☆与太話:面積の話Part2

「……そうだ。昔のアリシアは今よりもっとわがままで……スケジュールの都合で1日相手にできないだけでも拗ねきってしまうヤツでな」

「私もマスターから1日無視されたら病みます。制作者はヤンデレだと思ってるメンヘラキャラになります」

「……萌え文化の黎明期の話をしてるのか?」

 執務室でバロンとシマエナガが雑談をしていると、勢いよく扉が開かれる。立っていたのは黒い外套に身を包んだオオミコトと、普段着のイーリスだった。

「バロン、この子の衣装が出来たわ。お披露目よ」

「……済まないな、イーリス」

「構わないわ。それなりに刺激的だったし」

 二人はバロンの正面近くまで歩き、そしてイーリスが勢いよくオオミコトの外套を剥ぎ取る。

「「……」」

 バロンとシマエナガは言葉を発さない。現れたオオミコトの纏う衣装は、辛うじて乳頭だけが隠れるようになっている扱き帯のようなものと、これまた辛うじて局部だけが隠れるようになっている超ローライズのパンツだったからだ。

「私も下着のデザインをしたことはあるけど、それを上着と同じような素材で、光沢や光の反射を調整して下着っぽく見せなくするようにするのは苦労したわ。でもお陰で、布面積は下着と変わらないけど一目見ればこれが普通の衣服だってわかるようになったのは素晴らしいわよね」

 イーリスの評価にオオミコトが続く。

「うむ!人間の衣服を着ようと思ったが、肌が多く隠れて窮屈だったのでな!じゃが、朕は満足だぞ!」

 バロンは己の額を右手の指で突き、しばらく考えたあと視線を彼女に向ける。

「……まあいい。普通の街を歩いたりすることはないからな。この家で生活する分にはそれだけ露出していても大丈夫だろう……」

「うむ。セックスする時もこの股間の当て布を脱げばいいだけなら簡単だな。感謝するぞ、イーリスよ」

 オオミコトの言葉に、イーリスは笑顔で返す。

「ふふ、ありがとう。そんなに喜んでもらえるなんて、デザイナー冥利に尽きるわね♪」

 バロンは上機嫌な二人を見て、それ以上文句を言うのを止めたのだった。

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