エンドレスロール:ラブポーション・カタストロフ

 エンドレスロール 王城セミラム・グラナディア

 荘厳なステンドグラスに彩られた大広間、その空間にて、バロンとハチドリ、対になるようにベルガとクリジナが立っており、緊迫した空気が支配していた。

「……兄さん」 

 バロンが口を開く。広間には四人以外には誰も居らず、声が虚しく響く。

「この出口のない戦乱の世界を進み、貴様に出会ったのならば……やることは一つ」 

 ベルガは右手で腰に佩いていた長剣を引き抜く。それは歪曲した鍵盤のような造形で、凶悪な棘が並べられている。全く同じ長剣を左手で抜き、フルフェイスの兜の向こうから、鋭い眼光を飛ばす。

「えへへ……私も、ベルガ様のために頑張るよ……!」

 クリジナが背に装備していた装置に生えた柄を掴み、それを巨大な斧に変形させながら正面に構える。

「あちらの小娘は任せたぞ、クリジナ」

「うん!」

「ふん、期待はしているが、無理はするな」

 二人の殺意に合わせ、バロンとハチドリも構える。

「……僕は兄さんと戦う。君は彼女を……」

「承知しておりますよ、旦那様」

「……怪我をしたら、必ず終わってから言うように。いいね」

「はい!」

 ハチドリが飛び出し、クリジナがベルガの傍から離れて距離を取り、素早く放たれた脇差を斧が受け止める。押し込みながら離れ、六連装をフルバーストする。巨大な斧の腹で銃弾は受け止められ、その衝撃をエネルギーに変換しつつ凝縮し、斧が剣に変形しつつその狭間から噴出するエネルギーで一気に加速し、切り上げを繰り出す。斬撃に伴う強烈な光の刃が飛び散り、ハチドリは分身で受けつつ飛び上がり、脇差の刀身に光を纏わせて落下し、兜割を繰り出す。剣を斧に変形させつつ薙ぎ払って後退し、脇差を弾き、変形させつつ正面に飛び込む。わかりやすい大振りな動きは流石に躱されるが、床に突き刺した爆発で追撃する。ハチドリは爆発をギリギリ躱しながら少しの溜めから踏み込んで刺突を繰り出す。

「きゃっ……!」

 クリジナが咄嗟に頭を避け、切っ先は首筋を薄く削ぎ取る。だがすぐに気勢を取り戻し、左腕に持っていた剣を出力して薙ぎ払い、ハチドリは飛び上がって躱し、即座に着地して脇差で剣を床に突き刺させ、脇差の柄頭を彼女の腹に抉り込み、一撃で気絶させる。

「かっ……はぁ……」

 クリジナは腹から吐息を絞り出しながら剣を手放し、倒れ込む。ハチドリも武器を収め、彼女を抱え上げて壁まで退避する。視線を中央へ向けると、今まさにベルガとバロンが激突する。

 放たれた拳をベルガが正確に受け止め、鋭い反撃を的確にバロンに叩き込む。左から薙ぎ、右で切り上げ、両方で切り開く。最終段のみを弾き、撃掌を叩き込んで大きく怯ませ、左で貫手を放つ。ベルガは後退から更にもう一歩下がり貫手を弾き、電撃を纏った長剣を薙ぐ。弾かれ、返しに闘気を放たれ、両腕を交差させて堪え、そのまま振り抜いて交差した斬撃を飛ばす。バロンは踏み込んで右腕のアッパーを斬撃にぶつけ、そこから弾けた闘気でベルガの動きを止める。

「くっ……!」

「……終わりだ……!」

 強烈な左拳がベルガの胸を叩き、彼を激しく後退させる。

「我が弟……」

 ベルガは呼吸を整え、長剣を収める。戦いの終わりを察したハチドリが、抱えたクリジナをベルガへ手渡す。

「負けたつもりはない。また挑ませてもらう」

 そう告げると、彼は通路の向こうへ去っていく。

「……お疲れ様、ハチドリ」

 バロンがハチドリを撫でると、彼女は嬉しそうに唸る。

「いえいえ旦那様、旦那様こそ見事な戦いっぷり、私は改めてその凄さを実感しましたよ!」

「……」

 笑みで返し、二人もその場を去るのだった。

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