☆☆☆エンドレスロールEX:ウルトラユニバース・インハイパーディメンジョン
エンドレスロール アウァールス・アルビトリウム
閃光が上昇し続ける空間、その最中に浮かぶ岩場に、黄金の龍の姿のシフルが佇んでいた。
「……」
閃光の激流を突き破り、片耳のハチドリが現れて着地する。
「平和な世界、完全なる未来……その実現を阻む、最後の敵と言うわけか」
シフルは冷静に、呟きながら視線を向ける。
「全ての時間軸、世界軸を束ね……約束された、一つの永遠を享受するため……暴力の火種には、ご退室願おう!」
天を仰いで咆哮し、上部に配置されていたフレームから十二個の光が降り注ぎ、彼に吸収される。
「十二の時は此処に一つとなる」
シフルは右前脚を振り抜き、五本の斬撃を飛ばす。ハチドリも同じように左腕を振り抜き、炎を帯びた五本の斬撃を飛ばし、相殺して、そこで停止する。
「客体時間の停止……」
重ねて細い熱線を撒き散らし、だがそれもシフルの眼前で停止する。脇差に炎を宿し、突き出して熱線を撃ち込み、それもなお眼前で停止する。
「時間は既に私のもの。時を操り、未来を紡ぎ出すのだ!」
心臓部たるタイムエンジンが輝き、時間を解き放って止めた攻撃を跳ね返し、出鱈目に熱線が周囲を焦がす。そこへ瞬間移動で詰めたハチドリが左手を突き出し、単純な振り下ろしによってシフルの時間障壁を削り落とし、その瞬間に脇差を強く振るって熱風を巻き起こし、シフルは自身の主体時間を一気に加速して大きく引き、両翼を開いて翼膜を形成している瓦礫を飛ばし、雨のように降り注がせる。ハチドリは即座に持ち直し、瓦礫の雨を置き去りにするほど高速で接近しきり、脇差から背の双刀に持ち替え、独楽のように高速回転しながら斬撃を叩き込み、着地とともに赤黒い太刀を地面に殴りつけるようにし、紅雷を纏った凄まじい竜巻を起こしてシフルの装甲を引き剥がしながら押し込む。
「ぬううんっ……!」
シフルは一気に力を解放し、紅雷の嵐を強制的に中断させてハチドリを吹き飛ばす。そして両翼を前方へ変形させ、鋭利な爪を持った五本の指のごとくし、飛び込みながら右翼で薙ぎ払う。ハチドリは赤黒い太刀を背に戻し、不自然なほど慣性を殺して蒼い太刀に怨愛の炎を宿し、反撃で右翼を断ち切る。シフルは切断されても体勢を崩すことなく、逆に力を両翼に込めて挟み込むように斬りかかる。
「ディメンジョン!」
ハチドリは蒼い太刀を手放して右拳で柄を打ち、寸分違わずタイムエンジンに突き立てる。即座にハチドリは両腕を左右の翼を防ぐようにし、間もなくシフルは激痛に悶え苦しみながら後退したところへ接近したハチドリが左拳で蒼い太刀を押し込み、シフルの身体を貫通してタイムエンジンを粉砕する。
「「……」」
「お前……!」
「覚悟……!」
蒼い太刀を背に戻しつつ異形の刀を右手に呼び起こし、一歩で再び一気に詰め切り一刀振り払い、大量の斬撃を巻き起こす。シフルは敢えて自身を酷使するように時間を一気に解放して後退しつつ、ハチドリも押し返して斬撃をその場に固定する。
「別格の強さだな……ストラトスも、零なる神でさえ……これほどの強さを持ってはいなかった」
「……」
「なるほど、完全なる未来、誰も犠牲にならず、理想のままに最後までを生き通す、立ち止まった世界。それは、よほど世界の仕組みからしては不都合のようだ」
ハチドリは沈黙したまま、構え直す。
「ああ、わかっているよ。この世界は、夢見鳥が狂人たちに見せている、“現実”だ。ならば、夢を見ているだけでは出来ないことを望む、それも道理だ。盲目の王がそうして瞳を喪ったのなら、その代償に見合うように、歪められた世界を再び歪め直す……」
「……」
「ならば!私はその世界の絶対律すら捻じ曲げて完全なる未来を顕現させる!」
シフルの背後に機械仕掛けの巨人が現れる。
「ああ、本来ならばこれに時の十二要素を詰め込み、完全なる未来を齎すはずだった。だが……正しい歴史では、これはヴァナ・ファキナに喰われ、この可能性では……」
巨人はパーツごとに分離し始め、そして次々にシフルに装甲となって加わっていく。
「お前を、恒久なる平和に相応しくない異物を……滅ぼすために使う!」
タイムエンジンは砕けたまま、更にその奥、貫通した穴から覗く彼の身体の芯から輝きが放たれ、両肩にカノンが配され、翼が四枚へと増量される。
