究王龍ファーストピース Phase4:「彷徨う独裁者」
エンドレスロール 時諦
「よっ……と」
虚空から召喚されたストラトスが、見事な着地を見せる。
「なんだここ……」
「ここは無の無、本当の根源的な領域ですね」
全く気配なく、彼の右真横に千早が現れていた。
「うわ!?びっくりしたぞ!」
「うふふ、もちろん。あなたの千早ですからね?お忘れですか?」
「いや、もちろん覚えてるけどさ……」
今度は左の真横にアルバが現れ、手を握ってくる。
「うお!?アルバか、よう」
「はい……えへへ、お久しぶり、です……」
「まさに両手に花ってワケね、色男さん?」
声のした方……つまり前へ向くと、そこにシエルが立っていた。
「お!シエルもいるのか!安心だな!」
「何が安心か知らないけど。千早、説明の続き、してくれる?」
シエルが千早へ会話を振ると、彼女は笑顔で応対する。
「ええ、はい。先程も言いましたが、ここは無の無。文字通りの完全なる無であり、無いという概念すら無い、逆説的には全てを内包する異常空間です」
「まあつまり……ここに居るってことは、完全な死を私たちは迎えたってわけね?」
「そう思っていただいて構いません。ここで肝要なのは、逆説的に全てを内包する空間……即ち、表面的な解釈であれば、何物も存在することはないということです」
「要は私たちに在ることを要求してきた存在がいるってこと?」
「そうですね。普通はここには完全な消滅を果たした存在しか辿り着けないので、アルヴァナの仕業ではないです。となるとディードか、もしくは――」
言葉を遮るように、彼方から極彩色の波動が轟き渡る。
「この気配は……零なる神!?」
シエルが驚き、背後へ振り返る。四人が見る方向には、極彩色の繭が現れ、程なく孵化する。現れたのは、白金の地肌にコバルトブルーの装備をしたグラナディアだった。
「グラナディアさん!」
「ふむ、何か感じたことのない未知の力が多分に含まれていますが……この気配はソムニウム――零なる神のもので間違いないでしょう」
千早がストラトスから離れ、準備運動のように身体を動かす。
「よし、アルバ!なんかよくわからねえけど、準備はいいか!?」
「はい……!いつでも行けます……!」
アルバも離れ、両腕を龍の鱗で覆う。ストラトスも槍を呼び出し、構える。
「……!」
グラナディアはこちらを見留めると、全身から黒黒とした怨愛の炎を吹き出し、右手に赤黒い直剣、左手にレバーアクションライフルを取り出す。一発放ち、スピンコックをわざわざしてみせるが、正面から突進していたシエルが平然と右腕で銃弾を弾き返し、鋼の槍を撃ち出す。グラナディアは右斜め後方の空中へ不自然なほどの加速で逃げ、急降下しながらシエルに肉薄して直剣を薙ぎ払う。だが左腕に阻まれ、右手による撃掌でグラナディアは悶える。そこへシエルもろとも飲み込まんとする無明の闇が足元から噴き出し、シエルがグラナディアの足を流体金属で拘束しながら飛び退き、直撃させる。
「行くぜ!」
ストラトスとアルバが交差するように通り抜け、グラナディアに強烈な一撃を叩き込む。彼女は両腕を嚢胞で包み込み、右腕は盾のような剛腕に、左腕は槍のような鋭利な鰭へと変貌させる。そして電撃の軌跡を残しつつ瞬間の踏み込みで千早を捉え、左腕を突き出す。千早は両手で受け止め、だが左腕の先端が白い蔦へと変わって首に巻き付く。そのまま右腕で頭を掴まれ、圧壊させんとばかりに力まれる。当然がら空きの背後に向かって暗黒竜闘気の螺旋槍が打ち込まれ、更に千早が首の力だけで蔦を引き千切り、両手でグラナディアの右腕を引き裂く。続いてシエルが豪快な飛び回し蹴りを踵側からグラナディアの頭部に叩きつけ吹き飛ばし、竜化したストラトスが全力の砲撃を直撃させる。
「よしッ!意外と連携できてるじゃない!」
シエルがそう誇ると、ストラトスが高度を合わせてくる。
「当然だろ?俺とシエル、アルバに千早も居るんだ、負けるわけねえって」
「答えになってないけど、まあいいわ」
煙が晴れると、グラナディアは竜化しており、兎の耳のような突起が生えた竜人・月詠の姿を現す。
「こちらの戦力が万全というのもありますが、やけに加減されているようですよ」
千早が指を鳴らしつつそう言うと、アルバも続く。
「遊ばれてる……みたいです……出力だけで言うなら、この四人がかりでも歯牙にかけないくらいなのに……」
「まあ、タスクは簡便に限ります。すぐに終わらせて、誰がストラトス様に相応しいかじっくり話し合いましょう」
千早がストラトスに微笑みかける。
「え?ああ……まあそれは一旦置いといて……」
月詠が口元に爆炎を滾らせ、極彩色の大火球を三連続で吐き出してくる。一発目を鎖の防壁で凌ぎ、二発目を千早が拳で打ち返し、三発目に激突して相殺する。シエルが全身から闘気を放ちながら巨大な鋼の槍を作り、月詠は続けて両腕を交互に振り、巨大な火柱を直線上に大量に発生させる。それを千早がシエルを守るように拳を振って掻き消し、振りの後隙に合わせたストラトスの砲撃で動作を鈍らせつつ、力を溜め終わったシエルが槍を投げつけ、月詠は避けようと咄嗟に動こうとするも鎖で縛められ、しかし辛うじて直撃を避け、槍が左腕を吹き飛ばす。そこにストラトスが再びの全力砲撃を叩き込み、そのまま急接近して突き刺さった鋼の槍を拳で押し込み、月詠は大破して消滅する。竜化を解いて着地し、四人は集まる。
「終わったわね」
「ああ。しっかし、何がしたいんだろうな?俺達を引っ張り出してまで」
「さあ……?」
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