キャラ紹介:ベルフェル・ヌーベル

 絶海都市エウレカ アトリエ

「……」

 大きな窓から射し込む、冷ややかな日光に照らされたリビング。そこのカウンターキッチンに寄り掛かる、ふわふわな長髪を携えた美少女の姿があった。彼女はカウンターの上で、マグカップの中に粉末を入れていた。砂糖のようなそれは、湯気を立たせる白湯の中に消えていく。マグカップが持ち上げられ、口を付けた瞬間、二階の方からドアの開閉音がする。

「……」

 彼女は黙したまま振り返り、なるべく音を立てずに白湯を啜る。程なくリビングと二階とを繋ぐ階段に小柄なショートカットの女性――イーリスの姿が見える。

「帰ってたの、ヌーベル」

「うん。お姉ちゃんは仕事終わり?」

 イーリスはヌーベルの言葉に答えずに階段を降り切り、心底気に入らないものを見るように横目で一瞥したあと、眼前を通り過ぎていった。

「お姉ちゃんって、惨めだよね」

 ヌーベルは若干の怒りを覚えたのか、白湯を豪快に飲み干し、カウンターにマグカップを強めに置く。

「さて……」

 懐から手持ちサイズのデバイスを取り出し、右手で持って左手で画面を操作する。

「ファン使ってリーズちゃんの投稿に爆撃っと……」

 そうしていると、この空虚な空間に水が壁に叩きつけられる音が響き出す。どうやらイーリスがシャワーを浴びているようだ。それに交差するように玄関の鍵が開く音がし、間もなくドアが開いて何者かが入ってくる。

「ふふ」

 ヌーベルは口許を緩め、デバイスをポケットに入れる。

「お義兄ちゃんがお姉ちゃんを拾ってくれて良かった。この泥濘に嵌ってるって自覚できるから、どれだけ嘘を吐いても私は正気でいられる」

 そう言って玄関へ小走りで向かい、ちょうど現れたバロンにそのまま抱きつく。

「おかえりなさい、お義兄ちゃん」

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