究王龍ファーストピース Phase2:「絶滅の黙示録」
エンドレスロール 黒転
閃光と共にレイヴンとアーシャが現れて着地し、それに続いてロータも現れる。
「なんだ?何がどうなってる?」
「確かに私たち死んだはずなんですけど……」
二人が困惑していると、ロータが両腕を組んで鼻息を一つする。
「ソムニウムの気配がする。それもいつも以上に凄まじい力を伴ってる……私たちが完全に消し去られたはずなのにまだここに一個体として生きてるってことは、ここは無の無ってこと」
「ったく、完全に消滅してもまだ働かされるたぁ、世知辛いな」
そして彼方から極彩色の波動が響き渡り、同じ色の繭が現れる。
「相棒!」
「ああ、そりゃ起こされたんなら仕事もあるだろうな」
アーシャが剣へと変わり、レイヴンの右手に収まる。程なくして繭がほどけ、その中から白金の身体にコバルトブルーの装飾がなされたペイルライダーが現れる。
「兄様のトラウマを刺激したいみたい」
「ソムニウムってのはよっぽど趣味が悪いらしい」
「ふふっ。まあよりにもよってペイルライダーを選ぶなんて、人材不足なんだろうね」
ロータは鎖を呼び起こし、構える。
「ソムニウムのことだから、どうせこういうの遊び感覚でやってる。私たちも、たぶんそんなに全力出さなくていいはず」
「だといいがね」
ペイルは体色と同じ色の鎌を呼び起こして握り、そして三体の分身を生み出す。
「どうやらあちらさんも準備万端らしい。行くぞロータ」
「うん……」
一体目の分身が飛び込み、二体目の分身が後方から氷柱を連射する。一体目はロータに狙いを付け、大きく振りかぶって横から引き寄せるように鎌を振る。ロータは難なくそれから逃れ、氷柱の弾幕を編んだ鎖の壁で防ぎつつ、別の鎖で一体目の分身へ巻き付け、振り回す。ペイルライダーの分身そのものが遠心力を生み出す槌頭となり、二体目を轢き潰す。そのまま一体目を強く戒めて粉砕し、レイヴンの方を見る。
「……」
レイヴンは魔力の壁を構え、三体目の分身の攻撃を軽々と受け流して強力なカウンターで一撃粉砕する。そのままの勢いで剣を構え、上段から振り下ろす。ペイルは柄で切っ先を流し、翻りつつ一気に鎌を振り抜く。レイヴンが剣を籠手に変形させて受け流しつつ、剣に戻して刺突を繰り出すと、ペイルは鎌を回転させつつ手元に戻し、その回転によって弾き、素早い動作で先程分身がロータに繰り出したのと同じような振りを見せる。レイヴンが瞬間移動で一歩退き、そこに竜化したロータが鋭く拳を振り下ろし、ペイルを吹き飛ばす。竜化を解きつつラータへと転じ、縦に回転しながら背から生えた黒い骨の翼を叩きつけて、表皮を大きく削ぎ取り、正面向き直って右手を突き出し、掌から暗黒竜闘気の槍を螺旋状に撃ち出して反動で後退する。手放した鎌が虚空に突き刺さって甲高い音を立て、胴体に大穴が空いたペイルが膝を折る。ロータに戻ってレイヴンの横に着地し、砂を払うように両手をはたく。
「流石は俺の
「当然……」
崩れ折れたペイルは鎧が融解し、巨大な肉塊のように変わっていく。
「ハハッ、随分豪華なディナーだな?」
「ああいう色合いの熟成肉を見たことあるよ」
二人が雑談をしていると、肉塊は獣の姿を取り、筋骨隆々な四肢が生えてくる。
「二回戦だ」
「兄様は何回連続で出来るの?アーシャは知ってる?」
剣となっているアーシャはせわしなく発光してロータへ何かしらの抗議を見せる。
「じゃあ、さっさと終わらせてじっくり聞くから」
ロータは右手で指を鳴らし、自身の背後の空間から大量の鎖と暗黒竜闘気の槍を構える。
「おっかねえな、相変わらず」
レイヴンも応えるように融合竜化し、同時に獣となったペイルが大きく伸ばした右前足で薙ぎ払ってくる。ロータが右手を握り締めると、構えられた弾幕が解放され、怒涛の勢いでペイルの右前足を虚空へ縫い留める。だがペイルは身を引くことで右前足を引き千切り、分離した肉塊が鎌になってロータへ飛んでいく。ロータは力を込めて左拳を振り抜き、拳圧だけで鎌を相殺する。その隙に瞬間移動で肉薄したレイヴンが魔力の剣を伴いながら剣の振りを二度当ててペイルを怯ませ、渾身の力で刀身から闘気を解放しつつ一閃を叩きつける。それだけでペイルの半身が消し飛ぶが、レイヴンは容赦なく剣を籠手に変え、拳先に魔力の剣を集中させつつ足元を殴りつけて闘気の衝撃波で追撃し、籠手を剣に戻して突き出し、今度は剣先に魔力の剣を集中させて高速回転して突進し、その勢いで翼から大量の光弾を放ち、そして強く一回転して翼で切り裂き、トドメに左手から大火球を撃ち込み爆発させる。ペイルが大きく仰け反ったところにロータが鎖で縛め、レイヴンが逃さず大量の魔力の剣を伴いながら壮絶な剣舞を見せ、空間の闘気が限界まで高まったところで大爆発させる。ペイルは木っ端微塵に消し飛び、レイヴンは人間に戻ってロータの横に戻り、剣をアーシャに戻す。
「よし、まあこんなもんだろ」
余裕綽々というふうにレイヴンが言うと、アーシャが続く。
「遊びというのも納得でしたね、何か妙に手加減されてるような……」
その言葉にロータが頷く。
「だから言ってる。ソムニウムはそういう性格。良くも悪くも超越者だから、状況を楽しんでるだけなんだと思う」
「で、俺達は何をすりゃいいんだ?このままお茶会ってわけにもいかねえだろ?」
「私に考えがある。ボーっとしてても暇なだけだし、多分今しか出来ないから」
「おっ、そいつは気になるな。教えてくれよ」
ロータがレイヴンに手を伸ばす。
「じゃ、久しぶりに合体しよ――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます