☆与太話:勝手に戦え!啓蒙ちゅっちゅギガントvsぬるぬる煩悩ドラゴン

エラン・ヴィタール 屋敷

「わたくし思いましたの」

 リビングでテーブルについていたアプカルが、妙に自信に満ちた表情でそう言う。

「どうせしょうもないことじゃろう。乳首の感度が他人より高いとかそんなんじゃ」

 対になるように座っていたオオミコトが呆れ気味に返す。

「……」

 そしてその間に座っていたバロンは無言を貫く。

「違いますわ。わたくしは切り分けた果実を含め、絶世の美女だらけですわよね。旦那様にとってわたくしたちは損得関係なく魅力的ということに、気付いてしまいましたの」

「バロンの最初の妻はアウルじゃがなぁ。盲目の王アデロバシレウスはきっと、朕の方が好きじゃぞ?なぁ、バロンよ」

 二人が視線を向けると、バロンは溜息をつく。

「……僕はエリアルとアウル、それぞれが好きなだけだ。お前たちのことは知らん。メルクバやソムニウムがどう思っているかもな」

「あら、そうですの?ではここに呼んでみましょう」

「……呼ぶ……?おい待て、それは……」

 リビングが吹き飛び、テーブルと椅子だけが残る。草原に放り出された三人の前に現れたのは、星王龍メルクバだった。

「……僕の屋敷じゃないんだぞ……!」

 バロンの抗議を余所に、メルクバが言葉を発する。

「蝶々……だけだ……」

 それだけ告げると、彼は即座に飛び立って彼方まで消え去る。

「……おい……はぁ……こんなことをしたら、流石にアリシアも怒るぞ……」

「私は可愛い子なら誰でも」

「……っ!?」

 バロンが驚いて振り向くと、彼の左肩に右手を置く竜人形態のソムニウムが居た。

「……メルクバの気配に合わせたのか、全く気付かなかった」

「ほら、平和にイチャイチャするのはあなたに任せてるけど、たまにはこういう出番も悪くないかな、って」

「……そうか……」

「それじゃ、私はこれで」

 彼女は言葉通り、そそくさと立ち去る。

「……何をしに来たんだ、二人とも……」

「まあそういうことですわ!」

 アプカルの声にバロンは正面へ向き直り、かぶりを振る。

「……いや、メルクバだけだっただろう……」

「それはそうとわたくしはもう一つ思いますの」

 バロンの小抗議も聞かず次の話題へ移行する。アプカルは少々不機嫌な感じだ。

「マドルが不憫なのが気に入りませんわ。金髪碧眼の巨乳お嬢様ドラゴンって可愛い要素を詰め込んだのに出番も展開も不憫ですわ!挙句の果てにはわたくしから生まれた同士でまぐわう始末……あなたにはそういうのがないのが理不尽ですわ!」

 アプカルがオオミコトを指差す。

「朕に言われてもな……だって朕の方が正妻ポジションじゃし、優遇されて当然じゃろ。レイヴンで言うアーシャ、ストラトスで言うシエル、レメディで言うヴィルヘルム、ホシヒメで言うゼロじゃ」

「違いますわ!旦那様の伴侶は、わ・た・く・し!」

「そもそも火を預けてくれたのはメイヴで、命の受け皿となったのは朕。ヌシはごろごろしながら智慧を吸っていただけじゃろ」

「うぐ……!ちょっと気にしてるところを……!」

 端から聞いていたバロンは、面倒が過ぎたのか左手で口許を覆って半目になる。

「……(こうやって性に関係のない話題だとオオミコトは口が上手く見えるのだがな……)」

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