与太話:目のやり場
エラン・ヴィタール 屋敷
「(皆さんこんにちは、ハチドリと申します。早速ですけど、私は最近困ってることがあるんです……)」
廊下を歩くハチドリが見上げると、目の前には寝間着のアウルが居た。
「おはようございます、ハチドリさん」
アウルが行儀よく礼をする。
「は、はい!おはようございます、アウルさん!」
元気よく挨拶を返すと、アウルは微笑む。
「……」
ハチドリはそれに気づかぬほど、アウルの姿を凝視していた。彼女の寝間着は、白の薄手のネグリジェで、素肌の滑らかさがわかるほど透けていた。
「どうかしましたか?」
「うぇっ!?い、いえなんでも!アウルさんってお綺麗だな……って」
「ふふ、ありがとうございます。ところで……」
アウルは微笑みを浮かべたまま続ける。
「どうしてエリアルのことは奥様、って呼ぶのに私のことはそう呼ばないのですか?」
「え……っと……それは……」
「あくまでもバロンの正妻は私ですから……エリアルは側室、そうですよね?」
柔和な態度の裏から感じる威圧感にハチドリが怯んでいると、そこにメイヴが現れる。
「アンタ何やってんのよ、アウル」
「なんでもありません」
尋ねられるとアウルは足早に立ち去って行った。
「ふう、ありがとうございます、メイヴさ……ん……」
ハチドリが溜飲を下げてからメイヴの方を見る。
「ん?何よ」
「何……と言われましても」
メイヴは普段着であった。ノースリーブの、ボディラインが強調された上着に肩だけを露出するように嵌められたアームカバー、それに殆ど尻と下着が見えているほど短いミニスカート。
「し、刺激が強くて……」
「あ、もしかしてアタシの服のこと言ってんの?全く、バロンの嫁なんだからこれくらいの格好いい加減慣れなさいよ。アタシは正直、ここに住んでるヤツは全員全裸で過ごすルールがあってもいいと思うけど?」
「ええ……」
「そうだ、アンタ試しに裸で一日生活してみなさいよ。アタシの完璧な体には及ばないけど、アンタも結構綺麗な体してんでしょ。特にお尻」
ハチドリは反射的にスカートの裾に手を置いて防御する。
「あいつ尻と足が好きなのよね。その癖アタシにはあんまり触ってこないし。だからほら、あいつに全裸で生活した方が性的に快適って言っといて。よろしく」
メイヴは立ち去った。
「全然会話の内容が頭に入ってこない……」
ハチドリが廊下の先へ視線をやると、マドルとドラセナ、フレスが並んで歩いているのが見える。三人とも大きな胸を強調した衣服を纏っており、マドルは谷間を惜しげもなく露出し、ドラセナはブラトップにこれまたアウルに劣らぬほどの透け透けの布を合わせたような衣装で、フレスは露出のほぼないセーラー服だったが、胸部のすぐ下をベルトで絞ることで露骨に強調している。
「うわわわ……」
ハチドリが困惑していると、背後からバロン、それにエリアルとシマエナガが現れる。
「……何をしているんだ?」
「ああ、旦那様……」
ハチドリがそちらへ向く。バロンは上裸で、エリアルは普段の衣装から外套だけ脱いでおり、シマエナガは無地のTシャツ……だけを着ていた。
「わああああ!?」
ハチドリは大声を上げて走り去る。
「……何か困ったことでもあったんだろうか」
「バロンが上だけ裸だからでしょ」
「……いやこれは……アウルとメイヴが上着を全部盗んでいったからだろう……」
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