第18話 乙姫コロニー行政府
今回、敵を文字通り
相手側を揺さぶる意味でフェイント?をかけると面白そうだと思ったが、効果は限定的なうえ予測の揺らぎが大きくなるという理由で
来週には、ここ人工惑星
今後、乙姫には発展してもらわなければならないが、市長はその
軌道エレベーターに目途が立てば、乙姫上の諸施設のほか、ガス巨星、SS-72-cにガス採集用井戸の建設が始まる。ガス採集用井戸は実質軌道エレベーターだから、これもかなり大規模な工事になる。これができると、燃料、推進剤をよそから購入して輸送する必要がなくなるので早めに欲しいところだ。
あと、宇宙関係で残るのは、本格的工廠の建設だが、それはもう少し先の話になるだろう。当面は工作艦
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは、乙姫コロニー行政府、市庁舎の中の市長室。
安物のスチールデスクの後ろのこれも安っぽいスチール椅子に腰を掛けた市長の
スーツを着て黙って座っていれば哲学者然とした顔立ちから周りの人間は知的なイメージを西田に抱くのだが、黙って座っているわけではないし、服装も至って
「うーん」
「市長、先ほどからうなってばかりですが、どうしました?」
西田の秘書を務める
「いやー、清美ちゃん、聞いてくれる?」
わかりやすい市長の反応に苦笑しつつも伊藤が、
「それで、どうしました?」
「来週開かれる軌道エレベーターの起工式なんだけど、乗っていく連絡艇がないんだよね」
「いままで、連絡艇など必要ありませんでしたし、予算も有りませんから仕方ありません。市長が起工式に出ようが出まいがおそらく村田侯爵さまは気になさいませんよ」
「えー、仮にも僕は乙姫開拓コロニーの市長なんだけれど、僕が起工式に出なくていいの?」
「かまいませんよ。それではお断りの連絡をいれておきますね」
「ちょっ、ちょっと待ってくれるかな? 僕は、連絡艇がなんとか都合つかないかなーと思っただけなんだけど」
「それでしたら、先方にお願いして、連絡艇を出してもらえばいいじゃないですか」
「それじゃあ、みっともないじゃない」
「開拓地では余分なお金がないのは常識ですから妙な
「この前、村田家からいただいたお金がだいぶあると思うんだけどそれを使っちゃダメなのかなー?」
「いただいたわけでもありませんし、議会も通さず使えるわけないでしょう。村田家からのお金がもう一年遅ければこの開拓団は
乙姫では、期待された希少金属鉱山開発が暗礁に乗り上げてしまい、現在軌道に乗っているのは、石灰石鉱山と鉄鉱石鉱山だけなのだが、これらは価格重量比の関係で他星系への販売は到底出来ない。あとの有力産業は農業、林業、漁業のみだ。軌道エレベーターのない現状では、農林水産物も価格重量比を考えると他星系への販売には向かない商品である。そのため、乙姫開拓団の財政はひっ迫していた。そこに、干天の慈雨のごとく村田家からの融資があり破綻が避けられたうえ、村田人気にあやかり新規の開拓団を受け入れることもできるようになった。
新規の開拓団員を受け入れると、受け入れ人数に応じて国から補助金が出る仕組みがあるため、徐々に乙姫開拓団の財政状況は改善されつつあるのは確かである。
「いま、予算化作業中ですから妙な気を起こさないでくださいね。それに今からでは連絡艇の購入なんて間に合いません。あと、村田家からコロニー北方の丘の上の土地5キロ四方の購入申請がありましたので許可しておきました」
「へー、あんなところに何を作るつもりなのかねー」
「公示価格の5倍でのお買い上げです。村田家がわれわれに不利益になるようなことをする訳ありませんし、何が出来てもいいじゃないですか。市長、そんなことより、そろそろ重機の運転をお願いします」
そんなにお金があるのなら、連絡艇くらい買って欲しいと思ったが言わないでおいた。そのかわり、
「どこの開拓コロニーで市長が工事現場で働いているのかなー?」
「どこの開拓コロニーでも市長が現場で働いていますから安心してください」
「ほんとかなー? というより、現場の意味が違うんじゃない?」
「うそでも、本当でもいいから、早く工事現場に行ってください。週末には開拓団の第二次募集分の第1陣が来ますからしっかりお願いします。受け入れ式の準備も有りますから急いでくださいね」
「わかりました。行ってきまーす」
帽子かけにかけられたいわゆる麦わら帽子をかぶり、黒字で『ROCK AND ROLL HEROES』と書かれた白いTシャツの首周りに黄色いタオルを巻いた西田市長が、市長室の出入り口の壁にかけられた多目的建機のキーを持って、駆け足で名前だけは市庁舎である安普請の
市庁舎の前に留めてある建機に乗り込みエンジンをかけた西田の足には
この週末やってく第二次開拓移民の第1陣5000名の当面の
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