究王龍ファーストピース Phase5:「悲劇の蜃気楼」
エンドレスロール 黎明
虚空からアストラムが着地し、続いて降ってきたレメディとヴィルヘルムを彼女が受け止める。
「え……なんですか、ここ」
「先に俺から降りろよ」
レメディの反応にアストラムが冷静に返し、ヴィルも同時に肩から降りる。
「確かに僕たちはソムニウムさんに殺されたはず……」
「はぁ?んだよてめえら、最終決戦で負けたのか?」
口から出た想定外の言葉に、アストラムは驚きと若干の怒りを見せる。
「そうなんですよ、急に襲われて……」
彼方より極彩色の波動が響き渡り、同じ色の繭が現れる。中から切り裂いて、白金の身体にコバルトブルーの装具の不知火が現れる。
「シラヌイ!?死んだはずじゃ……」
「ああ、そういうことか」
アストラムが納得し、そこにヴィルが訊ねる。
「どうなってんスか、これ」
「ここは無の無だよ。てめえらが負けたせいでソムニウムに創世を奪われたんだ。そんで、新世界王サマのお遊びに付き合わされてるってこった」
「創世を奪われた……」
レメディが深刻な表情をするが、アストラムが笑い飛ばす。
「ワハハハ!まあこっからでも巻き返せるだろうぜ!ここに俺達がいるってことは、まだ新世界は出来てねえ。それどころか、全部永遠に消し飛ばすって選択肢もあるかもしれねえ。だから、今からソムニウムのクソ野郎をぶっ倒せば、てめえが創世出来るってわけだ」
右手に双頭斧を呼び出し、闘気を沸き立たせる。
「てめえらが死物狂いでこっから巻き返せってわけだよ、いいか!」
「はい!」
「うっす!」
レメディとヴィルが同時に返事をし、それぞれの得物を抜く。
「おそらくあれは本物じゃねえ。なら負ける道理もねえ!行くぞ!」
獣のように低く構えたアストラムが突っ込み、最下段から豪快に斧を振り回す。不知火は目にも止まらぬ速度で回り込み刀を振り下ろすが、カウンターウェイトのように伸ばした足による強烈な蹴りに弾かれ、その隙にヴィルが頭上から急降下して貫き、着地してからの薙ぎ払いで後退させる。レメディが長剣の切っ先から闘気塊を撃ち出しつつ蹴りで突っ込み、連続で当たって硬直した不知火に渾身の三連切りからの豪快な切り上げで吹き飛ばす。流石と言うべきか、不知火は空中で受け身を取って優雅に着地する。
「確かに手応えが薄いですね……」
「油断大敵だぜ、レメディ」
構え直したヴィルが警告し、レメディが頷く。
「そうだね」
不知火は悶え、全身から極彩色の波動を放つ。防具が変異していき、白金の表皮と融合する。素早い接近から斬りつけ、そこから前転して兜割りを放つ。狙われたレメディは長剣で一段目を相殺し、二段目に強く当てて不知火を弾く。アストラムの全身を使った捻り振り下ろしの直撃を受けて身体が欠け、ヴィルが槍から光線を放って援護する。しかし不知火は身体の制御を素早く取り戻し、光線を避け、姿を消して高速移動する。
「それなら……!」
レメディが長剣を逆手に持ち、自身の背後に向けて突き立てる。ちょうど現れた不知火の腹に突き刺さり、引き抜いて翻りつつ、一刀のもとに首を断ち切る。
「ふう」
一息つき、ヴィルとアストラムも合流してくる。
「よし、後は……」
アストラムが見る方向には、極彩色に輝く戦場があった。
「行け、レメディ。てめえがやるはずだった役目を果たしてこい」
レメディは言葉を発さず、頷きだけで返す。
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