☆☆☆エンドレスロールEX:星の海、最奥の業
その王は 生まれながらにして人を超越していた
比肩するものなく 冷え切った魂を抱えて
故に王は 己もろとも全てを焼く滾りを求めた
熱く燃え尽きることこそ
己ならず 全ての命にとって相応しいと信じて
王は何度でも 零から理想を賭け続ける
触れた全てが黄金になる 頂点を目指して
黄金の全てが 輝く秘宝とも限らぬものだが
エンドレスロール 王城セミラム・グラナディア
荘厳なる城の頂上、星の海を模したような内装に、賭博用の回転円盤が床に嵌め込まれた、奇怪な部屋にて、玉座に
「……」
セミラミスが前方を見やると、煤けた大扉が溶解し、その向こうから片耳のハチドリが現れる。
「ほう、鋼の香り……予の下にこれほどの滾りを込めた者がここに来るとはな」
余りにも冷えた表情をしていたセミラミスは、徐々に熱を帯びて笑みを見せる。
「そなたは何者だ?その絶類なる力、並大抵のことでは手に入るまい」
ハチドリは歩を止め、深呼吸から脇差を抜き、刀身に炎を宿す。
「良い、良い滾りだ。予の求める通りの熱を帯びた修羅よ、歓迎しよう」
セミラミスは立ち上がり、右手に淵源の蒼光で象られた王笏を呼び出す。
「予の国を見ては貰えたかな?」
「……」
ハチドリは静かに頷く。
「予の国は理想を叶えた。人は皆、思うがままに己の滾りを、より大きな篝火へと育て上げている。全ての者が、望んだままの頂きを目指して励む。これこそ、人間のあるべき形だ」
「……」
「どうだ、求めるものは予とそなたは同じ。これで戦わない理由などないだろう!」
「ええ……そうですね」
ハチドリが脇差を構え、セミラミスも右半身を引き、王笏を輝かせる独特な構えを見せる。
「人は滾るために産まれてきた!ならば命を魂を……全てを燃やし尽くすのが人生というものだろう!行くぞ、修羅よ!」
王笏が槍に変形し、紅い光を全身に纏って恐るべき速度で刺突を繰り出す。ハチドリは分身を盾にして回避するが、槍は分身を刺し貫いて、そのまま全身を使って薙ぎ払う。回避から即座に反撃しようとしたハチドリへ当て、脇差の腹で往なす。槍は大太刀に変じ、ハチドリの硬直へ振りを当て、圧縮された斬撃が空間に荒れる。防御の上から斬撃を当てて押し、刀をそのまましならせて弓とし、光の矢を放つ。
「ッ……!」
矢をギリギリで弾き返し、返す刀で刺突を繰り出しながら猛突進する。
「ははっ!良いぞ、その熱量!」
セミラミスは前方の空間を歪め、ハチドリの突進を鈍らせる。そして居合のように構え、変形した刀を振り抜いて大量の斬撃を飛ばす。ハチドリは歪んで多重に重ねられた空間を強引に貫いて引き裂き、斬撃の嵐の中を無傷で抜けて刃を届かせる。王笏に戻して切っ先を弾き、ハチドリは分身を使った隙消しで舞うような連撃を繰り出すと、セミラミスも自身の周囲の空間を歪めて隙を潰し、力任せの往なしで連撃を強制終了させ、槍に変形させて薙ぎ払い、即座の後退で躱されても構わずに一回転し、そして回転する槍を頭上に掲げ、自信満々に隙を晒して床に突き刺す。同時に総身に紅い粒子を纏う。
「修羅の熱、まさに何物にも代え難き滾りよな!」
「……」
ハチドリはゆっくりと構え直し、セミラミスは戦闘中とは思えないほど堂々と歩を進めてくる。
「修羅よ!予にもその滾りを注いでみよ!人々の魂に火をつけた後は、予自身の薪を燃やし尽くさねばならんのだ!」
「ならば望み通りに……!」
僅かな筋肉の動きから攻めを察したセミラミスは、先程よりも速い瞬間移動で接近しつつ、槍を刀へ変えて斬りつけ擦れ違う。ハチドリは分身を盾にして、セミラミスの移動先に瞬間移動し、大きく二回薙ぎ払いつつ飛び上がり、頭上でもう一閃与え、再び力任せに弾こうとしたセミラミスの防御を砕き、落下しつつ左手を首に撫でつけて、脇差で背から貫く。引き抜きつつ蹴りで飛び退き、前につんのめったセミラミスへ再接近して蒼い太刀を抜き、刀身に怨愛の炎を宿して、横、縦と渾身の力で振り抜く。絶大な衝撃で吹き飛んでセミラミスは壁に叩きつけられる。ハチドリは蒼い太刀を背に戻し、構える。
「ふくくく……」
不敵な笑みを零しつつ、セミラミスはめり込んだ壁から脱して向き直る。
「予に火をつけたのはこれまで、ただ一人だけだった」
セミラミスはまたも堂々と歩を進め、ハチドリとの距離が手頃な地点で止まる。
「予と見るものが等しい、予に同質の火を灯せる存在……メイヴでも、リーズでも、ディードでも違う。予にとって同じものを見据え、そして同じ格を、実力を備えていたもの……それは唯一人、バロン・エウレカに他ならぬ」
「旦那様……」
「いやはや、その熱を全て受け継いだ者が予の前に現れるとは、わからぬものよ」
王笏を消し、紅い粒子も途絶える。入れ替わりに、セミラミスからは震えるほどの凄まじい力が沸き立つ。
「予は今こそ確信した!予の目指す治世が完成したこの世界……全てはこのためにあったのだと!」
光が立ち上り、圧倒的な衝撃が響き渡り、周囲の壁を吹き飛ばし、天井を消し炭にする。
「
厳かな声が響き、煙を払い、黒馬に跨った黒い魔人が現れる。淵源の蒼光を帯びた、異形の刀を握ったそれは、セミラミスの竜化体のようだ。
「良いぞ、予は王であり、そなたは王であることを捨てた修羅。ついぞ得なかった、ありのままのそなたと刃を交わすこと、これほどに身を焦がれるほどの熱を放つとは!」
「……」
「もっと見せてくれ、修羅よ!」
刀を天へと掲げ、それだけで再びの強烈な衝撃波、そして立ち込める全ての雲を薙ぎ払い、青空を粉砕して黒が漏れ出す。
「聞けぃ!我が輝きに、命の熱に浮かされた民草たちよ!これより予は、そなたたちを予の庇護から解き放つ!」
そして刀をハチドリへ向け、それだけでハチドリを通り抜けて眼下の城下町を文字通り両断する衝撃波が飛ぶ。
「ぐははははは!」
刀を振りかぶり、横に振る。斬撃が飛ぶでもなく、遠隔でハチドリの足場を斬り捌く。ハチドリはもちろん攻撃の予感から飛び退くが、その威力には流石に目を瞠る。
「なんという……!」
「さあ存分に、燃やし尽くそうぞ!」
黒馬が駆け、セミラミスは出鱈目に刀を振る。その度に斬撃そのものに加え、ハチドリのいる大まかな空間を両断する。先程までの小振りで隙のない動きより遥かに緩慢で、むしろ逆に隙を潰そうともしていない動きで振り回している。縦振りが行われる度に海やら城下町やら、果ては城すらも真っ二つにする。だが隙だらけであることには変わり無く、ハチドリは張り付いて分身を駆使して光速で動き回りながら、威力を重視して蒼い太刀で斬撃を与え続ける。セミラミスは全身からシフルエネルギーを解放してハチドリを押し返し、勢いよく横に薙ぎ払う。ハチドリは咄嗟に分身で受けようとするも、分身を貫いて本体まで届いたゆえに左手の籠手で受け止める。
「ふはははははっ、あははははは、ぐははははははは!」
「くぅっ……!」
凄まじい勢いで火花を散らし、激突で生じた斬撃が背後の空間を切断し、次元門が開通したことを意味する黒が漏れ出してくる。
「ですが……!」
籠手で強引に押し返し、僅かな隙間を稼いだところで構え直し、蒼い太刀で異形の刀を受け止め競り合う。
「間違いない!これが滾りだ!生命の
「……!」
異形の刀を断ち切り、その勢いでセミラミスの腹を切り裂きつつ通り抜ける。彼は大きく仰け反り、傷口からは白く透き通った液状の純シフルが飛び散る。向き直ったハチドリは身体の制御を取り戻し、構え続ける。
「これは……
驚くハチドリを余所に、セミラミスは中腹で折れた刀を持ったまま、振り向きもせずに腹の傷に左手を当て、白い液体のべっとりとついた掌を見つめる。
「おぉ……おお……おおおおお!
