夢見草子:アウラム・フロントライン−ブラッドステイン
枢機卿機アウラム・パンテオン 評議会
ビュルガーは手品のように一瞬で戦闘用の装束に着替えながら、前方から飛び降りて評議会の広間を後にする。そのしばらく後、アキシアルは鋭い視線をマレに送る。あちらも視線を合わせ、不敵な笑みを浮かべる。
「ドラセナ」
アキシアルが視線を外さずに声を出す。彼女の隣に座っていたドラセナは、落ち着かないと言った様子で反応する。
「なんですか」
「今すぐここを離れなさい」
「は?」
ドラセナを吹き飛ばすような形で自身の後方に大型の機械竜を召喚する。かち上げられたドラセナは宙を舞うが、ギリギリで受け身を取って広間の下層に着地する。
「ドラセナ、アタシは今からお話があるわ、アキシアルと。聡明なアンタならわかるわよね?」
血の棘が掠めない程度に床に投げつけ突き立てられ、マレからの威圧を察したドラセナは広間から急いで外へ出る。
「ビュルガーの即応展開は流石だと思わない?」
「侵攻作戦の時点であなたは尻尾を出しているわ……私たちとあなたにいくら戦闘力の差があると言えども、その程度も察せないほど愚かではない」
「へえ、そう」
マレが右手に血を滴らせ、素早く振り抜いて血の指線を飛ばすと、アキシアルは機械竜に抱え上げられて回避し、反撃に熱線で撃ち抜いてマレを下層に下ろさせ、自身も向かう合うように着地する。
「それで?アタシを糾弾してどうするの?アンタごときがアタシを倒せると?例えオリジナルセブンが束になってかかってきても一蹴できるアタシを?」
「……」
「言っとくけど、アンタが何に期待してるかもわかってるわ。ええ、そいつは必ずここに来るでしょうね」
機械竜が背から小型の機械竜を展開し、それらとともに熱線を撃ち込む。マレは飛び上がり、空中で捻りを加えながら着地する。
「それにしても……一晩寝ただけで理解者気取りなんて、コミックじゃないんだから」
「それを言うならあなたも……あんなミイラを蘇生したところで、本当に私たちが救われるとでも?この世には奇跡と魔法が溢れていても、画一な理想郷だけは絶対に成立し得ない。宗教で救われる人間は居ても、全てを逃さず救済するのは不可能よ」
「何とでも言えばいいわ。この世界で、少なくとも恵まれて、何不自由なく生きたアンタには理解できないことだから。成就した世界で、アンタもアタシも、同じようにお兄と一緒になって、ずっと幸せにセックスし続けるだけだから」
「あなたが彼に勝てるとは思えない」
マレが右手を振って指線を飛ばし、防御した機械竜の左腕が膾切りにされる。
「駄話で時間稼ぎするのはいいわ。どうせアンタなんて一撃で殺せるし。アンタがこうして攻撃してこなければ、バロンが来るまで生きていられたのにね?」
「狙いは一つよ」
アキシアルが号令を掛け、四方八方から小型の機械竜が熱線を撃ち込む。マレは適当にステップを踏んで全て避け、放った指線で切断していく。そこに大型の機械竜が熱線を、議席の向こうにある巨大なパイプオルガン目掛けて発射する。
「そう来るでしょうね」
マレは右手刀で斬撃を放って熱線を絶ち、続く大量の指線で微塵切りにする。
「アタシの計画を阻んでどうするつもり?どうやっても、この世界から生き物は全部消えてなくなるっていうのに」
「やはり……獣耳人類と吸血人類、両方を根絶やしにするつもりで戦争を仕掛けて……」
「ご明察よ」
「でも……いや……」
「何を考えてるか当ててあげましょうか?」
マレがわざと煽るように言い、アキシアルが怪訝な表情で返す。
「どうして、それだけの虐殺をする必要があるのか、でしょ?死ねば、物質も概念も何もかも、情報へと変わって世界の外へ出ていく。その時僅かに、次元門が開かれる」
「次元門……世界の外を流れるという、巨大なシフルエネルギーの流体……まさか、その莫大なエネルギーをあのミイラに……」
「ふふ、どうかしら?どこかの誰かさんは、其れがお目当てかもね?」
「……(私が把握できている情報が少なすぎる……)」
「普段生きていると、生物としての格の差って意識すること無いわよね」
「自分は私たちより優れていると?その馬鹿力だけは認めているわ、あなたのね」
アキシアルがしっかりと真正面のマレを視界に捉えていると、突如としてマレが背後に現れる。
「ッ……!?」
直ぐ様機械竜ごと振り返るが、マレは元の位置に戻っている。
「ある一定以上の力を持てば、死力を尽くして届くようになるわ。でもアンタたちみたいな、ただの人間じゃ一生届かない」
アキシアルが向き直る。
「アンタの出番はここで終わり。新たな世界までおやすみなさい、よ」
高く飛び上がったマレが両手を一閃し、大型の機械竜が細切れにされて爆発する。アキシアルは爆風で怯み、その中を突っ切ってきたマレの手刀で胴体を貫かれる。
「がはっ……」
吐血し、脱力した瞬間にバロンたちが現れる。
「あなた……焦らすのが、好きね……」
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