或る物語の終焉:Phase2「ライジング・リベリオン」

「ディード殿、私はまだまだもっと力を叩きつけたく思います」

「うーん、素晴らしい挑発ねえ!ならば望み通りに!」

 ディードは竜化し、眩い溶岩のような体表の、竜人が顕現する。

「この程度の力じゃ、アンタに失礼だろうけどね」

「ふふ……はい!その通りですよ!」

 ハチドリは破顔し、セミラミスの竜骨化と同じ、黒金のフルプレートアーマーに身を包む。そのまま蒼い太刀を変形させ、淵源の蒼光で刀身を形作る異形の刀を手にする。

「行きます!」

 刀を一閃すると、空間を広く使って大量の斬閃が現れる。ディードは右手に火球を生み出し、握り潰しながら地面を殴りつけ、前方を極めて広い空間に螺旋状の闘気が迸って覆い尽くす。挙動の途中で斬閃が一斉に起動してディードを斬りつけ、ハチドリは空間を歪めて威力を耐えられるギリギリまで弱めて瞬間移動で逃げて背後を取り、居合で巨大斬撃を繰り出し、重ねて斬閃を大量に設置し、左手に呼び出したロッドに蝶が集り、極彩色の槍となって投げつけられる。ディードは豪快に右拳を振り抜きながら振り返り、絶大な熱波で斬撃と斬閃を消し飛ばし、だが槍はそれを貫いて表皮まで届く。弾かれはするものの纏う闘気の鎧は貫かれており、爆発とともに飛び散った蝶たちが更に爆発して追撃する。構わずディードは口から大火球を撃ち出し、体内で沸騰した闘気が大爆発して衝撃波を響き渡らせる。瞬間移動で火球を避け、衝撃波を刀で断ち切る。恐るべき力が漲り、夜のようだった空が緋色に染まり、無数の隕石が降り注いでくるようになる。

「この空間でさえ……」

 ディードは高く飛び上がり、ハチドリ目掛けて急降下する。着地とともに爆発し、両腕を地面に突き刺して突進、そして巨大な炎の壁を伴って振り上げを繰り出す。ハチドリは空間を歪ませながら見事なタイミングで避け、居合から複数の斬撃を迸らせて攻撃する。ディードは裏拳を放って牽制しつつ向きを整え、地面を連続で殴りつけて直線上に熱波を走らせ、それは異形の刀に阻まれて切断され、だが続く隕石によって場所を動かすことに成功し、短い溜めから右手に作り出した闘気塊を撃ち出す。狙い澄ました縦斬りによって闘気塊は両断されて暴発し、両腕に真炎を纏わせて飛びかかり、右振り下ろし、左薙ぎ払いを弾き、そして最後の右振り上げを躱される。

「私とアンタなら、もっと上に……!」

 ディードは両手を合わせ、その狭間に極大威力のな真炎を凝縮し始める。ハチドリが好機とばかりに斬閃と斬撃による猛攻を仕掛けるが、構わず凝縮を続け、そして完全に両手を重ねて極小の火球を生み出し、頭上へ掲げる。凄まじい速度で火球は巨大化し、地面に叩きつけられる。超絶的な大爆発で周囲を真炎で包み込み、回避ではなく防御を選んだハチドリへ襲いかかる。

「ええ、もっと、もっと……!」

 短く力み、地面から真炎の棘が大量に呼び起こされる。ハチドリは刀に闘気を一気に集中させ、縦振りから横振りを繰り出し、巨大な斬撃を飛ばして棘と隕石を破砕しつつディードに届かせ、同時に強烈な闘気を発して空間を包む。

「フッ……」

 体が震えるような気魄に、ディードは思わず笑む。ハチドリは居合で巨大斬撃を飛ばし、ひたすらに斬閃を設置しては即起動する。ディードは飛び上がり、両拳を合わせて地面に叩きつけて大爆発させ、瞬間移動による防御と高速移動を繰り返すハチドリに対し、空間を捉える凄まじい威力を持った腕の振り上げを連続させ、爪の形に沿った五本の斬撃が涯まで突き進む。踏み込みつつ薙ぎ払いも交互に繰り出し、圧縮闘気を解放しながら熱線を吐き出し、全身を使って振り回す。ハチドリは再びの巨大斬撃で熱線を断ち切り、力の満ちた異形の刀を左半身を引いて構える。

「我が刃を……防ぐものなし!」

 超巨大な斬撃が大量に荒れ狂い、トドメに真一文字に一閃する。ディードは防ぐものの大きく押し込まれ、防御に使われた両腕には巨大な切創が複数刻まれる。

「さあディード殿。勝負をもっと盛り上げましょうぞ」

「もちろんよ!」

 力を解放し、竜化体を砕いて巨大化していく。そして広い円形の足場を残し、それ以外の全ての地表が消し飛ぶ。金属質な表皮を持った超巨大な長蛇が現れ、屈強な前腕で足場によりかかる。

「来たれ!」

 空から注ぐ隕石は真炎の塊となり、着弾した端から極太の火柱を上げる。ハチドリに着弾した瞬間、真炎を塗り潰すように赫々たる怨愛の炎が火柱を成し、余燼が姿を現す。

「赫焉燦々……アンタと私の力で、全部炎で塗り潰してやろう!」

「ふふ……!」

 ディードが右前腕を足場に叩きつけ、地面を削りながら薙ぎ払う。余燼は飛び上がって躱し、更にディードは口から極大の火球を吐き出し、着弾と同時に光の柱となり、三段の衝撃波を起こして大きく揺さぶる。余燼は翼を畳んでミサイルのように突っ込み、肉薄して翼を開き、閃光を放ちながら明滅するディードの胸部に渾身の力で突き立て、凄まじい抵抗を受けながらも強引に進み、大きく割り開く。傷口から凄まじいエネルギーが漏れ出して余燼を吹き飛ばし、同時に塞がる。ディードは巨体にも関わらず素早い挙動で口を大きく開き、そのまま余燼へ突進する。余燼は回避し、そして両者が空中で並走しながら突き進む。

