エンドレスロール:焔に滾る神の垢
エンドレスロール ピュリファイア・レルムズ
砂漠近くの溶岩地帯、マレとローリエが二人で進んでいた。活発にマグマが噴き出し、常人ならば一瞬で焼き焦がされているだろう。
「凄い熱気……」
ローリエが怯むと、マレが続く。
「この程度で大袈裟ね。本題はここに現れたドラゴンの討伐なんだから」
「もちろん承知してはいますが……」
マレは右腕を伸ばし、ローリエを制する。
「マレ様……?」
「来るわ」
二人のすぐ目の前の地面が裂け、特大の溶岩柱が沸き上がる。地面を裂いて現れたのは、黒く刺々しい、翼を持たぬ四足の巨竜だった。
「王龍トゥルアカム、ね。随分前に討たれたと思ってたけど」
「こんな生物、私たちの記録には無いですよね!?」
「アタシは知ってるわ。ローリエ、ほどほどに援護しなさい」
「はっ!」
ローリエは飛びのき、マレが構える。トゥルアカムもまた、己の縄張りから二人が退かないと察したか、甲殻の隙間から紅い光を放ちながら咆哮する。その巨体からは想像も出来ぬほど軽やかに飛びかかり、マレが躱して地面に激突し、凄まじい衝撃と共に溶岩を噴出させる。マレはトゥルアカムの背中へ血の棘を撒き散らしつつ背後へ回ると、あちらは大きく構えて頭部に備えられた豪壮な牙を地面に擦りながら振り抜く。マレは飛びのいて避けるが、薙ぎ払いに伴う衝撃波で押され、続けて右前脚を叩きつけて先ほどの薙ぎ払いとは別方向にもう一度薙ぐ。マレは飛び上がり、急降下しつつ両手で手刀を繰り出して、トゥルアカムの爪を一本折り取る。そのまま手を地面に突き刺し、岩盤を捲り上げながら巨大な血の刃を三方向に産み出してトゥルアカムの巨体にフルヒットさせる。怯んで仰け反ったところで、トゥルアカムは口から絶叫を吐き出す。ただの音声にもかかわらず、指向性を持った絶大な威力のブレスとなり、地面に激突する。下から上へ薙ぎ払い、マレを掠める。思い切り頭を振り下ろし、絶叫を地面へ注ぎ込む。それに反応した地面が引き裂かれ、活性化したマグマが凄絶な勢いで噴き出す。マグマの向こうから竜骨化したマレが現れ、撃ち切って隙を晒すトゥルアカムの胴体に輝く炎を注ぎ込む。トゥルアカムは体勢を崩し、後退するも、それでも押し切って開幕のように飛びかかってくる。マレは更に高度を上げて躱し、背後を取って着地、竜骨化を解く。
「トゥルアカムのことを神って讃えるような人間も居なくなったから、元の強さに戻っている……?」
トゥルアカムは巨体と頑強な甲殻にそぐわぬ滑らかな挙動で振り向き、彼の牙や爪、おおよそ彼の体で鋭利に生え揃うその先端が溶岩のような暖色に染まる。
「マレ様、明らかに様子が変わりましたよ!?」
「これアタシも知らないわ」
「お任せを!」
中空に浮かんでいたローリエは懐に収めていた管を六本取り出し、三本ずつ投げつける。トゥルアカムの眼前で炸裂し、強烈な冷気を撒き散らす。あちらは負けず左前脚を地面に叩きつけ、衝撃と地面から噴く溶岩でマレを狙う。飛び上がり、両手を振り抜く。指の軌道に沿って血の刃が飛び、トゥルアカムの赤熱して軟化した甲殻に突き刺さる。トゥルアカムは渾身の力にて後脚で飛び上がり、大口を開いて垂直に落下する。マレに直撃はしなかったものの隙なく地面に潜り込み、活性化したマグマが次々と噴出する。
「構えて、ローリエ!」
「はい!」
一際地面が強く輝き、そこから大爆発と衝撃を伴ってトゥルアカムが現れ、そのままマレを絶叫で狙う。マレは構えて右手の指を鳴らす。すると、突き刺さっていた血の棘が一斉に爆発し、装甲の吹き飛んだトゥルアカムは絶叫を続けられずに短時間停止する。ローリエが機を逃さずに管を一本投げつけ、彼の脳天に突き刺さって爆発し、頭部を凍結させる。そこにマレの一閃が届き、トゥルアカムは両断される。分かれた巨体が地面に斃れ、周囲の溶岩の勢いが鎮まる。マレの横にローリエが着地する。
「ただの王龍ならこの程度ね」
「この程度……いえ、あのような強さの龍、我が国の兵力を結集しても大打撃が出そうですが……」
「倒したんだからいいでしょ。帰るわよ」
二人はその場を去った。
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