☆☆☆エンドレスロールEX:絶望裂き断つカシオール
灼熱の刃が 絶望渦巻く大地に閃く
狂炎の黒騎士が 炎熱の風を大地に齎す
天の王者も 万夫不当の英雄も
焦熱昂る刃の一撃にて 葬り去る
竜は独り 爆焔を従え進化する
戦野を斬り拓き 全てを灰にせよ 刃王龍
エンドレスロール 王龍結界 焦熱の狂戦場
赤熱した薙刀を持つ、赤黒い鎧――人間態のテウザーが、ひりつく熱気の中で佇んでいた。
「我らは五王龍。バロンを守護し、約束の日まで消滅を防ぐために存在した」
石突を立てていた薙刀を持ち上げ、頭上で回転させてから構え直す。
「だがその日は過ぎ去り、新たな規範が拓かれた」
焼き焦げた地平の向こうから、片耳のハチドリが現れる。
「貴殿は、なぜ生きている?宙核は新たな規範の前に、死に去らねばならなかった。子を託すのならばそれもよかろう。目立たぬようグノーシスの結界で静かに余生を過ごすことも、また同様にだ。だが……己の自由意志を貴殿に託すとはな」
ハチドリは脇差を抜き、全身から赫々たる怨愛の炎を発する。
「旦那様は立場故に望むことのできなかった願いを、私に託した。永劫の戦乱、平和の否定……あなたも王龍ならば、平和が、平定が何を意味するかわかるはずです」
「新規範の存在ごときが、全ての歩みを止められるとでも?貴殿が託されたのは世界の維持ではない、徒な破壊だ」
「あなたには何もできない」
「わかっている。ここは月の愛し子の妄想でしかない。だが妄想であれ……貴殿を俺が葬れるという事実があれば十分だ」
テウザーは右腕で薙刀を構える。
「行くぞ。成すべきことを成す」
左肩を正面に据えながら猛進し、ハチドリは構える。しかしテウザーは目前で停止し、体重をかけて薙刀を振る。構えられ弾き返さんとしていた脇差を強く叩いて硬直させ、そこから猛烈な連撃を叩き込んで防御を砕き、その瞬間に踏み込んで突進とともに強烈な刺突を与え、翻って渾身の薙ぎ払いをぶつけて吹き飛ばす。テウザーは間髪入れずに飛び上がり、吹き飛んでいる最中のハチドリ目掛けて急降下し、分身を盾にされて逃げられつつ着地されるものの、X字状に発生した爆発が反撃を封じつつ、薙刀の穂先に炎を宿した状態で一回転して薙ぎ払い、周囲に炎の刃を一閃させる。だが振り終わりに炎の刃を貫きながらハチドリが突進し、脇差を左肩に突き刺して飛び上がり、薙ぎ払いつつ着地し、翻りながら二連蹴りを叩き込み、爆発して隙を潰して背後に回り、舞うような連撃を繰り出す。テウザーは怯まずに振り向きつつ捻りを加えて飛び、薙刀を縦に振るって弾きながら距離を取り、薙刀を地面に突き刺して振り上げ、地表に衝撃波を走らせる。火薬になってそれを躱すと、穂先に巨大な炎の刃を蓄えて振り下ろしてくる。翻りつつのステップで避けつつ赤黒い太刀を抜いて投げつけ、体勢をギリギリで戻したテウザーに弾かれるも肉薄して脇差を変化させた異形の刀で薙刀と競り合う。
「成すべきことを成す……特異点に託し、その役目が終わったとて、己の欲望を通していいとでも?この世には欲望を持たぬほうが良い存在が二つある……一つは、己の実力に見合わぬ大層な理想を抱くもの……もう一つは……!」
「……」
異形の刀を押し返し即座に反撃するも、ハチドリは周囲の時空を歪めて脱し、後退する。
「世を翻すほどに巨大な理想に見合った、強大な力を持ってしまったものだ」
テウザーは一歩踏み込む。