セミラミスは刀を修復し、頭上に構えてから馬ごと向き直って一回転し、一閃する。ハチドリは容易に躱すが、斬られた空間は滑り落ちて消滅していく。隙だらけの背中にハチドリは渾身の斬撃を与えて擦り抜け、セミラミスは腹部のものも併せ、傷を一つも修復せずに、全く冷静さを欠いてハチドリへ刀を振り続ける。
「(あの血が本当に不滅の太陽ならば、付いた端から傷が治癒されていくはず……だとすれば、彼自身がわざわざ意図的に傷の治癒を堰き止めている……?)」
右から左へ、そして逆へ切り返した、その瞬間にハチドリは急接近し、黒馬の脳天を脇差で貫いてから、蒼い太刀を抜いて袈裟斬りにする。
「ぐふぁっ!」
セミラミスはもはやわざとと思えるほど激しく悲鳴を上げながら落馬し、黒馬も消滅する。辛うじて残っていた城の頂上に落下し、ハチドリも次いで降り立つ。セミラミスは傷が癒えており、異形の刀も保持したままだ。
「我が欲しかったのはこの滾りだ!身体の奥底から無尽蔵に火が滾ってくる!五臓六腑を焼き尽くしてもなお止まらない、全てを焼き尽くす暴力だ!」
セミラミスの身体が輝き、変貌していく。現れたのは、比較的シャープなシルエットの黒金のフルプレートアーマーだ。
「
「ここだ!我の終着点!最大の焔だ!」
異形の刀が輝きを増し、淵源の蒼光を帯びた刀身はそのままに、白く透き通るシフルエネルギーを纏う。
「修羅よ、我にお前の全てを叩き込め!焼き尽くすのだ、互いの命を、全て、一滴も残らずに!」
セミラミスは踏み込みから瞬間移動しつつ刺突を繰り出し、盾にしようとした分身を貫通してハチドリに対処を強要する。脇差の腹で弾かれるも、自身の周囲の空間を歪めて強引に隙を潰し、強烈な縦振りを当て、目にも止まらぬ速度で重ねた横振りを遂にハチドリの脇腹に直撃させ、両断こそしないものの激甚なダメージを与える。ハチドリも意を決し、横振りを腹半分程度で瞬間移動で逃げ、赤黒い太刀を抜き、紅雷をセミラミスへ直撃させる。
「ぬはは!そうでなくてはな!」
セミラミスは淵源の蒼光で槍を象り、それを天へ放る。すると次々に槍が降り注ぎ、着弾しては円状に衝撃波を起こしつつ、時間経過とともに周囲を焼きつつ爆発する。ハチドリは分身を飛び継ぎながら全てを躱し、そこへセミラミスが居合を繰り出す。巨大な斬撃がビームのように飛んでいき、躱したハチドリを見てから瞬間移動して距離を取り、今度は広く空間を切り裂いて、虚空に大量の斬閃を固定する。ハチドリが近づく瞬間に斬閃ごとに大量の斬撃が漏れ出し、セミラミスは重ねて槍の雨を繰り出して、分身と高速移動で隙を伺うハチドリへ兜割りを大上段から叩きつけて地面に叩き落とす。ほぼ同時に着地して居合を繰り出し、巨大な斬撃を再び放ち、ハチドリへ直撃させて圧倒的な威力で押し込む。が、ハチドリもまた籠手から紅蓮を解放して威力を相殺しつつ、リーチを激増させた蒼い太刀の横振りを、斬撃を受けつつもセミラミスに直撃させてよろけさせ、縦振りを続けて当ててから手放し、赤黒い太刀へ持ち替え、投げつけて左胸を過たずに貫き、紅雷をそこへ落として直撃させる。
「ふはっ、ぬはははははは!」
セミラミスは大技の直撃が連続したにも関わらず大笑いし、両腕を開いて天を仰ぐ。
「いいぞ……!」
左胸の赤黒い太刀を左手で引き抜き、ハチドリへ投げ返す。そして即座に傷は癒え、白いオーラが浮かび、千切れた白い雫が宙へ浮かび消える。ハチドリが右半身を鋼で覆うと、応えてセミラミスも、鎧の内部から蒼い炎を放出する。
「真炎……!」
「我の命が燃えている……!これが命を賭けること、全てを焼き尽くすことだ!」
