キャラ紹介:隷王龍フィリコミス

 エラン・ヴィタール

「すみませーん」

 玄関のドアノブを二度叩き、声を上げる。ほどなくして向こうからドアが開かれ、アウルが現れる。

「待っていましたよ、フィリコミス」

「お久しぶりです、奥様」

 フィリコミスと呼ばれた訪問者は、褐色肌の、銀髪の幼女だった。古風なメイド服に身を包んでおり、礼儀正しく頭を下げる。

「ふふ、そう畏まらず。さあ、こちらに」

「はい。お邪魔します」

 フィリコミスはアウルに従い、ドアを丁寧に閉めてから屋敷を進む。

「大きなお屋敷ですね。まさか王龍グノーシスの王龍結界がこんなに平和な空間だったとは。それに時間の流れも捻じ曲がっていますよね。女王メイヴは確かに死んだはずですし、それに……それに、奥様も、また」

「ええ。本来の物語では、私は死に、王龍マザーハーロットのみが生き残った。つまり……あなたの主、私の真の姿、王龍オオミコトが顕現することは二度と無い。ですが……」

 二人が執務室へ辿り着くと、アウルが扉を開く。

「だーかーらー!週に1回全員で乱交するくらい良いではないか!ヌシのちんちんは百人一気に相手しても枯れぬじゃろう!」

「……お前は大声で何を言ってるんだ……ん?」

 デスクを挟んでバロンとオオミコトが言い合い(?)を繰り広げていると、バロンがアウルたちに気づく。

「……アウルと……誰かと思えば、フィリコミスじゃないか。君が呼んだのか、アウル?」

「もちろん。大抵の王龍より信頼できますから」

 アウルがフィリコミスを前に出させ、彼女は深くお辞儀する。

「お久しぶりです、ご主人様。……と、オオミコト様」

 振り返ったオオミコトにそう言うと、彼女はあからさまに不服そうに口を尖らせる。

「朕のほうがご主人様じゃと思うのじゃが!じゃが!」

「それでですね、ご主人様。私をここに住まわせていただけないかと」

 バロンは頷く。

「……もちろん構わないぞ。君なら」

 二つ返事で了承したバロンに、オオミコトは少々の疑問を抱く。

「ヌシがそんなに言うほど何かあったかのう?」

「……お前の隷王龍だろう……始源世界で僕たちの家を任されていたメイドだったんだぞ」

「ぬああ、そう言えばそうじゃな」

 オオミコトはフィリコミスの正面に立つ。

「よし、ではこの屋敷の性生活の充足に役立ってもらうのじゃ」

「は、はぁ……?」

 フィリコミスが困惑し、オオミコトはやたらといい笑顔で返していた。

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