「バロン、貴殿は無論、後者だ。持つべきではなかった。永遠の戦乱を望むなど。盲目の王と始まりの獣の願いが、ただ混じり合うことだけだったのなら、貴殿はなぜそうはなれなかった。蒼の神子と、その命尽きるまで、なぜ愛し合えなかった」
「あなたも戦士ならばわかるはずです。相応しい死に場所を見つけた時の、抗えぬ衝動が。けれど己が消えることで、己の
「だが全てを継ぐことはできない。失ったものへの懐古は正しくても、遺体を引きずり回すことは間違っている。ましてや、屍肉を他人に被せて生き続けようなどと……それが本当に、文化の、意志の継承だと?」
「正しいかどうかは知りません。考えたところで答えが出る問いでもない。けれど……私は正しいと信じている」
「まあ……そうだろうな。でなければ、そんな常軌を逸した道は歩めない。例えどれだけ信頼している存在に託されたとしても、ありとあらゆる全てに牙を剥き続けろなど、出来るはずがない」
テウザーが薙刀を捨て、力んで赤熱した巨大な尻尾を携えた二足の竜の姿を現す。
「ならばこそ、ここで貴殿を断ち切る!」
長大な尾を踏み込みつつ縦に振り、熱線を滑らせつつ、素早く構え直し、尾を赤黒く変色させながら二回振り下ろす。叩きつけからは大量の煤が溢れ出て大爆発が連続し、回避に専念していたハチドリへ飛びかかってなおしつこく尾を振り下ろしつつ、今度は三回行ってから尾を咥え、引き絞りながら居合抜きのように振り抜いて回転し、撒き散らされた煤で攻撃の範囲を大幅に拡大させて大爆発を起こす。飛び上がり、右半身を鋼で覆ったハチドリが大量の分身を繰り出しながら空中で構え、居合抜きで巨大な斬撃光線を放つ。テウザーは翻って尾を振り抜き、巨大な炎の刃で迎え撃ち、それらが激突して相殺しつつ爆発し、全ての分身が消し飛ばされて尾と異形の刀が激突し、表面に蓄えられた煤に引火して、両者ともに吹き飛ぶ。
「流石は五王龍最強の存在……一筋縄では逝きませんか」
「そちらもな、怨愛の修羅。刃を交えるまでは、所詮はただの人間もどきだと思っていたが……謝罪しよう。貴殿は真の武人よ……!」
テウザーが口から可燃液塊を吐き出し、ハチドリへ届く寸前で爆発して視界を潰し、飛び上がりつつの振り下ろしを繰り出す。先程と同じく、煤の爆発で狙いのズレを考慮した広範囲攻撃であるが、ハチドリはいち早く逃れ、その場に斬閃を設置して起動し、尾に直撃させて迎撃しつつ、離れた位置から居合抜きを繰り出して斬撃光線を放ち、テウザーは尾を引き戻す動作で炎の刃を飛ばして迎え撃ち、そのまま力を溜める。
「王龍式!〈天門緋道両断剣〉!」
既に今までの戦闘で予熱が済んでいたのか、尾は即座に爆炎を帯びて振り下ろされる。明らかに尾は届いていない距離であり、振り下ろしに伴う爆発で攻撃しようとしているのが明確であった。
「……」
ハチドリは敢えて留まり、左腕の籠手から爆炎を解放して威力を相殺しようとする。予測通りに振り下ろされ、壮絶に過ぎる大爆発が周囲一帯を包みこんで焼き尽くす。テウザーはそのまま尾を咥えて引き絞り、防御に移っていたハチドリへ大きく踏み込みながら一閃する。もちろんそれも読んでいたハチドリは分身を盾に往なし、だがテウザーは即座にもう一度尾を引き絞って一閃し、そこにハチドリは怨愛の炎を宿した蒼い太刀で迎え撃つ。
「……!」
両者擦れ違い、一拍置いてテウザーの尾が中腹から切り落とされる。