軽い一振りで真炎が吹き荒れ、続いて瞬間移動から刺突が繰り出される。二度目ともなればハチドリもサイドステップで躱し、蒼い太刀で一撃加え、空間を歪めて隙を潰したセミラミスが横に振り、それを籠手で往なし、太刀の一撃より先にセミラミスが空間を歪めて隙を潰し、強烈な一閃を当てて突き飛ばし、右腕を天に掲げて異形の刀に像を被せて大幅に巨大化させ、そのまま全身を使って薙ぎ払う。飛び上がって躱されたところへ、再び全身を使って縦振りを行い、それも避けられて刀を元の大きさに戻し、広い空間に大量の斬閃を残し、ハチドリの接近の有無に関わらず一斉に起動させる。
「こんなもの要らぬわァ!ふはははは!」
居合からの巨大斬撃を飛ばしながら、頭上から雑多な武器が雨霰のように降り注いでくる。ハチドリにも、もちろんセミラミスにも容赦なく注ぐが、もはや全力を解放している状態では何の意味もなく、怨愛の炎に炙られ真炎に焼き尽くされる。そしてセミラミスは刀を掲げ、刀身に不滅の太陽を迸らせながら総身から更に力を解放する。着地したハチドリを見やり、彼は咆哮する。
「王としての責務を投げ捨て、個人の欲望に従うことがここまで素晴らしいとは!己を焼き尽くすことが、これほどまでに愛おしいとは!嗚呼修羅よ、我もようやく同じ立場に立てたぞ!同じ理想を持ち、同じ立場に!」
「覚悟……!」
「死ぬのはお前だ、修羅!共に最期の一滴まで焚べるぞ!」
セミラミスは縦、横と素早く振り、斬撃を飛ばす。空間を歪ませる隙潰しから回避するハチドリの背後を取り、一度の振りで大量の斬撃を空間に起こす。爆発で威力を相殺しつつ、横を取って舞うような連撃を叩き込まれ、最終段のハードヒットから二連斬りから空中に上がり、頭上でもう一閃放つと、セミラミスは捻りを加えつつ飛び上がって斬りつけ叩き落とし、着地から斬り上げ、袈裟斬り、弾かれたところへ素早く居合を行って巨大斬撃を撃ち出し、飛び上がって避けたのを見てから間髪入れずに大量の斬閃を起こし、時間差こそあれど接近など気にせずに起動させ、ハチドリが瞬間移動と籠手の爆発による急転向で躱すところへ、再び刀に像を被せ、振りが遅いことを承知で何度も縦に振る。そしてハチドリが振りの合間を縫って着地したところへ像を被せたまま刺突を繰り出す。余りにも隙だらけなそこへ接近し、ハチドリは蒼い太刀で渾身の横振りを当て、流れるように持ち替えて赤黒い太刀で縦振りを叩き込み、紅雷を落として追撃し、ようやくセミラミスをよろけさせる。そのまま舞うような連撃を繰り出し、一撃毎に紅雷を落として追撃し続ける。最後の一閃でセミラミスは後方に吹き飛びつつも両足で堪え、なおも興奮した調子を崩さない。
「命とは斯くも燃え盛るものか!そうだ、人間とはまさに、破壊のために、滅びのために、戦いのために!而して死ぬために産まれてきたのだ!」
広い空間に大量の斬閃を起こし、そして天に槍を投げ、素早い振りから次々と斬撃を飛ばす。再三の攻撃故に、当たれば強烈なのであろうが躱し続け、攻撃の度に空間が震え、何かしらの力が蓄えられていくのをハチドリは感じる。セミラミスは逃げるハチドリへしつこく、そしてどのように攻撃を往なすかなどの読み合いすら放棄して連撃を繰り出し続ける。逃げ道を塞ぐでもなく乱雑に斬閃が設置され続け、攻撃の鋭さに対する適当な行動に、ハチドリは攻撃を往なすことに専念する。セミラミスは居合にて巨大斬撃を飛ばすと、大きく退いて再び居合を構える。
「我が刃防ぐものなし!」
抜刀によって、空間が荒れ狂う超巨大な斬撃によって荒らされ断ち切られ、トドメに更に極大の斬撃が一文字に通り抜け、空間を次元門ごと切断する。防御に使って折れた太刀を破却しつつ、ハチドリは傷ついた身体のまま脇差で、振り抜いて隙を晒したセミラミスの胸部を貫く。
「まだだ……!」
セミラミスは左手でハチドリを突き飛ばし、勢いで脇差が引き抜かれる。
「まだ燃え尽きてはおらんぞ!」
傷を癒やして全身から更に激しく真炎と不滅の太陽を解放する。鎧は真炎が固形化して鋭利なフォルムに変化し、より禍々しい形態となる。
「さあ修羅よ!我の全てをその身で受け止めてくれ!」
もう一本、左手に異形の刀を生み出し、高速で縦回転で突っ込んでくる。ハチドリも虚を衝かれながらも左手の籠手で削るように往なし、セミラミスは過ぎ去ってから反転し、横回転しながら再度突進する。ハチドリは分身を盾にサイドステップで躱し、セミラミスはその瞬間に強く振り抜いて身体の向きを直し、逆手に持った異形の刀を地面に突き立て、炎の牙をそこから生み出して追撃しつつ、翻って構え、空間を歪める隙潰しから突進し、交差するように異形の刀を振り抜く。ハチドリは大きく引いて蒼い太刀に怨愛の炎を宿して刀身を伸ばし、横、縦と渾身の力で薙ぎ払う。
「くくっ……」
傷を癒やして歩を踏み出そうとするが、違和感を感じて立ち止まる。セミラミスが自身の身体を確認すると、鎧がシフルエネルギーへと転じているのがわかる。
「これは……!よもや、我の人としての身体が耐えられんというか!」
「既に……」
「いや、ハハハッ!我の命もあと幾許かと言うことか!ならば本望、この命尽きる前に、お前の命を断ち切るとしよう!」
異形の刀を一本に戻し、構え直す。同時に周囲の力の流れが変わる。
「(これは……!)」
セミラミスが両手で異形の刀を持ち、巨大な刀の像を被せる。先程までよりも更に凄まじいエネルギーによって、もはや刀身というより嵐を構えているような風貌になる。そしてこれまた先程とは違い、異常なほど素早い縦振りを繰り出し、ハチドリは寸前で躱す。だが縦振りのカバーする部分以外には大量の斬閃が発生し、直撃こそしないものの徐々にハチドリへダメージを与えていく。そのまま構え直す隙を空間を歪ませながら消し、目にも止まらぬ速度で薙ぎ払う。ハチドリは直撃を受けて吹き飛ばされ、セミラミスは居合から巨大斬撃を撃ち出す。受け身を取ったところに届き、光線のようなそれの多段ヒットを受けて怯み続ける。即座に異形の刀をもう一本生み出し、高速で横回転しながらハチドリに詰める。ハチドリは怨愛の炎を纏ったままの蒼い太刀で弾き返して回転を止め、セミラミスはすぐに左手の異形の刀を消し、右の異形の刀を構えて踏み込みつつ薙ぎ払う。ハチドリは間に合わないと見抜いて、分身に自身を突き飛ばさせることで振りから逃げる。体勢を崩したところに、セミラミスは全身から闘気を発してハチドリを吹き飛ばす。
「今こそ――全てを断ち切る!」
そして異形の刀を掲げ、荒れ狂い、凄まじいまでの闘気を止めどなく解放し続けて力を高め、刀身に集めていく。
「(まずい……!)」
力の充填が完了し、もはや巨大な光の刃となって原型を留めぬ異形の刀を居合のごとく構える。
「我とお前は等しい!だが燃え尽きるのは我だ!」
勢いよく振り抜いた瞬間、解放された爆炎とともに超巨大かつ文字通りに全てを断ち切る大量の斬撃が空間を斬り裂き、最後に破壊の限りを尽くされて限界を迎えた空間が収縮し、真一文字に斬撃を生み出す。ハチドリは防御に使ってなお破壊された籠手と二本の太刀を破却しながら、再び手にした脇差で、セミラミスの脇腹から肩口までを斬り裂いて吹き飛ばす。
だがセミラミスも堪え、構え直し、ハチドリは脇差を再生した蒼い太刀に持ち替える。数拍の後、両者は同時に踏み込み、蒼い太刀が異形の刀を切断して本体に再び斬撃を叩き込み、後方に押し込む。
「見事だ……しゅ……ら……」
それでも堪えたセミラミスは両腕を開いて、天を仰ぎながら背から斃れ、消滅する。
「はぁーっ……はぁーっ……ッ」
ハチドリは呼吸を整えてから太刀を背に戻し、その場に残った異形の刀を拾い上げる。
「凄まじい、力でした……」
流石に疲労の色も隠せないが、そのままハチドリは踵を返した。
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