しく心を動かしてみた.

そう,私の事見てたら好きな事が分かったのか…



不思議そうに見ると,


「梶原です.」

そう言って頭を下げた.


「桃地です.」

同じく頭を下げたら,

「知ってるよ.

何回,このくだり繰り返すんだよ.」

と梶原君が笑った.


ごめん.

名前聞いても,さっぱり思い出せないんだけど,

今からは,笑顔の可愛いギャップ萌えの梶原君だわ.












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