究王龍ファーストピース Phase1:「詐術の火種」

※色々な意味でクライマックスなので、前提となる「☆☆☆IFエンド:夢の終わり、蝶の嵐」を必ず先にご覧になってから進んでください。ファイナル第五弾です。







この先へは、全ての戦いを終えた狂人のみが進むことが出来ますわ。

準備はよろしいですの?

……

…………

………………

言うまでもない、とでも言いたげですわね?

では進みましょう。

全ての物語の終焉に相応しい、本当に本当の最終決戦……

三千世界も、極楽浄土も、安楽浄土も、十万億土も越えた先にある、最期の景色。

是非とも、わたくしたちと共に見届けましょうね。











瞳を捧げた はじまりの龍

夢見に飽いた狂人のために 夢を見続ける者

現の終わりを その手で下す


蝶の群れは螺旋を描き 狂人たちの脳を覗き見る

現を眺めた代償に 夢すら犯して啜るために


来たれるは究極の否定 全ての終幕

新たなはじまりを以て 此処に顕現する








 エンドレスロール ???

 宇宙の片隅、無の無にて――

「アンタの力になる前に……一つだけ試したいことがあるんだけど」

 ディードが究王龍ファーストピースを見上げる。

【試したいこと】

 どのような姿になっても口調は変わらず、いつもの雰囲気で返す。

「アンタは今、どんな世界のどんな存在よりも強い。どんな屁理屈みたいな特殊能力を持ってるやつでも――まあその程度の相手なら私どころか誰とも融合してない空の器でも倒せるでしょうけど――どんな力を持っている存在が相手でも、それを打ち倒せるだけの力がある。そのレベルでアンタは強い。だとしたら……気にならない?どれだけの力を結集したら、アンタを打ち負かせるのかってね。私を助けると思って、どうよ?」

