エンドレスロール:曙の鎖
エンドレスロール 禁忌地域・屋敷前
「……」
アルバが右掌で炎を遊ばせ、そのまま前方へ投げつける。それを紅い剣が切り裂き、爆発する。
「おや、会いに来たのが私なのがそんなに嫌かい?」
グラナディアが剣を下ろし、おどけて見せる。
「いえ……そういうわけでは……ただ……ストラトス君だったら良かったのに……って……」
「ま、そういう態度も無理はないね。私があの戦いでやったことを考えれば、今こうして健やかに生きていられるのが不思議でしょうがないよ」
「……」
アルバは明らかに警戒を示し、構えたまま後退る。
「ふん……」
グラナディアはその態度を見て、呆れたように首を振りながら溜息を一つする。
「どういう態度でも私は咎めたりはしないよ。何の価値も……無いからね」
剣の刀身を指で挟み、妙に色っぽく撫でて離す。剣がスパークしつつ、切っ先が地面を向いて輝く。
「だが……不機嫌ならちょうどいい。少し運動しないかい?」
そして剣を持ち上げ、アルバへ向けて構える。
「選択肢は……無いんですよね」
「まあ君が不機嫌でも、私は一向に構わないよ。私はナイーブな君たちと違って、剣呑な空気の中でもリラックスできるからね」
「仕方のない人……!」
アルバが竜化した右腕を露にし、力を発する。
「流石にそんなに嫌われてると、少し傷つくけどね」
右腕を薙ぎ、熱波が地面を走る。続けて暗黒竜闘気の波を重ね、退路を潰すように虚空から鎖を召喚していく。
「日頃の行い、かな……」
グラナディアは左手を突き出して同じように熱波を起こし、逆にあちらの熱波を飲み込む。熱波と暗黒竜闘気が相殺し、そして剣で地盤を捲り上げ、飛んで行った礫が爆発して爆竹の如くなり、小粒な閃光でアルバを怯ませる。踏み込みからの刺突にて、過たずにアルバの右胸を貫き、蹴り飛ばしつつ彼女の足元から火柱を起こす。アルバは後退して逃げつつ、グラナディアの周囲に黄金の渦を産み出してそこから螺旋状の暗黒竜闘気の槍を撃ち出す。グラナディアは咄嗟に左手を出して火球を放とうとするが、槍に貫かれて千切れ飛び、仕方なく己の背を爆破して急接近する。
「ッ!?」
グラナディアは接近しつつ左腕を修復し、剣とアルバの右腕が激突して競り合う。
「そんなに嫌いかい?」
「普段なら別に……虫の居所が悪い時に……しつこく絡んでこないでください……!」
右腕が押し返し、グラナディアの体勢が崩れた瞬間に彼女の両腕を鎖が吊り上げる。
「おっと……!?」
「じっとしててください……!」
拘束されて隙だらけのグラナディアの腹へ向け、暗黒竜闘気の槍を放つ。
「やれやれ、美少女の体がぐちゃぐちゃになるのは好きじゃないよ。特に私のはね」
右腕を拘束する鎖から凄まじい金属音と火花が散り、即座に断ち切って自由になる。赤黒い剣は右腕と一体化し、骨身のチェーンソーのごとくなる。槍を相殺し、左手を爆発させて脱し、着地する。
「頼むよ、全く。私はそんなに強くないんだからね」
右腕が元に戻り、剣も元の直剣になる。
「……」
アルバがほとんど睨むような視線を送りつけると、根負けしたのかグラナディアが肩を竦める。
「もう、仕方ないなあ。今日は運が悪かったよ」
グラナディアは納刀し、踵を返す。やたら大きいマントが翻り、伴ってツインテールが揺れる。
「アポなしってのも無礼だったしね」
去っていく後姿を見届けながら、アルバは深呼吸する。
「ストラトス君、遅いなぁ……」
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