エンドレスロール:遥かに望みし我が畏れよ
エンドレスロール 絶海都市エウレカ
都庁前の広場にて、ロータが腕を組んで佇んでいた。
「遅い……!」
そこに現れたバロンに、明らかに怒りを滲ませて告げる。
「……済まない。道に迷ってな……」
「あなたが市長の街の癖に、そんなことがあり得るの?」
「……正直に言うと、どうやってここに来たのかわからないんだ」
「まあ、いい……」
ロータは腕をほどき、首を鳴らす。
「どのみちここでやることは戦うことだけ。無論全力でね」
「……ああ、頼む。君の力はよくよく知っているが、今の君と全力でぶつかり合うことは遂に無かったからな」
「それ、私に裏切って欲しかったって言ってるわけ……?」
「……欲を言えばな。君ともレイヴンともホシヒメとも、敵としてぶつかり合う機会が欲しかった」
「ふん、脳筋ね……」
バロンが肉薄からの右拳を繰り出し、ロータが右脚を合わせる。すぐにロータは身を翻し、後ろに回転して戻りつつ左爪先を振り抜いて隙を潰す。同時に地面から鎖が現れ、同じくバロンの追撃を塞ぐ。その影でロータは右腕を突き出し、それを左手で支え、右掌に莫大な魔力塊を蓄える。
「メギドール!」
解き放つと強烈な破壊を周囲に齎すが、バロンは容易に耐えて意趣返しとばかりに拳先から闘気塊を撃ち出す。闘気塊に即座に鎖が巻き付き、ロータは力むと同時に締め上げて破壊し、続けて複数の魔法の詠唱を一瞬で完了させる。まず手始めに地面を貫いて魔力の爪が現れ、周囲で出鱈目な爆発が起こる。重ねて冷気が凝縮してから大爆発を起こし、その余波に多量の電撃が這いまわる。その最中を光速で突破してきたバロンへ、高空に産み出した巨大な杭のような魔力塊を垂直に撃ち落とす。見た目通りの凄まじい質量が織りなす破壊を、ロータは鎖の防壁で凌ぐ。防壁を解くと、防御して後退したバロンと相対する。
「……流石だ、ロータ」
「兄様と姉様以外に褒められても嬉しくないから」
「……率直な感想だ。流してくれ」
ロータが右人差し指を地面へ示すと、先ほどの爪のように地面を突き破って紫色の棘が現れ、波濤のようにバロンの下へ突き進む。バロンは鋼の波を産み出して迎撃し、その勢いに乗って距離を詰める。ロータが黄金の渦を無数に産み出し、そこから螺旋状の暗黒竜闘気の槍を撃ち出す。移動先への読みも含めた変則射撃を行うが、バロンは難なく突破し、肉薄する。ロータは黒い骨の右翼を背から産み出し、全身を使って振るい、バロンの拳と激突する。拳を翼の外側で流しつつ正面に向き直り、手元で産み出した極小の火球をバロンに直接当てる。火球は凄まじい速度で膨れ上がり、巨鳥を象って彼を押し込む。続いて両人差し指で虚空をなぞり、バロンの背の方向に小型のブラックホールを作り出し、更に凝縮した魔力そのものを極太の光線にして射出する。光線を放つ構えを取り続けつつも、その光線の幅と同じ感覚で直線状に紫の棘を産み出して退路を潰す。バロンは黒鋼へ転じ、火の鳥を打ち消しつつ、鋼の盾で光線を受け止める。受ける衝撃を変換し、そうして蓄えたエネルギーで、何かに突き飛ばされるかのように黒鋼は空へ飛び、光線はブラックホールに飲まれる。
「ちっ……!」
ロータは光線の射出を止め、急いで飛び退く。そこへ降下してきた黒鋼の右拳が地面に突き刺さり、染み出した液状の鋼が急激に加熱されて爆発し、引き抜かれた右拳の代わりに左拳が撃ち込まれて再度の大爆発を引き起こし、止めに彼自身に溜め込まれた闘気がもう一段上の破壊力を以て爆散する。距離を取って魔力、鎖と二重に防御していたにも関わらず突破され、ロータは後ろへ吹き飛ぶ。黒鋼は左拳を引き抜くと、拳先を突き合せた後咆哮する。
「……魔法でこれだけの破壊力を生み出せるなんてな……」
「当然……私、強いし……」
ロータは力み、暗黒竜闘気を纏って竜化する。黒鋼とそう変わらない体高の筋肉質な細身の竜人が顕現する。転じるや否や即座に凄まじい力を放出し、地面から大量の紫の棘を生成し、瞬間移動から蹴りを繰り出し、受け流されてから繰り出したアッパーと、黒鋼の拳が激突する。空間魔法を使って後方に逃げ、強烈な波動を全身から放って牽制し、魔法陣を産み出して光線を放出させ、薙ぎ払う。瞬間移動を織り交ぜてもう一つ魔法陣を呼び起こし、地面から魔力を噴出させつつ紫の棘も織り交ぜ、頭上から小粒の光線を注がせる。黒鋼は全身に鋼を纏い、全ての攻撃の直撃を甘んじて受けつつ、莫大な闘気を両腕に込めて同時に突き刺す。咆哮に合わせて地面を捲り上げながら絶大な闘気が爆裂し、鋼の棘を産み出させる。ロータは波動と共に再び紫の棘を生成し、瞬間移動からダブルスレッジハンマーを繰り出し、出し終わるより先に瞬間移動で隙を潰しつつ二連回し蹴り上げを放ち、更にその隙も瞬間移動で潰し、最後に渾身のアッパーを放つ。それを受け止めた黒鋼は防御を解きつつ咆哮し、大量の流体金属を足元から湧出させてロータの離脱を封じる。そして大量の鋼を周囲に撒き散らしながら浮き上がり、眩い闘気の輝きを放ちながら急降下して圧倒的な破壊を齎しつつ、追撃に体内に溜まった闘気を全開放し、極まる大破壊を撒き散らす。二度の直撃を受けたロータは吹き飛ばされ、竜化が解けて人間に戻り、片膝をつく。
「……」
立ち上がると、黒鋼はバロンに戻っていた。
「……勝負あったか」
「ふん。私は別に、負けず嫌いじゃないからどうでもいい……」
ロータはそう吐き捨てると、街並みの中へ消えていった。
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