「そうか……!」
すぐさま振り向き、両者は射殺す視線を交わす。
「心の臓に届くその刃……宙核が貴殿に何を見たのかよくわかる……だが!」
尾を構え直し、再生する。尾は黒く変色したまま、真炎を帯びる。
「俺の極み焼き焦がす爆焔で……折り取らせてもらうぞ」
テウザーは口から真炎の熱線を撃ち、下から上へ薙いだあと即座に左から右へ振る。ハチドリが籠手から脇差を抜刀して真空刃の直撃を狙うが、巨体に見合わぬ軽いサイドステップで避けられ、滑るような踏み込みから下段に尾が差し込まれ、即座に返す刃で尾を振り抜き、そのどちらも躱したハチドリへ炎の刃を飛ばしつつ爆発させる。ハチドリは異形の刀へ持ち替えて距離を詰め、そこからの一閃で大量の斬撃を撒き散らす。当たりこそするものの鋼を引っ掻くような軽い音が響くだけで逃げられ、飛び退いてから尾を引いて構え、大きく振り抜いて炎による巨大斬撃光線を放つ。即座に反応して空間を切り裂いて攻撃を往なすが、テウザーはまるでジェット噴射で加速しているかのような超高速の肉薄から翻って尾で一閃し、躱されるが尾に更に複数の炎を宿す。そのまま構え直しつつ、尾による刺突を繰り出す。新たな派生にハチドリは寸前で反応し、異形の刀で切っ先をずらす。だが煤の爆発と、遅れて渦巻いてきた真炎に押されて吹き飛ぶ。テウザーは追撃に可燃液塊を吐き出し、熱線で液塊ごと撃ち抜く。ハチドリは余燼へと竜化して、右翼を盾に往なして着地する。
「底の見えないその強さ……全く、恐ろしいものをこの世に遺してくれたものだな……!」
テウザーは尾で地面を擦りながら振り抜き、火炎の塊を射出する。余燼がバレルロールで躱しながら着地し、右翼を盾のように構えて突進し、テウザーも同じように尾を盾にして突進する。触れ合った瞬間に尾が爆発して突進の威力を弱め、その勢いで尾を振り抜いて右翼の防御を砕き、続く振り下ろしを左翼が迎え撃って弾き合う。即座に右翼を槍のように突き出し、そちらも素早い尾の刺突で迎え撃たれ、更に素早く斬り返した尾が首に叩きつけられて薙ぎ倒され、右脚で押さえつけられ、マウントを取ったテウザーは口を開いて熱線を溜める。だが余燼は紅い蝶を撒き散らし、自身もろとも爆発させて戒めから逃れ、両者ともに空中に投げ飛ばされる。余燼が両翼を正面に構えてミサイルのように突貫すると、テウザーは尾を爆発させて空中で高速移動して躱し、完璧なタイミングで尾を振り下ろして余燼を斬る。余燼は驚異的な反応で彼を正面に捉え、自身の肩口を斬り裂かせつつも左翼であちらの頭部を刺し貫く。両者は脱することもないまま、そのまま落下して地表に激突する。余燼はハチドリに戻り、テウザーは斃れ臥す。
「見事……なり……怨愛の修羅、俺の勝てる手合ではなかったか……ッ!」
「あなたも……私とともに、戦いの涯を見届けるんです……」
脇差を納め、背から蒼い太刀を抜いてテウザーの頭部に近寄る。
「戦いにおいて……勝者のみが、正義……」
「なればこそ、打ち破った者を引き連れて逝くのです」
「この俺でさえ……」
ハチドリはテウザーの頭部によじ登り、眼に太刀を突き立てる。舞い散った燼がハチドリの身体に溶け、テウザーが消滅する。
「去らば、竜たちの英雄よ」
着地したハチドリは、納刀とともにその場を去った。
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