☆☆☆エンドレスロールEX:blasphemy edgy
エンドレスロール 無明桃源郷シャングリラ 第一期次元領域終着点
星々が鏤められた夜空の下にある鏡の湖に、片耳のハチドリが着地する。視線の先には、蒼頭の黒騎士が背を向けて立っていた。ハチドリの登場に合わせ、黒騎士――ブラッド・フランチェス――は振り向く。
「貴様は……」
「……」
ハチドリは脇差を抜く。それに応えるように、ブラッドは腰に佩いていた紅い鉈のような長剣を抜く。
「俺は復讐を成した。黒崎奈野花を討ち……死んでいった、仲間たちの無念を晴らした」
「……」
「ああ、これまでの旅路で俺も色々と知った。貴様は……そうだな、これが幻想、有り得ない可能性を演算する世界だとするならば……貴様は、俺を殺しに来たのだろう」
「ならば、構えてください」
「良いだろう。これが決して許されぬ末路だったとしても、俺は最期まで抗う。この未来を、可能性を離さない」
ブラッドは目にも止まらぬ速度で長剣を逆手に持ち、湖面を削りながら振り上げる。直線状に熱線が湖面を走り、即座に順手に戻しながら一歩で距離を詰め切り、ハチドリは脇差で長剣を往なしながら左へ逃げ、熱線が虚空を突き進む。ハチドリが一瞬溜め、脇差を踏み込みながら突き出す。ブラッドは逆手に持ちつつ右半身を引いて構え、突きに合わせて長剣を振り、脇差を弾き、左半身を引いて両手で構え、踏み込んで一瞬で肉薄し、薙ぎ払う。ハチドリが分身を盾にしながら飛び上がり、炎を纏って急降下して爆発すると、ブラッドは体を捻りながらバックジャンプし、同時に縦に切り払って反撃する。だが長剣は急降下の勢いでいなされ、両者は自然と距離を取って仕切り直す。
次いでブラッドが長剣を湖面に突き刺し、両手で握り直して渾身の力で振り上げる。今度は熱線を大きく超える巨大な熱波を起こしながら、巨大な斬撃をも起こして進ませる。そして左半身を蒼炎で包みながら、それで長剣を生み出して双剣士となり、再び斬撃が届くよりも早く接近して蒼炎剣を振り、ハチドリは左拳でそれを破砕し、怯んだところに舞うような連撃を叩き込み、吹き荒れる真空刃で斬撃を砕き、最後の一撃で大きく押し込みながら、雷霆にした赤黒い太刀を左手で叩きつけ、V字に紅雷を落とす。ブラッドは紅雷の当たらない狭間で長剣に蒼炎を纏わせて投げ飛ばし、ハチドリが脇差で受け止めて弾き返そうとした瞬間にブラッドが肉薄し、激突した瞬間の長剣を右順手で掴んで脇差を弾いて押しながら、手放して左逆手で持って振り払い、流れるように右順手に戻して振り下ろす。ハチドリは脇差を大きくブレさせられながらも籠手に納刀し、左手を強く握り締めて爆発させて脇差を射出してブラッドの顎を強打させ、吹き飛ばす。ハチドリは瞬間移動で詰め、中空で脇差を掴んで両腕を自身に巻き付けるように力み、渾身の一閃で更に吹き飛ばす。
「力無くては、何者をも守れはしない。力有る貴様には、何一つ分からぬことだろう……守りたいものほど、守れずに失うものだ」
「……」
「俺は力を手にした。黒崎すら葬り去れるほどの、圧倒的な力を。だが今、万物の霊長をさえ軽く上回るほどの力に満ちた、貴様が現れた」
長剣を湖面に突き刺し、ガラスのようなそれが砕けて破片が綺羅星のように浮き上がる。
「仲間は皆死に、復讐も果たせた。もう俺には何も残ってはいない……ならば!」
ブラッドが天を仰ぐと、彼から凄まじい闘気が立ち上る。
「天上天下!唯我独尊!我超え辿り着け、我が覇道!顕現せよ、ノア!」
闘気の嵐を貫き纏いながら、巨大な蒼黒の槍を携えた漆黒の人馬が現れる。
「セミラミス……!?」
馬が上体を起こし嘶き、そして強烈に湖面を踏み刺す。
「ならば俺が欲するのは、力の頂のみ!」
槍を擦らせながら、馬ごと豪快に回転して薙ぎ払う。ハチドリは飛び上がって躱すが、振りに合わせて発生した強烈な闘気波が突き進んで煽り、そこ目掛けて槍を投げつける。空中で分身を踏んで空中制御を取り戻して避け、槍が通り過ぎて湖面を叩き割り、巨大な闘気の柱を作り出す。左手に新たな槍を生み出し、猛進しながら両手で構えた槍を二度振る。擦り抜けるように避けられたところで馬ごと飛び上がり、向きを合わせながら再び槍を投げつける。ハチドリがまたも槍を躱したところに急降下し、タックルを当てて彼女を吹き飛ばしながら、即座に生成した槍を投げつけ直撃させ、同時に爆発させる。油断せず槍を生成し直すと、爆風の向こうから熱線が複数放たれ、ノアに着弾する。更に重ねて怨愛の炎でリーチを増強した蒼い太刀による横縦の二連斬りを叩き込まれて怯み、雷霆となった赤黒い太刀を叩き込まれてその上から巨大斬撃光線が飛び、押し込まれる。
「なるほどな……貴様のその、並々ならぬ闘気……尋常のものではないとは思っていたが、これほどとはな」
「本気で来てください……!」
爆煙が晴れ、残心で姿勢を戻したハチドリが異形の刀を蒼い太刀に戻す。
「……」
ノアは黙し、自身の眼前に右手を掲げ、力んで槍を握り壊す。
「今こそ我が身、天を貫き!真なる力を以て、万物を揺るがさん!竜骨化!」
ノアの姿は変異し、ブラッドにノアの鎧を融合させたような形態となり、右手に槍、左手に長剣を持つ。
「……」
「俺は王龍となった。人の体を捨て、遂に至ったのだ」
ブラッドは長剣に闘気を宿し、飛び上がりながら振り抜く。湖面を走る強烈な闘気が空間を引き裂き、歪めて存在を脆弱にしていく。それに伴い、ハチドリのいる空間が毒のように彼女の表皮を蝕んでいく。着地したブラッドが長剣で一閃し、刀身のリーチよりも幅広い前方の空間を薙ぎ、ハチドリが分身を盾に逃げると、続く槍の薙ぎ払いと闘気波を起こしながらもう一度長剣で一閃し、最後に槍を投げつける。防御に専念しているハチドリへ、ブラッドは長剣に力を一気に注ぎ込んでから全力で一閃し、防御を破壊して切り刻み、だが持ち直したハチドリが異形の刀へ持ち替え、長剣と激突して競り合う。
「人から王龍へと至った……」
「貴様もそうだろう。最早貴様からは、人だった頃の臭いなど微塵も感じられない」
「ふふっ、はい……私は……」
長剣を弾き返し、素早く返す刀で腹部に一撃加え、そこへ持ち直した長剣が振り下ろされ、強く弾き返しながら飛び退く。ブラッドは右手に槍を持ち直す。
「力への探求、その終着点……」
槍を掲げ、轟雷のような力が注ぎ込まれて凄まじい巨刃を形成し、振り下ろす。
「王龍式!〈剛破撃滅刃〉!」
勢いよく湖面を巨刃が走り、凄まじいまでの波濤が全てを飲み込み荒れ狂う。その最中から巨大な火柱が立ち上って波濤を引き裂き、余燼が姿を現す。
「それが貴様の龍の姿……!」
ブラッドは波濤を起こしたままの槍を強引に持ち上げ、薙ぎ払う。同じように力の激流が吹き出し、余燼は自身を怨愛の炎の盾で覆いながら飛び上がり、空中に大量の紅い蝶の群れを作り出し、そこから次々に極太の熱線を放出する。ブラッドは長剣を横向きにし、腹で熱線を受け止め、捻じ曲げる。余燼が両翼を伸ばして揃え、空中で一回転して巨大な斬撃を飛ばす。熱線を凌ぎきった長剣は溶解し、まだ変わらず巨刃を帯びた槍で斬撃を相殺し、そのままの姿勢で突貫してきた余燼と槍で競り合う。
「……」
「余燼か……焼き尽くした全てになお燻る、戻らずの火……」
「現実の私には必要のないもの。けれど、この記憶の世界に生まれる……前の規範、アルヴァナの旧律、その頂点を掴まんとする者たちを焼くために……!」
槍から最後の力が解き放たれ、余燼が弾かれて翼を大きく開いて空中制御を取り戻し、続いて飛んできた槍を軽く往なして砕く。
「万物を断ち切り、我が覇道よここに極まれ!王龍式!〈撃滅業破斬〉!」
槍を対処する一瞬で力を長剣に溜め切り、馬ごと飛び上がる。
「こうして強者と刃を交えることの歓びを……私は!」
余燼がブラッド目掛けて急降下し、その勢いのまま竜化を解き、蒼い太刀を構えて向かっていく。
「もっと感じていたい!」
「フンッ!」
再三となる激突を繰り広げ、そして同じように競り合う。
「貴様は純粋過ぎる。憎たらしいほどに……多くを持ったが故に、喪失に耐えられなかった俺とは正反対だ」
「……」
「力を振るうことに、何の恐れもない。当然だ……貴様は、愛したものへの、その愛情を、強大で無垢な暴威を振り回すだけでいい」
ハチドリが長剣を粉砕し、ブラッドの胸を貫く。黒馬が消滅し、落下して湖面に叩きつけられ、縫い付けられる。彼の竜骨化は解け、元々のインベードアーマーによる竜人形態に戻る。
「御免」
「それでいい……」
太刀を引き抜きながら立ち上がる。血振るいと共に太刀を背に収める。
「弱さは、罪……」
ブラッドはそれだけ告げ、塩となって崩壊した。
「私は……旦那様のために全てを断ち切る。負けるわけにはいかない……」
ハチドリは立ち去った。
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