エンドレスロール:アルアロア

 エンドレスロール セレスティアル・アーク屋上庭園

「ん~♪」

 アロアが天を仰いで深呼吸する。息を吐き出すと、ここが超高空と言うこともあってか白い靄となって消えていく。

「何してんだ、アロア」

 背後から声がして振り返ると、そこには明人が立っていた。

「お父様」

「はい、お父様やけども。何してんの」

「ちょっと息抜きに。艦内はみんなの喘ぎ声で少し騒がしいですから」

「少し……か……?」

 アロアは後ろ手を組みながら歩く。

「お父様、生き物って言うのは溜まるものなんです」

「溜まる?」

「そう。お父様が精液をどぴゅどぴゅってするように、内側に溜まったパッションは、時々発散しないといけない。私たちは、お父様とくんずほぐれつすることで全部出し切ってすっきりしてますけど……ここは、ちょっと私たちの楽園とは異なる世界みたいです」

「まあ……確かに。前後の記憶が無いんだよな」

「前後運動なんて……ふふ、お父様も溜まってるんですね?」

「いや……もういいわ」

「楽園でこんな気持ちになるなんてあり得ない……お父様とのセックスより、もっと破壊衝動が勝ってるんです」

 アロアは歩を止め、手を前に戻す。彼女が右手を掲げると、その手元に巨大な銃砲が現れる。黒く煌めき、妙に刺々しい、異様な手持ちの大砲だ。

「お父様、不躾ではありますが……その、お手合わせと行きませんか?」

「え?まあいいけど、お前って戦えたのか?」

「いえ、全然ダメです。手加減してください」

「あいよ」

 明人は鎧を纏い、右手に光を失った星虹剣を呼び出す。

「怪我させないように気をつけるが、お前もちゃんとやれよ?」

「もちろんです」

 アロアがリロードするような動作を取り、銃砲を両手で構える。明人が素早く踏み込んで刺突を繰り出すと、銃砲で受け流し、銃口からビームで刃を生成し振る。明人がバックステップで躱すと、アロアは少し遅れながらも銃砲の中折れ機構を使って二つに割り、砲身の内部側に直接弾帯を差し込み、銃砲を元に戻す。そこから機関砲のように大量の弾丸を吐き出させるが、明人は左右に振れて身軽に躱していく。撃ち切った瞬間に銃身の跳ね上がりに合わせるように急接近し、明人は彼女の首筋を狙う。アロアは腰につけていた装置からワイヤーを射出し、虚空に固定してから飛び上がって避ける。流れでリロードしつつ、弾丸を三つ放つ。軽く避けられるが、その三発はそれぞれ火炎、電撃、氷結を起こして爆発する。アロアが着地し、同時に明人が背後を取り、彼女の首に星虹剣を当てる。

「ほい、終わりだ」

「あはは、やっぱりダメですねー。アリアさんやお母様はあのおっぱいでどうやって戦えてるんでしょう……」

 明人がアロアを離し、お互いに得物を消す。

「戦い慣れてない感はあったけどさ、別に動けてないわけじゃないしいいんじゃねえの?」

「うーん、そうですね。結局はお父様を気持ちよくさせられるだけの身体能力があれば充分なわけですし」

 二人は談笑しながら屋敷へ戻っていった。近くの空中から今の戦いを見ていたルナリスフィリアは、少々退屈そうに閃光を放つ。

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