キャラ紹介:隷王獣カルラ
エラン・ヴィタール
「……なんだ……?」
バロンが執務室のデスクでソリティアをして暇を潰していると、不意に甘い匂いが漂ってくる。
「……」
「……シマエナガ、お前も感じるか?」
右真横で佇んでいたシマエナガに言葉を掛けると同時に、左斜め後ろからスズメが現れて倒れる。
「ぐふぅ」
「……大丈夫か」
バロンが椅子から離れてスズメの傍に屈み、仰向けにして抱える。
「と、殿……」
「……体が火照っているな……つい昨日抜いたばかりのはずなんだが」
一先ずスズメを自身が座っていた椅子に座らせ、シマエナガに視線を向ける。
「……僕は匂いの発生源を探す」
「承知しました、マスター」
バロンは執務室を出て、匂いの濃い方へ向けて歩き始める。
「……これは……」
廊下をしばらく歩いていると、やけに廊下が長く感じる。
「……アリシアの力で無限に増築できるとは言え、人数が増えすぎて大変だな……」
そして、オオミコトの部屋の前に到着する。
「……むう。やはりこいつは追い出すべきか……?」
右拳を構え、打ち込んで扉を破壊する。
「のじゃあああッ!?」
室内で寛いでいたのであろうオオミコトの悲鳴が聞こえ、バロンは重く踏み込んで彼女の前に立つ。
「なんじゃ、ヌシか……怒っているようじゃが、また朕が何かしたかの?」
「……異臭がする。決めつけはしたくないが……お前の仕業だろう」
「最初から朕を犯人扱いか!?流石にそれは酷いじゃろう、同胞として!セフレとして!始源の三王龍として!」
バロンがオオミコトを凝視し、彼女が思わず目線を逸らす。業を煮やしたバロンが右手に闘気を溜め、オオミコトが目線を向けた先に解放する。空間が歪み、何者かがギリギリで回避するように動く。
「いや、なんじゃ、これはその……」
バツが悪そうにオオミコトが口ごもり、彼女の真横に筋骨隆々の鳥人が現れる。
「……」
「だってだって!ヌシは朕に対して厳しすぎるから!隷王龍とか隷王獣とか呼んだら怒るかと思ってのう……」
「……懐かしい顔だな」
オオミコトの言い訳をスルーし、鳥人に視線を合わせる。
「お久しゅう、宙核」
「……WorldB以来か。あのときはアウルとか言っていたが……隷王獣、カルラだな?」
「左様。オオミコト様の勅命に従い、馳せ参じました」
「……この匂いは、お前に注がれたオオミコトの力、ということか」
「ええ。何か問題が?目覚めたてで力が発揮できず、発情なされた方がいるとか?」
「……残念ながら、ここに住んでいる者の中にはこの匂いが素通しの者も多く居てな……加減するか、オオミコトに返してくれないか」
「なるほど、承知しました。では……私がここにいることは許容すると?」
「……勝手にしてくれ」
バロンは踵を返し、ドアを再生しながら部屋を後にした。
「ほっ……」
胸を撫で下ろしたオオミコトに、カルラが肩を竦めて笑みを向ける。
「あいも変わらず宙核は手厳しいですな、オオミコト様。たまにはアデロバシレウス様に戻ってもらっては?」
「ほむほむ、よい考えじゃな!早速おねだりしに行くぞ!」
「お供します」
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