キャラ紹介:ヤマガラ

 エラン・ヴィタール 屋敷/執務室

「……それで、イーリスがな、急に『ここは敢えてファッション性を捨てて媚びに媚びた衣装を作った方が長く性生活が豊かになる!』と言ってな……」

「それにオオミコト様が乗って大変なことになったと」

「……ああ……エウレカで市長をやっていた頃のほうが健全な忙しさだった……今はなんというか、爛れていると言うか、睡眠欲、食欲、性欲のバランスが三等分されている空間に居ると言うか」

「寝る、起きる、食べる、自由時間、食べる、風呂に入る、寝る……」

「……自由時間に何が起きてるかは……聞かないでくれ、あまり思い出したくない。たまに一回二回程度で枯れる体質だったらどれだけ楽かと思うこともあるくらいだ……」

 バロンとシマエナガが雑談していると、デスクの前にスズメが降り立ち、跪く。

「殿、相談したいことが」

「……お前がそういうことを言うのは珍しいな。どうした?」

「その……先日ここで暮らし始めたコクウェさんのことなのですが」

「……ああ、ハチドリの母君か。それがどうかしたか?」

「ええと、私にも姉が二人いまして、呼んでも良い……か聞きたくてですね」

「……む……構わないが、人となりは予め聞いてもいいか」

 スズメは立ち上がり、どこから取り出したのか写真を二枚見せてくる。一枚は極めて真剣な表情のツインテールの少女、もう一枚は辛気臭いながらも並々ならぬ自信のほどが伺える表情の妙齢の女性だった。

「このツインテールの方が次姉のヤマガラ、もう片方が長姉のホオジロです」

「……ふむ」

「私がネストの長なのは殿もご存知かと思いますが、ヤマガラ姉様はネストの中でも、オリジナルセブンの近辺を警護する、近衛部隊の長です」

「……ほう。つまり、白兵戦による警護をメインにするニルの騎士隊が表なら、こちらは裏というわけだ」

「そしてホオジロ姉様は、トランス・イル・ヴァーニアに潜入していた部隊の長です」

「……敵の本陣での情報収集を一任されている……相当な強者だと言うことか?」

「はい、仰る通りですよ。ホオジロ姉様は戦闘能力で言えば獣耳人類最強クラスで、単独で危険な任務をいくつも成功させてきたんです」

「……よし、わかった。ところで……姉たちの方は了承しているのか?」

「実は……殿のお話をしたところ、二人とも妙に殺気立ってしまって」

「…………なぜ?」

「私が殿のことをお慕いしているのが気に食わない、と」

「……よくある話だな……まあ、一度話をしてみよう」

「ありがとうございます、殿!」

 スズメが写真を回収し、踵を返して立ち去ろうと離れた……ところに空間が揺れ、影がバロンへ肉薄してくる。が、デスクの上に突如として姿を現したライズが籠手で影の持つ刀を受け止め、弾き返す。影はスズメの横に着地し、徐々に色づく。そこに居たのは、先程写真で見た、ヤマガラだった。スズメに比べると、程よく胸が大きく、様々な装飾が追加されたネストの装束に身を包んでいる。

「ヤマガラ姉様!?」

 スズメが驚いて飛び退き、ヤマガラはバロンとライズから視線を外さずに言葉を返す。

「私の気配を見抜けぬとは、鈍ったものだなスズメ」

 ヤマガラは右手に持つ、フィクションで見るような忍刀を向けてくる。

「貴様がバロンだな。我らの優秀な妹を誑かしたのは」

「……誑かしたつもりはないな」

「サバトでのスズメへの仕打ち……忘れたとは言わせぬぞ!あんな……あんな……き、気持ちよさそうなこと……」

 ヤマガラは急に言葉尻が弱くなるが、すぐに声量の調整をミスしているような大声を重ねる。

「ともかく!貴様のような不貞の徒は私が断罪する!」

「……ライズ、退いていいぞ。目当ては僕らしい」

 バロンが立ち上がると、ライズはやたらと眩しい笑顔で返して姿を消す。

「……」

 ヤマガラの正面に立ち、静かに闘気を沸き立たらせる。

「貴様はスズメや他の少女たちと同じように、あの手この手で蹂躙して手籠めにし、この屋敷で飼っているのだろう!」

「……ああ、そうだな、その通りだ」

やはりか!貴様!いいなぁ……ズルいなぁ……

 ヤマガラは頬を緩めてそう口に出すが、本人は気付いていないようだ。

「……来ないならこちらから行くぞ」

「ッ……!」

 バロンの言葉に反応し、彼女は気配を消して背後を取り、忍刀を突き出してくる。が、常人の範疇と言える彼女の機動力ではバロンの目を欺くには足りないようで、瞬時に向き直って右拳で忍刀をはたき落とされ、左手で顎を掴まれて壁に押し付けられる。

ひと思いに殺せ……!これから何されるんだろう……!

 真剣な表情で射殺すような視線を放ちつつも、どういう芸当なのか心の声がダダ漏れになっているヤマガラに対し、バロンは思わず吹き出しそうになるも、耐える。

「……よし、ならばお前は僕が奴隷として飼ってやろう」

このけだものめ……!もう濡れてきちゃったかも……

「……(今まで色んなタイプの生物に会ってきたがこういう性格は初めてだな……)」

 バロンは右手でヤマガラの頭を掴み、思念を注ぎ込む。

「いっ……!?」

「……お前やスズメは楽でいいな」

 手を離すと、彼女はその場にへたり込む。

「貴様、何をした!」

「……色々、だな。取り敢えずここから僕の許可なしには出られなくなった」

「何だと……(うっわーなにそれ超エロい……!言う事聞くしか無いってこと!?)」

「……一先ず、これからは僕のために動いてもらう。何をするかは……お前の妹に聞け」

 言うことを言い終わると、バロンはデスクに戻る。ヤマガラへスズメが歩み寄り、手を差し伸べる。

「えと……とにかく、ヤマガラ姉様、一緒に任務につきましょうか」

「え?あ、ああ……」

 手を取って立ち上がり、ヤマガラは恥ずかしそうに視線を逸らす。

「てっきりここで無理矢理犯されたりするかと思ったのに……」

「あ、あはは……」

 正直過ぎる言葉に、スズメは苦笑いするしか無いのだった。

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