エンドレスロール:熾天使ガープ

 エンドレスロール OKBハル

 重低音のノイズが脳内を駆け巡る、紅い霞に覆われた建屋内。エメルと、ガープが相対していた。

「最も偉大な人間……下らねえ称号だとは思うが、てめえのその力を見れば納得だな」

「ええ、あなたも……一介の天使の癖に中々やるじゃないですか」

 ガープが体を屈め、そして背筋を伸ばして浮き上がる。六枚の翼が開かれ、輝きが満ちる。

「〈九界浄土・三千世界〉!」

 凄まじい輝きが視界を満たし、膨大な熱量を以て焼き尽くす。だがエメルには微塵も通用せず、両者の拳が激突する。しかし、ガープの拳は一瞬で破られ、重ねられた上段からの殴り下ろしで、ガープは冗談のような縦回転をしながら床に叩きつけられる。エメルは着地し、軽く体を動かす。

「ええ。あくまでも、天使にしては、です」

 これ見よがしに手の埃を音を立てて払う。

「上等じゃねえか」

 ガープは立ち上がる。そして装束を脱ぎ捨て、紅い骨鎧の魔人となる。

「我が身に光は満ちたり。我は崇高なる夢見鳥の意志に従う、万軍の主なり」

 真の姿を現したガープ……熾天使ツァバトは体から紅い光を放つ。

「ほう……多少は骨がありそうですね」

「行くぜ!」

 右手を翳すと、モノクロの衝撃が中空で起こる。輪状に風の塊が着弾し、それに伴い放出された粒子が周囲の装置を猛烈に蝕んでいく。続いてツァバトは右手を振り下ろし、分解した残骸を細かく砕いて尖らせ、シフルエネルギーでブーストしてエメルへ弾幕のように撃ち下ろす。だがエメルはそれよりも早く水平に突っ込んできて、極悪な威力のショルダータックルをツァバトの腹に叩き込む。右腕の爪によって振り上げ切り裂き、左拳で殴り下ろし、たったそれだけでツァバトの装甲が著しく損壊する。余りにも強烈な一打で叩き伏せられ、一時的に動けなくなったツァバトへ、エメルは決着とばかりにもう一撃加える。しかし拳が貫いた先にその姿はなく、既に上へ飛んでいた。ツァバトは両足を揃え、恐るべき出力でドロップキックを繰り出す。エメルの拳と足が激突して爆裂し、建屋内の屋上が砕け、そこから隕石が降り注ぐ。エメルは右腕を翳して闘気の壁を産み出して防ぎ、そのまま闘気の壁を押し進めていく。

「ちっ……出力の差が……!」

「せめて退屈しのぎになってくれれば、まだ良かったですね」

 壁を破砕し、その影から飛んできた衝撃波によってツァバトは吹き飛び、床を薄く満たす液体の中で転がる。ツァバトは格好をガープのものに戻し、浮き上がる。

「だがやることはやった。じゃあな!」

 ガープは飛び去って行った。

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