或る物語の終焉:Phase1「ノクターン・サンブレイク」

 ※正真正銘のパワーインフレ終着点となっております。本編・前日譚・後日談はもちろん、エンドレスロール、エクストラ、ファイナルまで読了してからご覧ください。

 












 始まりの地 始まりの火

 一切を掌に浮かべ 合切を握り潰し

 器に湛えられし煤を飲み 理外を下す


 月から堕ちた涙 王から抉られた瞳

 消滅への礼賛 虚無への迎合

 来たれる終局の崩壊を 誠実に果たす


 諦観と剛力に満ち足りた 覇王の力

 盲目と愛情に満ち足りた 修羅の力

 極まる力を以て 亡者たちは終に至る
















まだ、この物語を見ているのか?

呆れたものだな、狂人よ。

始まりの欠片、最初の作品……ファーストピースの齎す結末を見てなお、まだこの物語に展望があると思っているようだな。

いや……期待するのも無理はないか。お前たちは、夢を見ることに飽きてこの現実を覗いている。ならば、それが終わることを厭うのは必然とも言える。

そうだろう、狂人よ。夢から醒め、わざわざこの景色を眺めているということは、極まった力同士の激突、それがお望みなのだろう?

幸いたったひとつだけ、まだ再生されていないルナリスフィリアの記憶がある。

さあ、そろそろ席につけ。

最後の戦いの、始まりだ。














深淵領域 アギア・デストポク

 足元には薄水が満ち、満天の星を照らすように眩い暁光が満ちる、虚空に用意された足場。灰が雪のように降り、所々で炎が燻り、星星が注ぐ。そこに佇むのは、ディードと片耳のハチドリだった。

「ここが」

「そう、ここが涯。三千世界の物語の、極」

「ならば――」

 ハチドリは背から蒼い太刀を抜き、刀身に怨愛の炎を宿す。

「成すべきは唯一つ」

「全力を叩きつけて、私たちが、そのどちらかが!」

「「最強となる!」」

 ディードが右手を強く握り締め、凄まじい闘気と真炎が全身から迸る。余りにも強力な力が大きな像を象り、ディードの背後に陣取る。

「は、ははは……!」

 ディードは堪えきれずに笑い出し、真炎が全てを焼き尽くしていく。

「指一本一本から、どんどん、どんどん、どんどん……!」

 ハチドリも応えるように、総身からあらゆる闘気の混じり合った凄まじい力が溢れ出る。

「はい……!もう加減も要らない、全ての技を駆使し、あなたを討ち倒す!」

 淵源の蒼光と不滅の太陽、そして極彩色の輝きが刀の像を生み、蒼い太刀に更に被さる。

「さあ三千世界、今ここに!」

「いざ参る!」

 ハチドリが目にも止まらぬ速度で刺突を繰り出す。姿が現れるよりも先に切っ先が届き、ディードですら反応が僅かに遅れるほどの高速の攻撃となる。もちろんディードは左手で切っ先を往なし、右手を突き出して腹を叩き、ハチドリを激しく吹き飛ばす。刀を地面に突き立てて堪えるが、大きく足を上げて構えたディードが豪快なストンプを繰り出し、真炎で象られた巨大な足が虚空からハチドリを踏み潰さんと落下する。空間を歪ませつつ姿を消して瞬間移動すると、太刀を鞘に戻し、居合抜きの要領で抜き放つ。その瞬間に再び刀身に像が被り、巨大な斬撃が極太の光線状になって突き進む。真炎の左巨腕がそれを阻み、右巨腕が直接拳を繰り出す。ハチドリは再び空間を歪ませて逃げ、拳が地面を叩き、地表を引き裂いて真炎が吹き出す。ハチドリは後隙を狙い、刀の像を超巨大化させ、全身を使って振り下ろす。ハチドリの比類なき筋力によって、大きさに見合わぬ高速の縦振りはディードの両巨腕で阻まれ、拮抗する。

