与太話:お姉ちゃん力(ちから)

万屋クロダ

「はぁ……」

 来客用のソファに座り、温かい紅茶を一口啜ってから、ルータが溜息をつく。向かい側に座っているロータが、変わらずの無表情で尋ねる。

「どうしたの、上姉様」

 ルータが待ってましたとばかりに笑顔になって顔を上げ、目線を合わせてくる。

「よく聞いてくれましたっ!」

「うわ、なに」

「私ね、ちょっと悩んでることがあるの」

「うん」

「私って、ちゃんとお姉ちゃんできてる?」

 何とも言えない問いに、ロータは小首を傾げる。

「さあ……?」

「だってほら、メビウスの時はシルル・ウルフェンの中に入ってて、最終決戦の時は勝負挑んで負けて、超越世界からは一応近接戦闘を担当してたけど……ロータとラータの方が強いし……普段の生活だとリータの方が家庭力あるじゃない」

「まあ、上姉様は正直ポンコ……見てて飽きないからそのままでいいよ、上姉様」

 ロータはやや不自然に咳払いしてそう言うと、ルータは怪訝な表情になる。

「今ポンコツって言いかけたわよね」

「大丈夫、姉様のほうがもっとポンコツだから」

「そうなの?リータってしっかりもののお姉ちゃんで可愛い妹のイメージしか……」

「姉様の得意芸と言えば何もないところで転ける、右手用ハサミを左手で持つ、塩と砂糖を間違える、エルデから洗濯を任されて兄様のズボンを破壊する」

「もういいわ、わかったから」

「上姉様、尖った部分が無いっていうのも個性だから気にしたらダメだよ」

「妹から面と向かって個性がないって言われた……」

「(この人めんどくさいな……)」

 ロータはそう思ったが、口には出さずにルータの愚痴を聞くのだった。

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