与太話:旦那様を誘う手段
「と、言うわけなのですぞ!」
ハチドリがこれ以上ないほどの真剣な表情で告げる。テーブルを挟んで反対側に座っているエリアルが、左手で頬杖をつきながら聞く。
「あの人を誘惑する方法、ねえ……」
エリアルは右手で顎を支えるように体勢を変える。
「んー、私は寝室もベッドも同じだからねえ。したくなったら寝る前に襲ったり襲われたりで、意識しなくても勝手にセックス出来てるって感じね」
「なるほど!つまり……旦那様と同衾すればよいと!」
「まあ、そんなにバロンとしたいなら私は別の部屋で寝るからいいけど?」
「はい!ぜひ!」
ハチドリが爛漫な笑顔を見せると、エリアルは微笑む。
「健やかでいいわね。バロンが惚れたのも、よくわかるわ」
「いえいえ!私など奥様と比べたらまだまだですぞ!」
「ふふ、それだけに日に日に私たちに毒されてるのがわかってちょっとあれね……」
エリアルはハチドリに聞こえぬように小声で呟く。
「というわけで、今日は私と一緒に寝ましょう旦那様!」
バロンが寝室へ入ると、ハチドリがベッドの上から手招きする。
「……ほう、まあたまにはいいだろう」
流れでベッドに入り、二人で横になって布団を被る。
「旦那様、今夜は寝かせませんぞ――」
バロンは有無を言わさず彼女を抱き寄せる。
「むぎゅっ」
「……」
「旦那様っ、流石に性急が過ぎますぞ……」
「……すぴー……」
「んん?」
バロンは驚くべき速度で寝入る。
「うぇえええ!?もうお眠りになられたのですか旦那様!?起きてくださーい!おいおーい!」
ハチドリが彼の腕の中で懸命に騒ぐが、微動だにしない。
「――ということがあったのです!」
再びテーブルを挟んで、エリアルとハチドリが会話している。
「そりゃ、ね。据え膳を食べるかどうかはその時の気分次第なもんだし」
エリアルが冷静に返すと、ハチドリが慌てて言葉を重ねる。
「あ、いや、その!奥様に文句を言ってるのではなくて……」
その様子が面白かったのか、エリアルは笑う。
「ハハッ、それくらいわかってるわよ。うーん、そうねえ……やっぱ風呂時を狙うのが一番ね」
「あっ、それこの間アリシアさんが試してダメだったって言ってました」
「二人っきりの時にがっつり股間を触ってみたり」
「それはドラセナさんが」
「資料室で――」
「フレスさん」
「執務室で――」
「シマエナガさんとスズメさんが」
「外の草原!」
「シマエナガさんとマドルさん」
「廊下で」
「アウルさんとメイヴさんが――」
「そうね、もう面倒だし全員で襲いましょう」
「むむ……二人っきりが良かったのですが、旦那様の鉄壁の防御力を考えると致し方ないですな!」
その後、バロンは割と散々な目にあったという。
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