キャラ紹介:シナバリ

 エラン・ヴィタール

「よいしょ……っと!」

 ドラセナがジャージに麦わら帽というスタイルで畑仕事をしている。

「いやはや、精が出ますなぁ!」

 同じように横で畑仕事をこなすハチドリが、屈託のない笑顔を見せてくる。

「お兄さんが楽しみにしてくれてることは、なるべくやりたいから」

 ドラセナが鍬を土に突き立て、杖のようにして一息つく。

「はい!やっぱり旦那様の喜ぶ顔が一番楽しみですよね!」

「そうそう、お兄さんを喜ばせた分だけ夜の楽しみが――」

 ドラセナはハチドリ越しの先の景色を見て硬直する。

「ありゃ?どうしました、ドラセナさん?」

 ハチドリが振り返ると、そこにはピンク色の長髪を携えた、西洋風の教団服に身を包んだ少女が居た。中々の厚着ではあるが、ドラセナに負けない圧倒的な胸部装甲が主張している。

「げえ!?なんでここにいるんすか!?」

 ドラセナが指を差して驚き、少女ははにかみで返す。

「来ちゃった♪」

「来ちゃったじゃねえよ!」

 素の口調を通り越して荒くなったドラセナを、慌ててハチドリが宥める。

「どうどう、ドラセナさん。この方は……」

「私の義姉だよッ!」

「お姉様、ですか……」

 少女は笑顔のまま、言葉を返す。

「私の名前はシナバリ。トアデス・ヒンメルの幹部であり、実働部隊長ビュルガー様の副官です」

「知ってるわい!なんでここに来てんのって話っす!」

「気がついたらここに居たから?マルギナタちゃんもさっき会ったわよ?」

「あいつも居んのかい……」

「それじゃ、私にドラセナちゃんの旦那様を紹介してくれる?さっき言ってた、おにーさんを♪」

 ドラセナが警戒心むき出しの犬のようにしていると、そこにちょうどよくバロンが現れる。

「……」

「あはっ、こんにちは。シナバリと申します」

 シナバリはすぐにそちらへ顔を向け、笑顔を見せる。

「……また人が増えたのか」

「いやいやいや!大丈夫っすよお兄さん!こいつは家に入れなくていいっす!」

 ドラセナが必死に拒むのを見て、バロンは肩の力を抜く。

「……まず彼女は誰だ」

「私の義姉っす!」

「……次に彼女と同棲することについて、何かダメなことでも?」

「私が言うのもあれっすけど、こいつと義妹は性欲お化けっす!絶対にお兄さんに無理に迫って迷惑かけるっす!」

「……だからといって追い返すのもな。ならばドラセナ、君自身はどうなんだ?僕への迷惑がかかるかどうかはこの際無視してくれ」

「え?うーん、や、別にいいっすけど……」

「……ならば部屋を用意してもらおう。シナバリと言ったな、付いて来い」

 そう言われたシナバリは流れるような動作でバロンの腕に抱きつく。バロンは特に反応もなしに、そのまま屋敷へ去っていった。

「お兄さんが良いって言うなら別に良いっすけど……なんかフクザツっす」

「まあまあ……賑やかになるのは良いことではありませんか!」

 しばらく挙動不審になっていたドラセナを、ハチドリが必死に宥めるのだった。

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