キャラ紹介:風霊帝龍アレクシア

 エラン・ヴィタール 屋敷前

 草原の上にレジャーシートを敷き、そこでバロンとシマエナガが弁当を広げていた。彼らを囲うようにアレクシアが寛いでおり、時折あくびをする。

「……やはり美味いな」

 バロンは握り飯を頬張りつつも、箸で弁当に詰められたおかずを口へ運ぶ。シマエナガははにかみで返し、それにつられてバロンも笑う。そして紙コップに注がれた茶を啜り、口の中のものを流し込む。

「……ところで、お前は食べないのか」

「いえ、私は……その、お弁当を作っているときにつまみ食いを……」

「……ほう、お前もそういうことをするんだな」

「つまみ食いをされたので。アリシアに」

 シマエナガは非常に苦い記憶を思い出すように険を寄せる。が、険しい表情をしていることに気付いて元の若干呆けているような表情に戻す。

「マドルがお詫びにとケーキを作ってくれたので、それを食べてしまいました」

「……ふふ、そうか……まあ、アリシアも悪い奴じゃない。許してやってくれ」

「ご心配なさらず。マスターの傍仕えをしたいという志を同じくする仲間ですから、許さないようでは今後の生活に支障が出ますから」

「……お前は健気だな。そういうところが好ましくあるのだが」

 不意に褒められたことに少し遅れて気付き、シマエナガは照れくさそうに微笑む。

「えへへ……」

「……ところで、前々から聞いてみたかったんだが」

「なんでしょうか」

「……お前のその竜……」

 バロンがシマエナガの向こうに視線を向けると、アレクシアと視線が合い、そして彼女は体を動かしてバロンの傍に頭を持ってきて、彼にじゃれつく。

「……むぶ……」

 アレクシアの体は微弱な風を纏い、だがその風の竜らしい外見からは想像もつかないほどもふもふだった。

「アレクシアは幼少期から私と一緒に育ってきた竜です。小さい頃は手の平サイズだったんですが……」

「……うん……そうか……?」

 アレクシアはバロンの上半身をほとんど飲み込んで甘嚙みしている。

「うふふ、アレクシアもマスターのことが大好きみたいです」

「……そうらしいな……好かれるようなことをした覚えはないが……」

「そう言えば……そうですね。私はマスターのために育てられた存在ですから、マスターのことをお慕いしているのは当然なのですが……まあ、アレクシアもマスターの人柄に惹かれているのでしょう」

「……人柄か……僕はそれも特に気にしたことはないが」

「アレクシアは私とずっと片時も離れずに一緒にいますから、私の想いが影響しているのもあるかもしれません」

「……なるほどな……アレクシア、少し離れてくれ……」

 バロンが優しめに促すとアレクシアは口を離し、まるで人間のごとく屈託のない笑顔を見せてくる。

「……ほう、中々愛嬌があるじゃないか」

「むう、私の前ではこんな笑い方しないんですけど……アレクシア」

 シマエナガが抗議の視線を送ると、アレクシアは一瞬彼女に向いた後、ツーンと効果音が聞こえてきそうなほどそっぽを向く。

「……はは、まあそういうこともあるさ」

 バロンは甘えてくるアレクシアと、拗ねたシマエナガを撫でながら、しばし平和な時間を過ごすのだった。

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