エンドレスロール:哀しみの行く先
エンドレスロール ???
どこかの戦場、赫赫たる炎に覆われた大地を、蒼頭の黒騎士が彷徨っていた。彼の名はブラッド・フランチェス。アルバ・コルンツに埋め込まれた哀しみの具現にして、自身もまた、多くのものを失い、哀しみを背負ってきた。
彼の鎧は平時より明らかに損壊が進んでおり、表皮が露出した個所からは蒼炎が噴き出ていた。
「……」
ある地点で立ち止まる。前方には、片耳のハチドリが立っていた。彼女をブラッドを見るや否や脇差を抜き、構える。ブラッドもまた、何を言うでもなく紅い鉈のような長剣を抜く。
「参る……」
六連装のフルバーストから、銃弾を越える速度で脇差の一撃を与える。長剣での弾き返しを合わせて受け流し、後方宙返りで距離を取って、その動きの途中で銃弾を躱す。着地と同時に前方へ回転しながら振り、瞬時に逆手に持って薙ぎ、順手に戻して刺突を放つ。二度の攻撃は脇差に容易に弾かれ、刺突は爆発と共にハチドリが頭上へ飛ぶことで躱され、蹴り下ろしからの二連蹴りを長剣にて受け止め、防御したのをいいことにハチドリは舞うような連撃に移行する。鋭い攻撃に加えた衝撃波や真空刃が防御の上から身を削り、左腕を爆発させてタックルを繰り出し、大の大人よりも大柄なブラッドに対し、幼女と形容できるハチドリがぶつかる。火薬の推進以上の威力を以てブラッドを大きく怯ませ、そのまま左手を払って火薬を撒き散らし、脇差を振り抜いて一気に着火する。続けて翻りつつ後方の空中へ飛び、火薬を帯びた鋼の刃を五本飛ばし、爆発によって怯みを延長し、落下と同時に左手で頭を掴んで両足で組み付き、足の力でブラッドを放り投げて地面に叩きつけ、胸元に脇差を捻じ込んでから引き抜きつつ飛び退く。ブラッドはダメージなど無いかのように平然と起き上がり、次の瞬間、突然上半身を覆う鎧が弾け飛んだ。
「……」
ハチドリは冷静なまま脇差に帯びた怨愛の炎の勢いを整える。ブラッドが振り向くと、彼の上半身は完全に蒼炎に飲まれており、長剣にまでそれは伝播していた。
「俺は……もう……」
蒼炎の勢いが爆発的に増加し、左手にも同じ長剣が握られる。
「戦いに朽ちること、それだけが癒しをくれます。どんな痛みにも、後悔にも、哀しみにさえ……」
ハチドリが軽く左手を振ると、鉤爪の付いた籠手が展開され、仄かに紅い光を内部から放つようになる。
「貴様が俺を、地獄から解き放ってくれるのか」
「もちろん……私たちが居るのは、天国の外側。そこはどんな規範も受け付けない……天国の道徳も、地獄の法も、現世の道理も、何にも縛られることは無い。死ねば、それで終わる」
「ほう……!」
ブラッドは大きく構えて右の長剣を薙ぎ、直線状に熱波を飛ばし、それと交差するように左の長剣でも熱波を飛ばす。更に飛び上がり、独楽のように高速回転しつつ長剣を叩きつけ、気迫の籠った踏み込みからの右、左、同時と連続で斬り払う。熱波を火薬となることで躱し、叩きつけを脇差で弾き、籠手から引き出した鋼の斧で右からの剣閃を弾き、左を脇差で弾きつつ籠手に納刀し、最終段を籠手から生じさせた鋼の盾で凌ぎつつ、即座に背の太刀を抜き、怨愛の炎でリーチと威力を大幅に増強しつつ十字に切り裂き、重ねて二連斬りを繰り出しながら浮き上がり、ジャンプの頂点でもう一度薙ぎ払い、更に続けて力を溜め、上から斬り下ろし、地面を走る衝撃波で追撃し、着地する。全ての直撃を受けたブラッドは衝撃波のままに押し込まれ、大きく体勢を崩されこれ以上ないほどに隙を晒す。即座にハチドリは瞬間移動で頭上を取り、右脚で踏み倒しつつ背に太刀を突き立て、引き抜きつつ飛び退く。太刀を背に戻し、脇差を籠手から抜く。
「……」
一瞬蒼炎の勢いが途絶えるが、ブラッドが起き上がると同時に勢力を取り戻し、長剣も再び両手に握られる。両腕を掲げ、突進しつつ振り下ろし、躱されるも、そこから双剣を使った猛攻を繰り出す。振り上げと振り下ろしを使わず、あくまでも斬り払い、薙ぎと言える角度から幾度も斬り付ける。ハチドリは脇差で往なしつつ、弾いた一瞬に脇差を籠手に収める。そして籠手に付いた鞘を爆発させ、恐るべき速度で抜刀し、双剣の狭間を狙って斬撃を繰り出す。その一瞬に脇差は怨愛の炎によってリーチを増強され、ブラッドの胴体を過たずに切り裂き、体勢を崩させる。勢いで脇差を放り投げつつ、太刀に手をかける。飛び上がりつつ抜刀し、ブラッドに左肩に斬り付け、籠手で刀身を殴りつけて爪先まで切り裂き、両手で柄を持って思い切り断ち切り、翻って納刀する。
「これが……修羅か……なるほど……澄み切った……愛、か……」
ブラッドは背から倒れ、蒼炎が全て霧散する。ハチドリは脇差を手元に戻し、腰の鞘に戻す。
「この世の涯は、ただ一つ」
ハチドリはブラッドに火薬を振りかけ、爆散させたのだった。
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