「この姿ですらアンタには物足りないなんて、本ッ当に最ッ高ねェッ!」

 ディードは並行しつつ、右腕に力を込めて闘気の刃を飛ばしてくる。余燼が素早い挙動で避けると、そこに狙い澄ましたかのように大口を開けて突進してくる。余燼は両翼を器用に使って飲まれずに堪え、噛み砕かんと力を強めた瞬間に逃げる。更に翼を畳んで錐揉み回転しながら高速で飛び去り、大量の紅い蝶を射出して弾丸のようにディードに降り注ぎ、着弾とともに爆発する。翼を開いて一気に距離を離し、通り過ぎて向き直ったディードは口元に光球を生み出してから噛み砕き、大量の光線を放出する。余燼は並行しながら右翼から紅い蝶の弾幕を放って迎撃し、更に口から熱線を放って狙い撃つ。撃ち切った瞬間の爆発で視界が煙り、だが程なく両者が現れ、なおも高速で飛び続ける。

「アハハッ!」

 ディードが笑いながら、大口を開けて螺旋状の巨大熱線を撃ち出し、余燼が翼を一気に開いて紅い蝶たちを解放して飛ばし、位置を大きく上に動いて熱線を潜り抜け、蝶たちがディードの表面に着弾すると紅い粒子を撒き散らしながら急速に侵食する。右腕を振り抜いて五本の斬撃を飛ばし、掬い上げるように左腕を振って更に五本の斬撃を飛ばし、咆哮を重ねて、回避した余燼から飛んでくる蝶の光線を相殺し、それに伴って、ピンポイントで隕石が注いでくる。余燼の傍をすり抜けた瞬間に爆発し、衝撃で煽ってよろけさせ、姿勢を正したディードが鋭く尾を突き出して弾き飛ばす。

「もっと、もっと私たちの力を……!」

 ディードは口元に閃光を迸らせ、極大の光線を吐き出す。同時に真炎塊が集中して降り注ぐ。余燼は翼を畳んで高速回転して真炎塊を弾き返しながら光線を凌ぎ、翼を開いて紅い蝶の群れを五つ生み出し、光線を撃ち出す。ディードは右腕で防ぎながら、急降下して接近しつつ急上昇して体当たりを繰り出し、上空で翻りつつ大量の光弾を吐き出す。余燼は回避しつつ、弾幕を打ち消すように翼から巨大な紅い斬撃を二連射し、実際に弾幕を打ち消しながら届かせる。斬撃の着弾にも関係なく光線を撃ち返し、両腕を振り抜いて巨大な斬撃を繰り出す。余燼は正面から熱線を放って斬撃を迎え撃ちながら、紅い蝶を小さな光線が成す弾幕のように撒き散らす。それらの着弾と同時に熱線がディードの表皮を焼き、傷つける。

「もっと滾れ!私たちの全て!」

 ディードが首をもたげると、鋼のような質感の表皮が一斉に赤熱し、禍々しくも神々しい輝きを放ち始める。

「ふふ……!」

 更に漲る力を前に余燼は笑み、応えるようにディードが咆哮とともに大量の真炎塊を生成して撃ち出し、重ねて余燼の周囲に大量の光輪を生み出す。真炎塊が光輪の内部を通るように飛んでくると同時に光輪が縮小を始め、余燼は体表から怨愛の炎を噴出させて防護しながら光輪から逃れつつ、ディードは余燼目掛けて大口を開けて突進する。纏った怨愛の炎を放出して自身を加速させて突進から逃れると、通り過ぎてすぐ向き直ったディードが極大の光線で大きく薙ぎ払う。光輪と真炎塊で範囲外をカバーしつつ、逃げる余燼の周囲に人間態で使用していた真炎の巨腕を撃ち込む。光線を大きく避けながら、紅い蝶の弾幕で光輪を破り、残る真炎塊も巨腕も相殺しつつ両翼から斬撃を飛ばす。ディードは右腕を振り下ろしてこちらも斬撃を飛ばして相殺しながらもなお残る斬撃が余燼へ突き進み、それらが紅い蝶の群れに弾かれる。そのまま余燼の放った紅い蝶の弾幕が直撃するが、ディードは首をもたげて咆哮し、頭上の空間に赫々たる渦が生まれ、そこから驟雨のごとく真炎塊が降り注いでくる。余燼は右へ飛び出し、大量の紅い蝶の群れを残して光線を射出していき、ディードはそれを受けつつも右、左の順番で腕を振り抜いて巨大な斬撃を飛ばす。余燼は真正面から左翼を盾にして突っ込み、光線を凌ぎきって両翼を突き出し、高速回転しながらミサイルのように突進し、斬撃を打ち消して左手に阻まれる。凄まじい火花を散らして押し切り、再び胸部に届いてそのまま押し込み、ディードの巨体を足場に叩きつける。即座に離れ、天高く飛び上がり、翼の間で力を溜めていく。

「いい……!」

 恍惚としたディードの声は、天空から解き放たれた余燼の大熱線に掻き消され、そのまま胸部を足場ごと貫かれる。

「そうこなくちゃ……!」

 足場が崩壊し、それと同じようにディードの身体も霧散する。胸部から元々の人間体が現れ、残っていたツインテールのもう片方の房がほどける。余燼が急降下して右翼で切りつけようとすると、心臓の鼓動のような音とともに強烈な衝撃波を受けて押し返される。

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