【なるほど確かに、悪くないかもね】

「ここは無の無……全て無く、逆説的に全てを内包する空間。だからこそ……」

 ディードが右腕を掲げると、次々と存在が召喚されていく。

「……?」

 最初に現れたバロンが、困惑気味にディードを見る。

「……ディード!?」

 珍しく大声を上げた彼に、ディードはニヒルな笑みを浮かべる。

「久しぶりね、バロン。あの頃からだいぶ強くなってるみたいだから、試してみたいところはあるけど……今回は相手が違うわ」

 彼を顎で使ってファーストピースの方を向かせる。

「……なんだこれは……白金零、なのか……?」

「その通り。厳密には、究王龍ファーストピースらしいわ。ああいうの、燃えるでしょ?」 

「……確かにな」

「ま、いざとなれば私がぶっ飛ばせばいいだけだから」

 バロンが落ち着きを取り戻し、そしてディードと彼の間に怨愛の炎を纏った脇差が突き刺さる。

「ほら、来たわよ。アンタのせいで全部狂わされた兎が」

「……?」

 遅れて片耳のハチドリが着地し、脇差を右手で引き抜き二人に並ぶ。

「ディード殿……今はそのお力に甘えさせてもらいますぞ」

「ええ、期待してなさい」

 ハチドリはバロンへ視線を向ける。

「……君は……」

「参りましょう、バロン殿。私はあなたの刃であり……その理想を継ぐものです」

「……ああ、頼むぞ」

 バロンはその一瞬だけで全てを察したか、それだけで会話を切り上げて正面を向く。

「さあファーストピース!派手な決戦と行こうじゃない!」

 ディードが興奮気味に叫ぶと、ファーストピースは巨大な翼を広げ、極彩色の波動を発する。

【わかった。ならばこの場に相応しいよう、私も全力で行く】

 咆哮が空間を歪め、開戦の合図となる。



 エンドレスロール 竜乱

 そこから少々離れた空間に、ホシヒメ、ゼロ、ルクレツィアの三人が呼び出される。

「わわっ!?なになに!?」

 ホシヒメがわかりやすく狼狽えると、ゼロが続く。

「喚くな。ここは無の無か……?」

「正直ウチらにはなんもわからへんな、この状況」

 ルクレツィアが軽く返すと、彼方から極彩色の波動が響き渡ってくる。

「とわぁーっ!?」

 ホシヒメがよろけ、それが収まると三人の正面に、同じ色の繭のような何かが現れる。

「次から次へと何だ……」

 ゼロとルクレツィアが同時に刀に手をかける。繭が自然に解け、白金の身体に、コバルトブルーの輝きを放つ――アルメールが羽化する。

「アルメール!?」

 ゼロがいち早く気付いて驚き、されどアルメールは生気の失せたようにだらりと立ち上がる。

【この身体は彼のものだけど、意志は私のもの。あなたたちと遊ぶために用意させてもらった】

「この声!……って、白金ちゃんだっけ?」

 アルメールから聞こえる声にホシヒメが反応し、そして彼は背から炎の二翼と氷の二翼を生み出し、浮き上がる。

【私の治世に反旗を翻せること、証明して欲しい】

「よーし、なんかよくわかんないけどオッケー!」

 ホシヒメがノリノリで闘気を発し、それにゼロとルクレツィアが続いて構える。

「事情は知らんがこの男だけは葬り去る」

「ゼロ兄と一緒に戦えるんならウチは文句無いで!」

 アルメールは咆哮し、全身のパネルを沸き立たせる。そして周囲に大量の炎剣を生み出し射出する。ゼロが光の刃を同数撃ち込んで相殺し、急接近したホシヒメが、アルメールが反応するよりも早く拳を打ち込み、肉体と拳の間に圧縮された閃光が爆発して後退させ、ルクレツィアがその頭上から神速の抜刀を繰り出してから逆手に持ち替え、柄で頭部を殴打して更に追撃する。二人がゼロに並ぶように後退すると、アルメールは更に力み、パネルの隙間から極彩色の闘気を噴出する。

「なにあれー!?」

「わからん。が……異質過ぎる。俺達の知る既存のエネルギーではないようだ」

「ホシヒメの持っとるのも根源エネルギーなんやろ?なんかわからへんの?」

 アルメールは会話を遮るように大きく身体を捻り、右腕を振り抜いて直線上に強烈な火炎を起こす。ゼロとルクレツィアが左右にそれぞれ逃げ、ホシヒメが再びの肉薄から右拳を繰り出す。しかし今度はアルメールが一歩引いて避け、そこから飛び込むようにして大上段から左腕を振り下ろす。腕には武器のように巨大な炎の爪が伴い、着地してからも右腕を下段から同じように炎を伴って振り上げる。ホシヒメはそれらを拳の圧だけで打ち消し、全身から発する黄金の闘気だけで押し返し、そのまま両手の合間に溜め込んだ極大の闘気を螺旋状にして右手から撃ち出す。アルメールはその直撃を受けながらも、内部から吹き出る極彩色の闘気で相殺し続ける。撃ち終わりと同時にアルメールが行動を再開してホシヒメの後隙を狙うが、その瞬間に巨大な空間の歪みに囚われ、ホシヒメもろとも乱れ飛ぶ大量の斬撃に飲まれる。

「もちろん準備万端!」

 だがホシヒメは漲る闘気で斬撃を無効化しつつ、対照的に斬撃を食らい続けるアルメールにジャンプで接近し、右手に蓄えた莫大な出力の輝きを直接捩じ込む。無の暗闇の中でも眩いほどの閃光が迸り、ガラスのように切り刻まれた空間が元に戻る。煙を上げながら落下していくアルメールへ、トドメとばかりにルクレツィアが豪快に一閃し、続けて縦に振り下ろす。その斬撃の軌道全てに結晶が現れ、斬撃と同時に爆発する。しかしアルメールは落下慣性を無視して飛び上がり、ルクレツィアの頭を右手で掴んで炎上させる。彼女は反射的に竜骨化しつつ、アルメールの腕を切り落としてから蹴り飛ばし、吹き飛んだそこへ頭上から大量の光の刃が降り注ぐ。大半の直撃を受けたアルメールの動きが一時的に完全に停止し、愚直に突進してきていたホシヒメによって、渾身の右拳を頬に受ける。

「ぶっっっ飛べええええええええええ!!!!!」

 殴り抜かれて頭部が半壊し、アルメールは錐揉み回転しながら面白いように吹き飛んでいく。

「いよぉし!」

 凄まじいダメージを受けたアルメールはなおも人形のように立ち上がって抵抗しようとするが、事切れて崩れ落ちる。

「感じた力の凄まじさに対して、随分とあっさり沈んだか……」

 ゼロが構えを解き、その横に人間の姿に戻ったルクレツィアが並ぶ。

「まあ、身体の動かし方は本人が一番わかっとるっちゅうことやな。逆に言えば、本人じゃないんやったらあの程度しか動けんっちゅうことやな、ゼロ兄?」

 二人が話していると、どこからか声が轟く。

【よし。ならそこから、私たちの戦いを見ていて】

「ええー!?呼んでおいて放置!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る