エンドレスロール:RE.V.F.D.
エンドレスロール 胎臓大灯台
燐花は咄嗟にハルの口にしがみつき、無理矢理口を抉じ開けさせる。そのまま喉奥目掛けて旗槍を捩じ込み、炎を炸裂させて離れる。
「あつ……い……!」
ハルが体を捕食形態から元に戻し、右副腕を振り被って叩きつける。その衝撃に床にこびり付いた肉片たちが従い、収縮して燐花とハルを同時に落下させる。
「なっ!?ゼナ!」
明人が動揺するが、ゼナは至って冷静に事態を見極める。
「明人くん!先に進んでください!私はこの子を仕留めます!」
落下しつつも燐花がそう告げ、ゼナが頷いて明人を伴って竜化し、上に飛んでいく。燐花が一回転しつつ華麗に着地し、ハルも巨体に見合った重い音を撒き散らしながら着地する。
「むぃ!」
ハルは軽く嘶くと、副腕の爪を床に突き立て、エネルギーを吸収して傷を癒す。超音波のごとき咆哮を吐き出し、左副腕を盾に突進する。燐花は左手から炎を放出するがまるで怯まず、やむを得ず右に転がって躱す。ハルはそこで薙ぎ払いつつ、向きを合わせて右副腕で掬い上げるように振り上げ、左右の副腕を全身を使って乱雑に振り回す。しつこく方向を合わせながら繰り出す猛攻の内、一打を受けて燐花は後退させられる。そこでハルは咆哮し、右副腕を突き出しながら渾身の突進を繰り出す。
「っ……!」
旗槍の柄で爪を凌いで往なし、即座にその穂先でハルの胸部を貫き、渾身の爆炎を注ぎ込む。程なくして大爆発し、ハルは重傷を負って後退し、膝から崩れて絶大な隙を晒す。燐花は駆け寄り、旗槍の薙ぎ払いの往復を叩きつけつつ、小ジャンプからの左拳で殴り飛ばし、壁に叩きつけたところに旗槍を投げつけ、過たずに胸部を再び貫く。
「ハル、まぁの期待裏切りたくない……!」
元々の右手で旗槍を抜き捨て、傷を修復……を越えて、元の姿よりも大柄で、マッシブに変異する。
「まだ進化するの……!?」
驚きつつも、燐花はあくまでも冷静に旗槍を手元に戻す。
「ウアアアアアア!」
ハルは先ほどよりもひび割れた絶叫をしつつ突進する。副腕の振り下ろしに合わせてサイドロールで躱し、爪の通り過ぎた虚空が焼かれて焦げる音がする。
「(熱を……?)」
隙を逃さずに出力を上げ、旗槍にて十字斬りを与えつつ、大きく翻って大上段から振り下ろして強烈な熱波を起こす。だがハルは怯まず、右副腕で燐花を掴み、握り締める。燐花は全身から爆炎を解き放って右副腕を破壊しつつ離脱し、旗槍を再三胸部へ突き刺し、ハルの巨体ごと振り回して投げ飛ばす。ハルは咄嗟に右腕を触手に変え、燐花に巻き付けて引き寄せる。胴体を縦に開き、捕食形態へと転じる。燐花が旗槍を横にして耐えようとしたところに、ハルは開いた胴体から明るい朱色の粘液の激流を吐き出し、触手を手放して燐花を壁まで押し飛ばし、激流を撃ち切る。捕食形態から元に戻ると燐花も体勢を立て直す。激流を受けた燐花の鎧は表面が溶解して白煙を上げていたが、即座に修復される。ハルは大きく跳躍して両副腕を叩きつけ、その隙に燐花が左拳を顔面に叩き込んで怯ませ、旗槍の殴打で体を浮かせ、反対からもう一度叩いて追撃し、飛び回し蹴りを与えて後退させ、トドメに鎧から火炎を噴射して急加速し、加速度を与えた強烈な刺突で貫く。
「あぐぉあ……!キャアアアアアアアッ!」
ハルの悲鳴に従い、彼女の傷口から有り得ないほどの肉塊が噴出し、燐花を吹き飛ばしてなお溢れ続ける。
「くっ……!まだ死なないなんて……!」
凄まじい量の肉の波に飲まれ、燐花の視界が暗転する。
「うっ……」
燐花が目を覚ますと、ハルが副腕を備えた超巨大四足竜へと変貌しているのが見て取れた。旗槍を支えに起き上がり、構え直すと、ハルはその姿を見止める。
「だぁのためにぃ……新しい世界、ほしい!」
余りの巨体によってアガスティアタワーの壁面を壊して下半身が外部へ露出しており、巨大な副腕が空間の殆どを占有し、前脚で床を穿って辛うじて燐花と相対している。右副腕で薙ぎ払い、その軌跡が急加熱されて次々に棘状の肉片が生成されていく。躱すも、続く左副腕の振り下ろしは避けられず、旗槍を掲げてその場で受け止める。
「ぬああああああッ!」
燐花は鎧から全力で炎を噴き出して筋力を補助し、左副腕を押し退ける。続く右副腕の薙ぎ払いを飛び上がって躱し、左副腕が床に掌底を合わせて突き出す。強烈な波動が大黒柱に当たり、燐花がその根元を爆発させることでへし折り、倒壊した柱がハルの右副腕の肩口に激突する。凄まじい衝撃で戦況の把握が困難になっているところへ、左副腕の一撃が加えられて燐花は床に叩きつけられる。
「くっ……」
燐花は痛む体を強引に起こし、目の前に突き刺さっている黒い長槍を掴む。
「これは……万物の霊長の……!」
引き抜き構え、ハルの頭部を目掛けて投げつける。長槍は無明の闇を噴出しながら突き進み、ハルの脳天を貫いて爆発し、激烈なダメージを与える。それを好機と見て燐花は飛び上がり、左副腕を駆けあがって頭部の切断面に着地し、露出した核の部分に旗槍を突き刺し、全力で炎を注ぎ込む。
「明人くんの伴侶は!私!だけです!」
「めぇ……!」
「くたばれッ!」
限界を超えて注入された炎が特大の爆発を起こし、燐花を激しく吹き飛ばす。床に叩きつけられた状態から、辛うじて上体を起こす。同じく吹き飛ばされた旗槍が床に転がり、物言わぬ肉塊となったハルの巨体が液状に変化していくのが見える。
「はぁ……はぁ……っ……明人くんのところに行かないと……」
燐花は立ち上がり、その場を後にした。
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