エンドレスロール:罪深き大気
エンドレスロール レジスタンスヤード
「よし、それで?用ってなんだ、セレナ?」
レジスタンスの拠点の傍、月明かりに照らされた荒野でストラトスが伸びをする。
「あの北九州……折那での戦い……あの時は決着をつけることが出来なかった。あれは……少々心残りだった」
セレナは腰に佩いていた長剣に手をかけ、右手で抜刀する。
「あの時はまだ、二人ともやるべきことがあった。あなたとシフルが雌雄を決するはずが――我が家に絡みついた呪いに邪魔され、気付けば超複合新界の決戦、しかもその後は本当の最終決戦と来た」
「まあそうだな……結局、シエルと同棲するって話も有耶無耶になったまんま千早を迎えに行かなきゃならなくなったしな」
「だからこそ、ここであなたと決着をつける!もちろん、死ぬまで戦う――なんてことはしない。あくまでも仕合……でも」
「竜化とかありってことだろ?派手に壊してグラナディアさんに怒られても知らねえからな?」
「ふん、独裁者ね……あの時はめちゃくちゃムカついたけど、今となっては面倒見のいい姉みたく見えるわ……」
「へへっ」
ストラトスが朗らかにしつつ、槍を抜いて構える。
「あんたとこんな風に手合わせするなんて、ちょっと前まで考えられなかったことだぜ?」
「ふっ……そうね」
セレナは左手に短剣を持つと、強烈な踏み込みから長剣による刺突を放つ。受け流しからの素早い斬り返しを短剣で往なし、長剣を素早く二回振り抜いて衝撃波を産み、追撃する。ストラトスは穂先から闇を噴き出させて飛び上がり、時間障壁を踏んで急降下する。セレナは瞬間移動で頭上を取り、長剣を振り下ろしつつ急降下し返す。ストラトスは着地した衝撃を時間で閉じ込めて穂先に固定し、セレナの攻撃に薙ぎ払いで対応し、勢いに乗せてもう一度薙ぎ払って後退させる。
「やるわね」
「へっ、そりゃそうだろ」
ストラトスは自分の主体時間を加速させつつ、刺突から大振りに二度振り回す。短剣に軽く弾かれ、区切りに下から上へと薙ぐと、飛び退かれつつ幻影剣をいくつか飛ばされる。時間障壁でそれらを受け止めつつ、持ち直して踏み込み、袈裟斬りを繰り出す。またも短剣に阻まれ、そしてすかさず繰り出された長剣による刺突でストラトスは大きく後ろへ吹っ飛ぶ。
「どわっ……っと……!」
「今のはイイのが入ったわね」
「ったく、流石だぜ」
ストラトスは竜化し、複数の棘を背に浮かばせる。それに応え、セレナも竜化する。
「行くぜ!」
棘を一斉に彼女へ向け、その先端から極太の光線を発射する。迎え撃つために、セレナは更に竜化……つまり、融合竜化を成し、強化された幻影剣が群れとなって飛ぶ。そして長剣の切っ先に凄まじいエネルギーを集中させて突っ込むと、それを把握していたようにストラトスも突進する。棘からの光線と幻影剣が激突して爆発し、その煙の中央で両者の切っ先が激突し、その煙を即座に蹴散らす。同時に、セレナが先に力を強めて押し切る。
「うおっ!?」
そのまま、セレナは幻影剣を伴いながら絶大な威力を以て剣舞を披露する。その荒ぶる力に対し、威力の構造的に弱い場所ではなく、敢えて真正面から棘や槍を使って力を潰し、最後の大爆発に備える。
「〈アンビバレンス〉!」
読み通りに来た強烈な爆発を、時間障壁で受け止め、竜化を一段階下げてエネルギーを放出して相殺しつつ、隙を晒したセレナへ渾身の一打を極める。セレナは倒れはしないものの大きく下がり、よろける。
「まさか、あれを全部往なしてくるなんてね……」
「まだまだ、ここからだろ!」
ストラトスは竜化の段階を上げ直し、セレナも構え直す。今まさに、再び両雄が激突せんとした瞬間、拠点の方から怒号が響く。
「こらー!君たち何やってるんだい!夜中に迷惑じゃないかぁっ!」
二人がそちらへ向くと、明らかに怒っているグラナディアが居た。
「やべ……」
「じゃあ私はこれで」
「あ、おい!」
セレナは即座に飛び立って逃げ去る。グラナディアはストラトスの前まで来て、仕方なく彼は竜化を解く。
「全く……ドンパチするなら昼間に頼むよ。それに、拠点の近くで竜化するなんてさ……」
「はい……すんません……」
「取り敢えず、朝までみっちり説教してあげるよ」
その後、セレナも敢え無く捕まって説教されたと言う。
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