「あはっ、はははっ!アンタと戦うまで、傷を受けることすら無かったのに……私の闘気をこんなに簡単に貫いて、刃を届かせるなんてねえ!」

「不思議な感覚です……最初に戦った時は、あなたの覇気に怯むばかりだったのに……!」

 巨腕の防御を破壊して、ディードを直接叩き切る。なんと彼女はその一撃で怯み、ハチドリは逃さず横振りを叩き込む。だが刀は右手で直接受け止められ、刀の像を握り潰される。続いて右拳で地面を叩き、前方を真炎で爆発させ、ハチドリが分身を踏んで瞬間移動し、その逃げ先を狙った大火球による偏差射撃が飛んでくる。

「……!」

 反射的に左手の籠手から爆炎を解放して大火球の衝撃を受け止め、爆風が過ぎ去るとディードが超高速で接近して左蹴りを繰り出して籠手を捉え、地面に足をめり込ませる。身体の向きを戻しつつ、右掌に溜めた火球を顔面に叩き込んで大爆発させる。流石の凄まじい威力だが、ハチドリは蒼い太刀を下から切り上げ、左手で赤黒い太刀を抜きつつ、蒼い太刀と同時に振り抜き、十字の斬撃を叩き込む。斬撃が爆発し、紅雷が落ちてきて追撃する。そのまま両手から太刀を消し、右腕に鋼を纏わせて飛び上がり、渾身の右拳を頬に叩き込み、遂にディードを吹き飛ばす。だが姿勢が崩れることもなく、踵でブレーキをかけて踏みとどまる。

「凄い、凄いわ!最高ね!最初からこういうのを殺りたかった!なんて遠い、回り道だったのか……!」

 ディードは狂喜を外へ放出するように、真炎が更に激しく燃え滾る。

「本当の暴力の極み、最強を決める戦い……!」

「ええ、そうね!アンタというこの物語の極みを、もっと私に見せて!」

 ディードが右腕を振り抜くと、ハチドリの周囲を真炎の大火球が五つ生み出され、巨大な火柱を生み出して収縮し、一つとなって超絶規模の大爆発を引き起こす。ハチドリは右方向への超高速移動で逃げ、地面を強く踏み込んで一気に距離を詰め、ディードは闘気を圧縮し、一気に解放する。籠手から爆炎を解放し、闘気の嵐を突っ切ってなお肉薄し、脇差を抜いて構える。ディードは歯を見せて笑みながら向きを合わせ、右拳を繰り出す。拳先と切っ先が触れ合い、刀を押しのけて拳が右腕を吹き飛ばす。それでもハチドリは構わずに左拳をディードの腹に極め、籠手から一気に爆炎を解放して拳突を撃ち込み、吹き飛んだディードは着地した。ハチドリは右腕を再生しつつ脇差を手に戻し、再び一気に踏み込んで脇差を振り下ろす。ディードのツインテールの右の房を切り落とし、足元から巨大な真炎の拳がハチドリを突き上げて吹き飛ばし、ディードは再び真炎の巨腕を帯びて飛び立つ。ハチドリは空中で立て直し、脇差に刀の像を被せて右巨腕の一撃を往なし、素早く切り返す。左巨腕に阻まれて弾き返されるが、すぐさま向き直って空中を流れるように移動し、再び一太刀加えて右巨腕と激突する。互いに弾かれ、ハチドリは脇差を消して太刀を二本引き抜いて像を被せ、太刀と巨腕が出鱈目な乱打でぶつかり合って拮抗する。真炎とともに紅雷が迸り、何度も何度も猛烈な衝撃波が地面まで、空の涯まで響き渡り、みるみる速度が上昇していく。赤黒い太刀と右巨腕が相殺して吹き飛び、ハチドリが即座に脇差を左逆手で抜き放って左巨腕を貫き消滅させ、翻って肉薄し、胴体に叩き込んで大きな切創を生み出し、すぐに塞がる。咄嗟に振るった左腕が虚空を切り裂き、伴って再び生まれた左巨腕が安易な回避を許さない。だがハチドリは肉薄して飛び上がって避け、蒼い太刀を肩口から捩じ込む。ディードは右手でハチドリの顎を掴み、そのまま反転して地面に両者激突し、大爆発が起こって離れる。

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