「死ね」
ハチドリは大量の斬閃を配し、重ねて巨大斬撃光線を放つ。シフルは主体時間を早めて超高速で飛び出すと同時に、悍ましいまでの力を込めてハチドリに時間を射出し、周囲の空間ごと強引に彼女の主体時間を僅かに、本当にただの一瞬、瞬きの合間だけ止め、右二枚の翼で一閃する。だがハチドリは、コマ送りのように眼前に現れたその攻撃でさえ異形の刀で軽く往なし、その上でなお捻りを加えて飛び退きながらの一撃を与えられ吹き飛ばされる。それでも自身の周囲の時間を歪めて受け身を取り、即座に身体の向きを直して、両肩のカノンから時間を砲弾にして発射する。ハチドリは砲弾の一つを両断しながら、空中に撒き散らした分身を乗り継いで高速で接近していく。その眼下で砲弾が爆発し、巨大な時空間を生み出す。追加でカノンから光線を撃ち出し、生じた時空間の中で凄まじく分かれ、乱反射して、出鱈目な軌道で思い思いにハチドリを狙って突き進む。彼女は全身に怨愛の炎を生み出して光線を弾きながら、超高速移動してきたシフルの翼撃を異形の刀で弾き返し、シフルはそこで一回転して四枚の翼を振り抜き、ハチドリは火薬となって逃げ、背後を取りつつも、四翼全てが背後を向き、前方の二枚で異形の刀を受け止め、オーラを帯びた後方の二枚で交差した斬撃を繰り出す。小柄な体躯を活かして身体を丸めることで回避し、異形の刀を手放しながら飛び退き、遅れて光線が全て着弾し、炎の鎧に阻まれる。シフルが加速して振り向き、至近距離でカノンから先程よりも出力を高めた時間を撃ち出し、更に四翼全てを展開し指先から光弾を射出する。再び右手に異形の刀を生み出し、腹を向けて光線を往なし、弾けた時間が広範囲の客体時間を徹底的に遅らせ、しかしハチドリは微塵も動きが制限されたようには見えず、構わずに刃を向けようとする。続いて炸裂した二発目が時空間を呼び出し、そして二つの時間操作が組み合わさって一気に収縮を開始する。
「ん……」
ハチドリがそれに気付くと同時にシフルが飛び退きながら四翼を振り抜き、大量の斬撃を撒き散らし、時空間の圧壊までの時間を稼ぐ。
「救うための力では、相手を殺すには程遠い。向かう脅威を戒め、撃退するだけでは足りない」
異形の刀を掲げ、刀身から淵源の蒼光を発する。続く一閃で圧壊していく時空間を切断し、その一撃で眼下に広がる時空間をも両断する。
「届かないのか……?」
「この世界が例え、狂人が覗き込む現実だったとしても……私たちが此処に立ち、刃を交え、競い合った力に偽りはない。世界の強制力すら捻じ曲げて、全てを壊し、新たな世界を作り続ける。それが本当の……力!」
ハチドリは竜化し、両翼を開いた衝撃で周囲の閃光を破壊し、景色が切り替わる。
エンドレスロール ニルヴァーナ
薄水の足場に覆われた、夜と夕暮れが同時に覆う空間に両者は出る。
「……」
「ニルヴァーナ……宙核の心臓部に辿り着いたのか……」
「旦那様……」
「どうやら私たちの戦いも、もうじき終わるようだな……!」
余燼が蝶の群れを横一列に生み出し、極太の熱線を放射する。シフルは体内の核を励起させ、装甲を展開して光を放ち、時間障壁で熱線を受け止める。着弾の衝撃が伝わり、インベードアーマーが破損していく。
「くっ……この、未来を、手放すわけには……!」
余燼が熱線に乗って突進していき、時間障壁を貫いて右翼を上段から振り下ろし、シフルは左の二翼で弾き、右の二翼で狙う。その瞬間に竜化を解き、翼の合間を抜いて接近し、異形の刀でシフルの胴体を斬り捌きながら通り抜ける。ハチドリが着地するとともに、切り裂かれたシフルの身体が落下してくる。
「……」
異形の刀を消し、ハチドリは彼の方へ向き直る。
「未来は……誰のものでもない……か……ストラトス……君が掴む未来が……正しいと……」
「……」
シフルは、歩み寄ってきたハチドリへ視線を向ける。
「真に強きものよ……君は……」
「私は未来に興味はない……全ては、旦那様のご遺志を果たすため」
「嗚呼……君は無垢で、強く、美しい……ネブラ……」
シフルは事切れ、塩となって砕け散る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます