☆☆☆エンドレスロールEX:虚無の内殿、最果ての槍
エンドレスロール 王龍結界・殷々たる救済の冰獄
暗黒の空間に浮かぶ、巨大な氷塊。彼方から飛んできた双刀が突き刺さって爆発し、両耳の揃ったハチドリが現れる。間もなく毒々しい液体を迸らせ、紫雷を侍らせたニヒロが空中に現れて莫大な冰気を解放し、そのまま急降下して着地し、衝撃で先手を打つ。天を仰ぐように咆哮し、絶氷の鎧を帯びた威容を現す。
【貴様の齎す規範、コトワリ……その律の悉くを否定し尽くすために……貴様好みのやり方に則ってやる】
ニヒロの周囲では、迸る毒液によって焼かれた氷が焦げた塵のように不規則に上昇していく。大きく裂けた異形の瞳でハチドリを凝視し、眼光にすら宿る冰気で徐々にハチドリの身体が凍りついていく。
【特異点の力を吸収した俺こそが!最も創世に相応しい!】
ニヒロが異様な気迫を帯びて歩を踏み出し、突進を繰り出す――突進とは思えぬほど素早く、一瞬で通り抜けていく。伴った紫雷と冰気が爆裂し、巨大な氷の波濤となって左右へ暴れ狂う。ハチドリが全身の冰気を破壊して回避すると、即座に翻り、上体を持ち上げて掲げた右前脚に氷雷を落とし、渾身の力で振り下ろす。前方の全てを恐ろしいまでの破壊力の冰気が吹き荒び、続いて巨大な槍のような氷柱が地面から次々と生え揃い爆発する。
【こんなに誰かを目障りだと思ったのは初めてだ……!褒めてやるぞ、白兎。いや……】
ニヒロは天を仰いで再び咆哮し、更にもう一度強く地面を踏みしめながら咆哮し、それに従って彼の体を覆う絶氷の鎧が溶け落ち、そして全身が氷と毒とが混じり合う液状の姿となり、王龍結界を成す大氷塊さえも禍々しい色合いの毒沼へと変わっていく。
【ハチドリィィィィィィィィィィィィッ!】
爆発を防御していたハチドリは、毒沼によって悍ましいまでの速度で両足が溶解していくのを察し、力んで全身から紅と蒼の混じる黄金の闘気を放つ。双刀にも同じように黄金の闘気を宿し、独楽のように高速回転しながらニヒロに突進し、嵐のような衝撃とともに前方に力を解放する。ニヒロは足元から毒液を噴出させて壁とし、自身を無数の礫に変えて天空へ飛び立つ。間もなく礫は豪雨のようにハチドリだけを目掛けて降り注ぎ、回避されて着弾する度にニヒロが実体化し、先程繰り出したように右前脚を叩きつけ、前方の全てに冰気を撒き散らす。ハチドリも躱しながら黄金の闘気で形成した分身を撒き散らし、それらが各々双刀を振ってニヒロを破壊し、続く礫をも撃ち落としていく。そこにまるで彗星のような巨大な毒塊が落下し、大爆発を起こしてハチドリの動作を中断させて押し返す。そのままニヒロは口から冰気光線を吐き出し、更に両翼を再生しながら崩壊させて礫の乱射を続行し、光線を受け止め斬撃を返して相殺されたところに飛びかかり、左前脚を叩きつけてから右前脚を振り、切り替えしつつ目にも止まらぬ速度でサマーソルトを繰り出して前方に毒液と冰気の連山を生み出しながら着地する。初段を分身で弾いてから距離を取り、連山を闘気で相殺しながら掲げた蒼い太刀に蝶たちを集らせて巨大な刃を作り、振り下ろして後硬直しているニヒロに直撃させる。さしものニヒロでも堪えるのか、液状となった肉体を大きく削られて怯み、続く雷霆そのものとなった赤黒い太刀の薙ぎ払いをも受けて吹き飛ばされる。ニヒロは身体を修復しようとするが、ハチドリが黄金の闘気によって強引に彼を引き寄せ、修復中のところに独楽のような回転斬りを叩き込み、続く力の解放をさえ直撃させて追い込む。更なる連撃で追い詰めようとした瞬間、ニヒロは崩れ行く身体から毒液を細く器用に触手のように伸ばし、反撃も構わずに強引にハチドリへ巻き付き、無理やり修復に巻き込もうと引き込む。
【ハチドリ!俺は貴様を恨む……恨み続けるぞ!秩序の世界を、俺の創世を穢したばかりか!この俺に!獣共のッ!怒りを与えたことをォォォォォォォォォォッ!】
【くぅっ……!】
黄金の闘気とニヒロの毒がせめぎ合い、生物同士から上がるとは思えないほど猛烈な白煙が吹き上がる。
【あなたは何か……勘違いをしている……!】
【それでいい!理解するつもりなどない!消え失せろハチドリィーッ!】
修復されつつある身体の狭間から光線を撃ち出し、ハチドリは意を決して背から四翼を生やし、壮絶極まる闘気を纏う。光線が到達するよりも速く、全ての触手を一瞬で断ち切って遙か上空へ飛び立っていく。ニヒロは触手の破損によってわずかに怯み後退するも、その隙に身体を修復し切る。恒星のように輝くハチドリが急降下し、出鱈目というのも愚かしいほどの超絶的な黄金の大爆発を起こし、紅の波動と蒼の波動もそれに遅れて響き渡り、周囲を焼き尽くす。ニヒロは咄嗟に足元に続く毒沼を全て自身のもとに引き戻し、それで身体を覆って盾とし、そのほぼ全てを失いつつも防ぎ切る。
【全てに感情はある。竜にも、獣にも、人にも……物にも、概念にさえ。あなたは私との戦いを以て、己の内に怒りを見出した。ただ……それだけです】
【ならば貴様を殺し、この怒りを忘れるまで!】
大氷塊も毒沼も失い、ただの虚空となった王龍結界にニヒロの咆哮が轟く。左半身を礫へと変えながら瞬間移動で肉薄し、姿を現すより先に右翼を振り下ろす。翼爪が貫いた瞬間暴力的な冰気が弾け飛び、ハチドリの分身による防御を貫通し、続く礫を数発直撃させる。即座に礫を回収して身体を元に戻し、それでなお身体を崩壊させつつの右前脚による薙ぎ払いを叩きつけ、激しくハチドリを吹き飛ばす。そこでニヒロは僅かに力を溜め、堪えきれぬと言わんばかりに身震いしてから突進を繰り出す。間の空間の全てを捩じ切りながら突き進み、一瞬でハチドリまで到達する。ハチドリは咄嗟に受け身を取り、双刀を交差させてニヒロを受け止める。筆舌に尽くし難い衝撃が響き渡り、拮抗する。ニヒロはなおも身体を崩壊させ、押し切らんと文字通りに全身全霊の力を注ぎ込む。対するハチドリは双刀に己が持ち得る全ての種類の闘気を注ぎ込み、ニヒロを弾き返す。間髪入れずに独楽のように回転しながら攻撃を叩き込み、押し返し、そのまま双刀を消して儀仗槍を生み出して天に放り投げつつ自身も浮き上がる。
【私の創世に……王龍は……必要ない……!】
【グアアアアアアアアアアッ!】
徐々に輝きが満ちていく様を見上げ、殆ど身体が崩壊しきったニヒロが絶叫する。そこに輝きに満ちた儀仗槍が降り注ぎ貫通し、巨大な光柱を生み出して焼き尽くす。
【まだだ!まだ終わってない!】
光柱から逃れるように礫となってハチドリへ飛び、ハチドリは双刀を呼び戻して黄金の闘気を放ち、礫となったニヒロを強引に元に戻す。ニヒロもそれを読んでいたか、元に戻ってなお突進を継続し、ハチドリは蒼い太刀一本持ちに変え、刀身に全ての闘気と蝶が注ぎ込まれ、ニヒロを縦に両断する。崩壊していた彼の身体は、程なく残り火が掻き消えるように消滅する。
【俺が……人擬きの、賤民に……秩序に満ちた……清浄な世界の価値も分からぬ……俗物に……】
ハチドリは闘気を消し、太刀を背に戻す。
【秩序の大いなる龍よ、ここに眠れ】
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