与太話:二人の趣味

 エラン・ヴィタール 屋敷

「……」

 エリアルがリビングのソファに座り、眼鏡をかけて読書していると、横にバロンが座る。

「……何を読んでいるんだい」

「『ヴェルベットの歌姫』よ。推理小説。結構面白いのよね」

「……ふむ。そう言えば、君の趣味といえば何だったか」

「今更そんなこと聞くの?」

「……ああ。君と過ごすのは快適すぎて、たまに忘れるからな」

「なにそれ。まあいいけど。もちろん読書よ」

「……だろうな、いつも本を読んでいる――」

「あと釣りと、テニスと、野球と、サッカーと、バスケと、ハンドメイド、料理もそうだし、水泳とか掃除とか、バードウォッチング、焼き物とかも好きかな」

「……いやまあそうだが……」

「DIYも好きよ。テレビゲームもカードゲームももちろんね。ランニングとかジョギングもよくやるわね。ああ、最近はゲーム作りも小説執筆もやってみたり――」

「……」

 エリアルが饒舌になる様を、バロンは笑顔で見る。

「ふふ、バロン。何をにやけてるの?」

「……君が可愛いと思ってな」

「ふーん。じゃあ、バロンの趣味を教えてくれない?」

「……もちろん、君の楽しそうにしているところを見ることだ」

「ぷっ……」

 エリアルは少し噴き出しながら、本を閉じてバロンへ向く。

「……冗談だ。君のことを見ていたいのは趣味以前の話だからな。僕の趣味は……まあ、彫刻を作るのと、鍛刀、あとは筋トレ……模型制作も好きだ」

「バロンらしいわね」

「……君の多趣味には勝てないよ。僕の趣味も全部君は出来るからな」

「いやいや、バロンの筋トレはエグいでしょ。流石にペース早すぎてついていけないもの」

「……君のウェア姿が見たいから割と頻繁に誘いたいが」

「いつでもどうぞ?もちろん、二人きりでも、みんなとでもいいわよ」

「……そうだな、では早速……君とこれをしたい」

 バロンが手近なテーブルにカードデッキを広げる。

「へえ、ホビーカードゲームね」

「……ああ、スターターデッキを二つ持ってきた。君はこれはやったことあるかい?」

「これはないわね」

「……おお。なら一緒にルールを覚えながらやろう」

「もちろん」

 二人はカードゲームを楽しんだ。

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