与太話:馴れ初めバトル

「旦那様ー!」

 ハチドリが大声を上げながら笑顔でリビングへ入ると、テーブルではバロンとエリアル、アウルが座席についており、バロンの傍にはシマエナガとスズメが侍っていた。

「相変わらず元気ですね、ふふ」

 アウルが淑やかに笑むと、頬杖をついていたエリアルが欠伸をする。

「むぁったく大した体力よね、ふぁふ……」

 ハチドリも空いている席につくと、バロンへ言葉を投げかける。

「旦那様!私、旦那様にお聞きしたいことがあります!」

「……出来る範囲で答えよう」

「奥様と旦那様の馴れ初めを聞きたいです!」

「……なるほど……」

 バロンが右手を口許に当てて硬直する。

「旦那様?」

「……ちょっと待ってくれ」

 バロンが躊躇していると、横からアウルが割り込んでくる。

「それを話すのなら、先に私のことを聞くべきですね」

「というと?」

「正妻はエリアルではなく、私だからです」

「んー……?」

 ハチドリが合点が行かないという風にすると、エリアルが続く。

「アウルが元妻ってことよ。バロンは控えめに見てもバツイチってわけ」

「ええ!?」

「私は学生だった時にバロンにべた惚れされて、最終的に私とバロンが結ばれたってわけねー」

 アウルが不服を申し立てる。

「ちょっと待ってください。バロンはまだ私が本命ですよね、ね?」

 視線を向けると、彼は珍しく返答に詰まっている。その空気に耐えかねたハチドリが別の話題を振る。

「え、えと!シマエナガさんと旦那様はどういう関係で……」

 言い切るより先にシマエナガが答える。

「私はマスターにお仕えするために育てられた、辺境の部族の神子です。で、私が収まるはずだった役職をエリアルに取られました」

「はぁ、奥様に……」

 ハチドリはエリアルに視線を向ける。

「なんだか、いざこざの殆どが奥様のせいのような気が……」

「イップタサイセイバンザイ」

「奥様がそれを言うんですか……」

「でも実際、ここでの生活は苦労してないでしょ。シマエナガもアウルも。はぁ~あ、バロンが甲斐性ある人でよかった~」

 エリアルが背もたれに身を預けながら、いたずらっぽく視線を流す。

「……はぁ。まあ、もう全員妻でもいいかもしれんな……」

「はい!」

 アウルが鬼の首を取ったように叫びつつ立ち上がる。

「今の聞きましたよね!?この場に居ない方にも言いふらしてください!スズメさん!一刻も早く皆に伝えてください!」

「……あ、おい待て……」

 バロンが止めようとすると、エリアルとシマエナガの両人から杖を首筋に当てられる。

「マスター、寛大な措置に感謝を」

「ほぅら、人たらしの本領発揮してよ、私のだ・ん・な・さ・ま?」

 ものすごい速度で外堀を埋められたバロンが、助けを求めるようにハチドリを見る。

「あの……旦那様……」

「……ハチドリ……!」

「私も皆さんと一緒に旦那様に愛してもらえることを、すごく幸せに思います!」

「……ハチドリ……!?」

「早速準備せねば!さらばですぞ旦那様!すたたっと!」

 足早に彼女は立ち去って行った。

「……皆が幸せならもうそれでいいか……」

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