エンドレスロール:ラブポーション・カタリスト

 王城内部・天火てっかの聖堂

「ええっと……」

 ハチドリが困惑している。巨大な聖堂の内部、その大広間にて、クリジナと相対していた。

「私のベルガ様の方が、凄いの」

「あー……ええっと……?」

「ん!」

 クリジナは可変式の巨大な斧を背から右手一本で抜き放つ。

「弟さんよりベルガ様の方が凄いの!ん!」

 元来の気が抜けた声色故に緊張感は余りないが、それでもかなり怒っているのがわかる。それに応え、ハチドリは右手で脇差を抜く。

「よくわかりませんが、勝負と言うことなら受けて立ちます!私の旦那様の方が凄いんですからね!」

 左手で六連装を抜き、目にも止まらぬ速度で全弾発射する。クリジナは斧を剣に変形させつつ構え、タイミングよく銃弾に当ててエネルギーを解放し、凄まじい衝撃を伴いながら豪快に薙ぎ払う。

「っ……!?」

 剣の機構の狭間から噴き出る猛烈なエネルギーの波を受けて、ハチドリは怯む。クリジナは構え直して剣を真っすぐ向け、それから圧縮したエネルギーを噴射剤にして一気に最高速に到達しつつ刺突を繰り出す。ハチドリは脇差の腹で切先を受け止めるが、得物の質量の差か出力の差か、脇差が赤熱しつつ押し込まれる。

「ぬくく……やりますなぁ!」

 弾き返しつつクリジナの胸元を狙うが、彼女は剣を手元で握り直し、エネルギーを暴発させて空に飛ぶ。虚を突いて時間を得て、クリジナは剣を真下に向けて急降下し、そのまま床に突き立ててエネルギーを爆発させる。しかし再三の流れで読んだかハチドリは分身を盾に爆風を避け、脇差を突き出しつつ一気に踏み込む。クリジナは剣を床から引き抜きつつ斧へと変形させ、切っ先を受け流しながら後方へ宙返りで退く。爆風から現れたハチドリへ向けて、クリジナは斧を豪快に振り回しながら接近する。二度の薙ぎ払いを避けたところに、思いっきり振り被って縦に斧を振り下ろす。脇差で正面から受け止めると、凄烈な衝撃で床に足がめり込む。だがそれに合わせてハチドリは無数の分身を繰り出し、そのそれぞれでクリジナの硬直を狙う。

「むむ!」

 不快感からか発破をかけたかクリジナは唸り、斧の刃を受け止めさせたまま剣に変形させて、そちらの刃でハチドリの頭を割らんとする。ハチドリはその一瞬に力を込めて斧を押し返し、斧刃と剣刃がぴたりと合わさる寸前に銃弾を撃ち込み、変形機構を麻痺させる。

「ん!?」

「武器の弱点は知っておかねば命取りですぞ!」

 ハチドリは低く構え、一気に踏み込んでから脇差の柄で腹を抉るように殴る。流れるようにクリジナの右腕の腱を切り裂いて剣斧を取り落とさせつつ、六連装を腰に戻して自由になった左手で突き飛ばす。クリジナは水平に吹き飛び、壁に激突する。エネルギーの枯渇した剣斧が床に突き刺さり、ハチドリは武器を収めて駆け寄る。

「大丈夫ですか……?」

 壁に沿って床にずり落ちたクリジナへ、ハチドリは片膝を折って様子を窺う。

「ベルガ様が……一番、だもん……」

「う、ううん……えっと、どちらも素晴らしい方ですよ!はい!」

「いやぁ……」

 クリジナは拒否しながら気絶した。

「これ……どうしたらいいんでしょうか……?」

 しばらく困惑していると、空気を読んで視界が白ける。

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