エンドレスロール:焼滅の魔女

 エンドレスロール 焦土日本・燎原東京

「あっつー……」

 明人が燃え盛るビル群の最中を歩いていく。

「ここどこだよ……」

 炎の中を熱気に喘ぎながら進むと、無数の車道が絡み合う交差点に辿り着く。交差点の中央にはプレタモリオンがおり、明人を見捉えて吠える。明人は瞬時に変身し、大柄な骸骨騎士の姿を現す。が、次の瞬間、炎の旗が揺らめく旗槍によってプレタモリオンは貫かれ、焼滅する。遅れて黒騎士が着地する。

「まだ、生き残りが居たんですね」

 黒騎士は旗槍を地面から引き抜き、黒く長いマントを翻して風貌の全てを露わにする。そこに居たのは、顔面が陶器のようにひび割れ、長くくすんだ黒髪と、灰の降りた鎧を纏った月城燐花だった。

「明人くんのために……旧い人間は、全部焼き尽くす……」

「燐花……」

「さあ、あなたも……完全なる未来の、糧となって……」

 燐花は右腕を上げ、旗槍を肩に乗せて接近し、前転から旗槍を振り下ろす。明人が後退で避けると、燐花は身体を翻して薙ぎ払いつつ、炎上させたマントで追撃する。その勢いを一気に殺して刺突を繰り出し、明人はその場で跳ね上がって躱しつつ奇怪な軌道で着地しながら大剣を振り下ろし、滑るような挙動で二度薙ぎ払って燐花を突き出し、大きくバックジャンプしてから即座に踏み込み、大上段から刺し貫くような動作を取る。燐花はハンドスプリングで後退し、露骨な着地隙に目掛けて薙ぎ払いを直撃させ、そこで怯みを取ったところに捻りつつ飛び上がって体重をかけた振り下ろして叩き伏せる。明人はすぐに全力を込めて起き上がりつつ前方を切り払って後退し、懐から取り出したサドルマガジンのアサルトライフルを乱射して牽制し、距離を取る。燐花は旗槍を突き出して鎧から火炎を噴射して加速突進を行い、なおも逃げに徹しようとする明人に左肩を使ったタックルをぶつけ、旗槍で薙ぐ。明人は大剣で突進を弾くが、だがタックルの直撃を受け、旗槍を横腹に当てられて少々浮き上がり、素早く翻ってはたき落とす。だが明人は空中で受け身を取り、大剣の腹で受けて着地し、至近距離で溜めた強力な横振りを直当てしつつ、剣閃から生じた衝撃波ごとぶつけて大きく吹き飛ばす。衝撃波を帯びたまま、大剣を構え直して刺突ごと衝撃波を撃ち出しで遠距離で撃ち抜く。燐花は離れたところで崩れ、片膝をつく。顔面がより大きく崩れ、破片を左掌で受ける。砕けた破片は灰のようになり、風に攫われて消滅する。

「炎の色……愛の、色……」

 燐花は旗槍を地面に突き立て、立ち上がる。顔の砕けた部分が赤黒の龍鱗で覆われ、半分竜化した状態へと変貌する。

「明人くん……私を、試すと言うんですね……ならば、私の愛を……暗い昏い、情念の炎を……あなたに、捧げます……」

 彼女は譫言のように呟く。その対象が、眼前に立つ自身を指していないことを、明人は察していた。

「(息が詰まる……やたら頑固な痰が喉に絡んだような……言いようのない不快感が炎から伝わってくる……)」

「あなたの命、私の炎の薪となって……」

 燐花は旗槍の切っ先で地面を擦りながら、大振りだが素早く薙ぎ払う。軽く躱されたところに往復でもう一度薙ぎ、もう一歩踏み込んで下から振り上げ、掠めてから大上段から振り下ろす。明人は身軽な右サイドロールで避けてから再び溜めからの薙ぎ払いの直当てと衝撃波によって燐花にダメージを与えるが、燐花はそのまま地面を擦らせて振り、左掌から大熱波を放つ。重ねてよろけるような歩行で踏み込み、全体重をかけて旗槍を振り下ろす。明人は熱波の怯みから復帰して大剣を切り返し、旗槍の中腹から先端部分を切断し、今度は明人が全力で縦振りを繰り出して衝撃波ごと叩きつけ、燐花を後方のビルの壁まで吹き飛ばす。そして明人は無謬へと転じ、右拳に力を集中させて地面を殴り、強烈な衝撃波を起こして追撃する。竜化を解いて確認すると、燐花は土煙の向こうから平然と現れる。

「まだ……燃やせる……」

 旗槍を両手で握り、旗状に靡いていた炎が纏わりついて巨大な槍を形成し、ジャンプから斜めに飛び込んで地面に突き刺して爆発させ、薙ぎ払う。明人は素早いバックジャンプで刺突を避け、薙ぎ払いを空かしてから飛び込みから下段を掬うように大剣を振る。燐花の左足を損壊させるが、彼女は右足だけで跳躍して左足を再生して着地し、炎で穂先を再生して異様に伸びる踏み込みから旗槍を上段から突き出す。明人は立ち上がった勢いで衝撃波を飛ばし、穂先に直撃させて炎を打ち消す。そうやってリーチを誤った燐花に渾身の一振りを叩き込み、裂き割った鎧の傷に大剣を刺し、胴体を貫く。

「あっ……」

 燐花は悶えるでも叫ぶでもなく、何かが途切れた時のように小さく喘ぎ、旗槍を手放す。大剣を思い切り引き抜くと、彼女は背中から倒れる。

「ったく……何なんだ……取り敢えずこういう時は……」

 灰と塩の山になった燐花を余所に、明人は歩き始める。

「アリアちゃんを探せば……なんとかなるだろ」

 空中で一部始終を見届けたルナリスフィリアは、閃光を放つのだった。

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