与太話:ロータさんって何歳?
フランス区・ロストレミニセンス コルンツ邸
「……。ふむ」
リビングにて、木製のチェアに座ってロータが本を読んでいた。ふと顔を上げ、少し離れたテーブルへ視線を向けると、そこでレメディ、アストラム、ストラトスが雑談をしていた。レメディと目が合い、ロータは本を閉じる。
「あっ、ロータさん。ちょうど今話題にしてたんですけど……」
「何」
「ロータさんって何歳なんですか?」
レメディの質問に、ロータは鼻息を一つし、本を手近なキャビネットに置き、立ち上がる。
「そんなこと言ったら、そこの二人も年齢不明でしょ。ストラトスも、アストラムも」
ロータが若干呆れたように返すと、ストラトスが続く。
「俺はレメディと同じくらいッスよ。言うほど離れてねえっす。アストラムさんは……知らねッスけど」
話を振られたアストラムが後頭部をポリポリと掻いたあと、テーブルに右肘を乗せ、手で顎を支える。
「あー、俺は何歳なんだろうな。そもそも生まれた時から普通に生活してなかったしなぁ。体の年齢だけで言うなら、こないだアルバに調べてもらった時は……確か20代後半くらいだったか?おばさんはどうなんだ?」
ロータは歩み寄り、空いている椅子に座ってテーブルにつく。
「肉体年齢だけで言うなら9歳ね。まあ、この体でアルバを産んでるんだから、ほんとに見た目だけ9歳で、中身はいろいろ違うんだろうけど」
レメディが感心して頷く。
「僕より一回りも年下だったんですね、ロータさん」
「人生経験はこの場の誰よりも豊富だけど?」
少し見栄を張った風にそう言うと、他の三人が笑う。
「確かに、おばさんみたいに何回も死ぬなんてことは、俺らは経験してねえな」
アストラムのコメントに、ロータは笑みを返しつつ続く。
「何回生まれ変わったり、完全同位体とかになっても成長してないから、たまに気になったりする。たぶん、エミリアみたいにはなるんだろうけど……」
レメディが真っ先に反応する。
「確かに、ロータさんとエミリアさんはそっくりでしたもんね。姉妹か親子みたいでしたよ」
「まああっちが私を元にしてるんだから当然なんだけど……」
「そう言えば、ロータさんって僕と知り合う前、何をしてたんですか?僕は単純に、大学で働いてるのと、外見に反してめちゃくちゃ強いから年齢が気になっただけなんですけど」
「私情で三、四回世界を滅ぼそうとして見たり、アルバを産んだり、零なる神に加勢してみたり、自前で軍隊を率いて兄様を復活させようとしたこともある」
それにストラトスが続く。
「俺はヴァナ・ファキナの体内でひでえ目に遭わされましたけどね」
「それはまあ、あの時は私の目的の邪魔だったし」
「にしたってわざわざ痛覚を倍増したりする必要あるッスかぁ!?」
「これだけ丸い性格になるのにたいぶ時間かかったんだししょうがないでしょ。ま、だいたいはこんなものよ」
ロータはレメディを見る。
「ありがとうございました。でも不思議ですよね……」
レメディの言葉に、ロータは首を少しだけ傾ける。
「何が」
「普通に生きてたら、ロータさんみたいな人に遭遇しませんから」
「それは……まあ、そう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます